北村匠海らキャスティング裏話を一挙公開!原作愛に満ちたプロデューサーが『東リベ』を語り尽くす
「タケミチとマイキーとドラケン。まずこの3人が揃わないなら、映画化はやらないほうがいいと思いました」
さらに、「あと、監督と僕の共通点はめちゃくちゃ“原作ラブ”ということですかね」。確かに、本作への2人の“愛”の大きさは、キャスト陣のビジュアル再現度の高さからも一目瞭然だ。英監督と岡田は、キャスティング面で意見が割れることはほぼなかったという。「僕も監督も、『原作ファンとしての私たちだったら、この人にやってほしいと思うだろうな』という感じで決めていきました」。
この日の撮影は、10年前にタイムリープしたタケミチが、東京卍會総長マイキー(吉沢)、副総長ドラケン(山田)と初めて出会うシーン。喧嘩の腕が立つキヨマサ(鈴木伸之)が仕切る喧嘩賭博で、アッくん(磯村勇斗)ら幼なじみメンバーが見守るなか、キヨマサに立ち向かっていくタケミチの前に、2人が登場する。岡田は、キャスティング裏話も、出し惜しみせずに語ってくれた。
岡田はもちろん、共演者の誰もがハマリ役と評するのは、主演の北村だ。「タケミチは、いかにも“ヤンキー映画の主人公”っぽい人にやってもらいたくなかったんです。北村くん本人は凄く熱いものを持ってるし、演技も凄く幅広い。『君の膵臓を食べたい』など品行方正な少年のイメージが強かったのですが、また違う北村匠海が見たかった」。オファー時、偶然にも北村は「東京卍リベンジャーズ」を読んでいたのだそう。「そんな話が来るなんて知らなかった北村くんは、原作を読みながら『やるならタケミチ役は絶対俺だよな』って思ってくれていたらしいんですよ」。まさに運命的なキャスティングだったようだ。
マイキーは原作ファンの間でも人気のキャラクターだ。あどけない、可愛らしい見た目とは裏腹に、強固な信念と人間離れした強さを持っている。そのため、吉沢のキャスティングは岡田のなかでとてつもなく大きな一歩だったという。「吉沢君がマイキーを受けてくれなかったら、この企画をやめようって思っていたぐらいです」とまで語った。
さらに、マイキーと固い絆で結ばれた副総長、ドラケンのキャスティングも重要だった。「原作ファンの僕からすると、タケミチとマイキーとドラケン。この3人は完璧だと信じられるメンバーじゃないと、映画化はやらないほうがいいと思ったんですよ。“『東リベ』に似た別のもの”になってしまいますから」と言い切った岡田。その言葉通り、撮影現場で3人の姿を目の当たりにした時は、「漫画の世界から飛び出したような」、とはまさにこのことと驚嘆するほどだった。
「ドラケンをやれる俳優は、山田裕貴しかいない」という想いを抱いてオファーを出した岡田に、山田も「ドラケン役は僕しかないでしょ」という心意気で応じたのだそう。その熱意はすさまじく、自らの提案で、ドラケンというキャラクターの特徴的な辮髪スタイルを地毛で再現、日本人離れした体格に近づけるため、15センチものインソールで身長のかさ増しをした山田。
さらに、緊急事態宣言の発出や新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年に行われたあらゆる作品の撮影進行は、困難を極めた。本作も例にもれず、2度の撮影中断を余儀なくされている。「だから実は、この作品の撮影を10か月近くやっているせいで、2020年の山田さんの作品は全部カツラなんです…。それだけ彼はドラケンに魂を注いでくれたっていうか。間違いなく、それが伝わる画になってると思います」。
「北村くんと磯村くんは、『お互いが相手役じゃなかったら、こんなに泣けなかった』と」
タケミチは昔から、幼なじみの「溝高5人衆」(映画では高校生の設定)と呼ばれる5人組でつるんでいるという設定。その親友グループの筆頭が、磯村演じるアッくんだ。「溝高」メンバーは、現場でも原作さながら抜群のチームワークで、隙間時間も楽しそうにはしゃいでいた。
「物語のなかで一番難しい役回り」と、磯村が演じることになったアッくんというキャラクターを表現した岡田。タケミチが過去に戻って行動し、未来を変える度に、アッくんの人生は大きく変動していく。その都度、磯村は様々なパターンを演じ分けなければいけない。
「とにかくこんなに難しい役どころを演じられる俳優であること、もうひとつは、もし叶うなら北村くんと本当に絆がある人、というのが大事になってくると思ったんですよね」。そんな思いから白羽の矢が立ったのが磯村だった。
岡田は、「すごく印象的だったのは、タケミチとアッくん2人だけの、この物語のなかでも一番大事なシーンの一つです。何十回もテイクを重ねたんですが、毎回2人とも涙を流すんですよ」としみじみと思い返す。「撮影が終わったときに、それぞれに『本当に今日凄かったね』と言ったら、示し合わせたように『いっそん(磯村)が相手役じゃなかったらこんなに泣けなかった』『匠海が相手役じゃなかったら…』って、言ったんですよね」。役を超えた親友としての絆を感じることのできる、岡田一押しの名シーンを劇場で観るのが待ちきれない。
鈴木演じるキヨマサは、鈴木本人も「なんてひどい奴なんだ!」と語るほど、“完全なワル”として描かれている役どころ。現場では長身、リーゼントヘア、額の傷という三拍子そろった姿で、圧倒的な威圧感を放っていた。そのキャスティング理由は、「ノブくん(鈴木)は…この世代で一番デカくて、一番強いやつ誰だっていったら、こいつだ!ってなったっていう(笑)。本当に怖いですもん、すれ違うと!」と、笑いながらも本気で語る岡田。「彼の役への没入レベルは深くて、現場が回っているときは、体からキヨマサが滲み出ているんです」。確かに鈴木は、近くで見ると諸手を上げて降参したくなるような雰囲気で、その采配はバッチリとはまっていた。
「タケミチが立ち向かう一番強い敵という今回の設定には、本当にふさわしいと思います。僕も喧嘩が強かったらあんな風になりたかったな、みたいな。なれない強い男子の象徴みたいな感じがしていいですね」と最強の敵としての魅力を語りつつも、「今はもうずっとキヨマサモードなんで、近寄りがたいオーラが出てると思うんです。でも普段はすごい可愛い感じなんですよ、今日も朝からワッフル食べてたし」と鈴木へのフォロー(?)も忘れなかった。
2度の撮影中断に追い込まれながらも、1人たりとも作品の完成を諦めることがなかったという、本作のスタッフ、キャストたち。岡田は、改めてオールアップ間近の想いを吐露した。「俳優部の気持ちに支えられている作品という感じがあります。本当にハードな撮影になりましたが、それでも『もうやめましょうよ』と言い出す人は誰もいませんでした。そこは、すごい信頼感があったというか。そのおかげで、スタッフたちも最後までやりきれるなと」。
最後に、シリーズ化の予定は?と少し気の早い質問を投げかけてみた。「どうなんでしょう…皆さんが望んで頂けるんだったら。僕自身もこの続きが見たいなって思っています。…ちょうどいい塩梅の答えでしたね?(笑)」
※記事初出時、人名表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
文/編集部