篠原ゆき子がコロナ禍を懸命に生きる女性を熱演!撮影中に流した突然の涙の理由とは?
『ソナチネ』(93)や『うなぎ』(97)などで知られる奥山和由が製作を担当し、『ふゆの獣』(10)の内田伸輝が監督・脚本を務めた映画『女たち』(6月1日公開)。本作は、4月17日(土)、18日(日)の2日間で開催される「島ぜんぶでおーきな祭 第13回沖縄国際映画祭」でも特別招待作品として上映される予定だ。
コロナ禍の重く淀んだ空気が流れる田舎町で、母の介護をしながら地域の学童保育所で働く美咲は、仕事も恋愛も、なにもかもがうまくいかない40歳目前の独身女性。美咲に罵詈雑言を浴びせ否定し続ける毒親の美津子(高畑淳子)との逃げだしたくても逃げだせない生活のなか、結婚を約束していた恋人の直樹(窪塚俊介)から手ひどい裏切りを受けたうえに、唯一の心のよりどころだった親友の香織(倉科カナ)が突然死んでしまったことで、美咲の心はついに崩壊へと向かってしまう…。
脚本作りから参加し、作り上げたリアルな“女たち”
主人公の美咲役を演じたのは、『浅田家!』『罪の声』(ともに20)などの話題作に出演するだけでなく、主演映画『ミセス・ノイズィ』(20)では第59回アジア太平洋映画祭の最優秀女優賞を受賞するなど、活躍の場を広げている注目女優、篠原ゆき子。
新型コロナウイルス感染症による影響で幾度も撮影の中止が危ぶまれるなか完成した本作に、脚本づくりから関わったという篠原は、いったいどんな心境で本作の撮影に臨み、美咲を演じたのだろうか。
「内田(伸輝)監督とは、半年以上かけてゼロから本作について話し合いました。監督とは『おだやかな日常』からの付き合いで、勝手知ったる仲なので、ざっくばらんに『女ってこうだよね』とか『こういう友だちがいて…』などと世間話をしていくなかで、その内容を監督が脚本に反映してくださったりして、すごく楽しかったですね。脚本作りから携われたこともあって、あまり役を作ろうとしなくても、役が自分にじんわり浸透していった感じでした」
コロナ禍で生まれた“人とつながりたい”という想いが作品のテーマに
脚本作りがスタートしたのは2019年の秋ごろ。“コロナ禍の映画”でもある本作は、途中で大きく内容のシフトチェンジを行ったという。
「脚本を考えている最中に、どんどん新型コロナウイルスの影響が大きくなってきて…。そうしたら奥山プロデューサーが『いまだからこそ、コロナを反映した台本にしよう』とおっしゃって、そこから台本が大きく変わっていきました。だから、運命に翻弄されてできた作品という感じがしています。内田監督はもともと『台本はガイドブックみたいなものだから、変わってもいいし、流れに身をまかせましょう』という考えの監督。共演者の方たちと一緒にコロナ禍のリアルを追求していけたので、2020年の夏、あのメンバーで、あの空気感のなかでしか撮れなかった作品になったのかなと思います」
コロナ禍で、誰にも言えない想いを抱えながら懸命に生きる様々な“女たち”を描いた本作は、とても他人事とは思えないリアルさに満ちている。
「非常事態下での撮影だったからこそ、ある意味変な結束力はありました。もちろん緊迫感もあったんですけど、同時に撮影できるうれしさもあったり。いろんなことが中止になっていくなか、久しぶりの現場だというのはたぶんみんな一緒だったし。だから本当に不思議な感覚でしたね。町は閑散としていて、毎回手を消毒して、マスクもしているけど、撮影中『人とつながりたい』という思いが湧いてきたり。やっぱりみんな人との関わりを必要としているし、その思いはこの作品の肝にもなったような気がします。撮影はすごく大変でしたけど、現場の空気がいい方向に味方してくれた気がしました」