竹中直人、山田孝之、齊藤工が語り合う、3人で監督して叶えた夢「人生捨てたもんじゃないぜ!」 - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
竹中直人、山田孝之、齊藤工が語り合う、3人で監督して叶えた夢「人生捨てたもんじゃないぜ!」

インタビュー

竹中直人、山田孝之、齊藤工が語り合う、3人で監督して叶えた夢「人生捨てたもんじゃないぜ!」

「2人のパートは本当にすばらしい」(竹中)

――ご自身が撮った以外のパートで、特に印象に残った点をそれぞれ教えてください。

竹中「2人のパートは本当にすばらしいなと思いました。山田組は、(松田)龍平のたたずまいが最高でした。龍平がなにもせずに立っている。ただ、そこにいる…。それが出来るのは監督との信頼関係です。素晴らしいことです。齊藤組は、壮大な大河ドラマみたいなストーリーをよくぞ撮った!!という思いです」

ママチャリでただ南を目指していく青年(松田龍平)
ママチャリでただ南を目指していく青年(松田龍平)[c]2020「ゾッキ」製作委員会

山田「確かに壮大ですよね」

――齊藤さんのパートでは、現実にいない親友のお姉さんを妄想し、恋焦がれていく伴くん(九条)の暴走ぶりがすさまじかったのですが、その後の展開に感動しました。

竹中「あのねじ曲がった純愛物語を選んだこと、それがすごいです。時代もまたぐ、スケールが大きすぎて予算もかかりそうだし無理なんじゃないか…とも思ったんです。ぼくは気が小さいから(笑)」

――確かに『ゾッキ』は、潤沢な予算がある拡大公開系の映画とは違いますね。

竹中「映画作りは常にその予算に応じて、諦めなければいけない事もたくさんある。でも伴くんを監督するのは工だし、『ゾッキ』のプロデューサーは孝之だし、そんな心配は孝之に任せれば大丈夫だって思いました」

山田「いやいや、僕は単なるサポートで。プロデューサーとしては、なるべく監督が思ったものを作れるように、頑張ってお金を集めるだけの話なので。でも、原作からどのエピソードを入れるかと考えた時、やはり伴くんのエピソードは絶対にあったほうがいいと思いました」

――伴くん役に、お笑いコンビ「コウテイ」の九条ジョーさんを起用されたのは、まさにキャスティングの妙だったかと。しかも九条さんは演技初挑戦でした。

高校2年生の牧田(森優作)は、初めてできた友だちの伴くん(九条ジョー)に、自分に姉がいるという小さな嘘をつく
高校2年生の牧田(森優作)は、初めてできた友だちの伴くん(九条ジョー)に、自分に姉がいるという小さな嘘をつく[c]2020「ゾッキ」製作委員会

齊藤「伴くんのキャスティングは難航し、いろんな方が候補に上がりました。ただしっかりした台本と実力派キャストの全体像が見えてきたので、伴くん役は自由度が高いとも思ったんです。それでたまたま番宣の番組で、コントをしている九条さんを見た時、そのたたずまいがすごく気になり、伴くん役をオファーすることにしました」

竹中「伴くんにとてもよく似ていたものね。あの壮大なエピソードを見事に完成させた齋藤監督の手腕に圧倒されました」

山田「伴くんのパートは僕には絶対に撮れなかったけど、齊藤監督はすごく人の心と向き合う人だから撮れた気がします。実にエモーショナルでした」

「竹中さんは、監督というポジションがなにをすべきかをよくわかってらっしゃる」(齊藤)

竹中監督、山田監督への信頼感を語った齊藤工監督
竹中監督、山田監督への信頼感を語った齊藤工監督撮影/興梠真穂

――齊藤さんから見た竹中組と山田組の印象はいかがでしたか?

齊藤「いっぱいいいシーンがありますが、竹中組だと、アドリブやその場で起きたハプニングを、臨機応変に取り入れていく点がさすがだなと思いました。現場で迷っている竹中さんなんて見たことがないし、指示がすごく明確で、撮るのも早い。きっとご自身の経験から、監督というポジションがなにをすべきかをよくわかってらっしゃるんだなと感心しました。

また、山田組はピエール瀧さんのシーンでの哀愁です。ファーストシーンで一瞬出て、去っていくんですが、1つの画角に存在感のある人が出ているのに、彼がセンターにいないことで出る味わい深さが、忘れられないです」

齊藤監督も絶賛するピエール瀧の演技
齊藤監督も絶賛するピエール瀧の演技[c]2020「ゾッキ」製作委員会


山田「僕はだいたい1テイクでOKを出しますが、あのシーンはもう1回撮りました。段取りで瀧さんにこんな感じだと説明したのに、本番で瀧さんが欲張りすぎて。『大きな動きはやめてください』と言ったことを覚えています」

「本気で夢を追っていれば、いつか必ず叶うんだなと思いました」(竹中)

――まさに、『ゾッキ』は3人のコラボレーションが実現したからこそ、とても味わい深い作品になった気がします。

竹中「とても良い感じに大橋さんに対する3人の思いが融合したと思います。孝之と工が大橋さんの世界を気に入ってくれたからこそ完成出来た映画です。大切な友達にだけ、そっと自慢したいですね。俺たち『ゾッキ』を映画にしたんだぜ!って」

山田「僕はお2人の現場でも、編集が終わったあとの映画を観ても、本当にいろいろと勉強になりました。船でいうと、竹中監督がしっかりと船首に立ち、僕はあちこちでごちゃごちゃやっているけど、齊藤監督は船尾にいて、一番広い視野で見てくれていた感じでした」

齊藤「僕はお2人がいてくれたことで、最初からとりあえずこの船は沈まないという安心感がありました。また、思いの外、多種多様な方々が乗り込んだ豪華客船になったという印象です」

竹中「『ゾッキ』を映画化するためにたくさんの方々が賛同して集結してくれました。本当に感謝です!僕は2018年の5月に大橋さんの『ゾッキ』と出会い、なんとしてもこのすばらしい作品を映画にしたいと思いました。でもその夢は決して1人では実現できない。そこに集まってくれた仲間がいたからこそ『ゾッキ』は完成しました。『人生まだまだ捨てたもんじゃないぜベェベ!』と思いました」

【写真を見る】『ゾッキ』監督を務めた竹中直人&山田孝之&齊藤工、渋すぎる撮り下ろしショット
【写真を見る】『ゾッキ』監督を務めた竹中直人&山田孝之&齊藤工、渋すぎる撮り下ろしショット撮影/興梠真穂

取材・文/山崎伸子

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