第40回日本アカデミー賞最優秀アニメ作品賞は『この世界の片隅に』。片渕監督は「諦めなくてよかった」
第40回日本アカデミー賞授賞式が3月3日にグランドプリンスホテル新高輪で開催され、最優秀アニメーション作品賞には片渕須直監督の『この世界の片隅に』に輝いた。6年の歳月をかけて本作を完成させた片渕監督は「諦めなくてよかった」と感無量の面持ちで語った。
こうの史代の同名漫画をアニメ映画化した本作。太平洋戦争まっただ中の広島を舞台に、戦時下に生きた一人の女性の姿と市井の人々の日常に戦争が及ぼす影を丹念な描写で綴る人間ドラマだ。クラウドファンディングにより製作資金を調達し、6年の歳月を経て完成。主人公・すずの声を担った女優・のんも高い評価を得た。
丸山正雄プロデューサー、音楽を担当したコトリンゴと登壇した片渕監督。ブロンズを手にした片渕監督は「6年以上かかって作った映画。諦めなくてよかったです」と歳月を噛み締め、「諦めないですんだのは、僕が途中でやめようかなと思った時にプロデューサーの丸山さんが『もうちょっと続けようよ』と6年言い続けてくれたから」と述懐。
さらに「もし途中で『もういいか』と思っていたら、皆さんの心の中にすずさんというかわいらしい主婦の姿が宿ることがなかった。ここに立てていること自体が、いろいろな人の支えがあってこそ。ありがとうございました」と心からの感謝の言葉を語った。
コトリンゴも「どんどん世界に小さなすずさんが遠征に行っている。心から応援したいなと思っております」と大きく羽ばたいた作品への思いを吐露。会場から大きな拍手を浴びていた。
優秀アニメーション作品賞は、『この世界の片隅に』に加えて、新海誠監督の『君の名は。』、山田尚子監督の『映画 聲の形』、湯山邦彦監督とサカキバラ・モトノリ監督の『ルドルフとイッパイアッテナ』、宮元宏彰監督の『ONE PIECE FILM GOLD』が受賞。“アニメ大豊作”の1年を感じさせる、話題を呼んだ作品群が並んだ。【取材・文/成田おり枝】