「役者人生を終えても、いいと思えた」三石琴乃と山口由里子が振り返る、庵野秀明とミサト、リツコとの25年
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(公開中)でついにフィナーレを迎えた。それぞれの運命と対峙する14歳だけでなく、大人たちの繰り広げるドラマも本シリーズの大きな見どころ。なかでも葛城ミサトと赤木リツコという、信頼で結ばれた2人の友情に胸を熱くした人も多いはずだ。そこでテレビシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」の放送開始から25年以上にわたって、ミサト、リツコを演じ続けてきた声優の三石琴乃と山口由里子を直撃。
「『エヴァ』の収録現場は戦いのよう」と声を揃えつつ、ミサト&リツコのように支え合い、励まし合って乗り越えてきたという彼女たち。まさに“戦友”となった2人が築いた絆。そしてそばで見て感じた、庵野秀明総監督の25年の変化とは――。
※本記事は、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。
「台本を読み終えて、30分くらい号泣しました」(山口)
2007年に「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズが始まり、『:序』、『:破』(09)、『:Q』(12)と続いた物語の完結編となる本作。エヴァンゲリオン初号機に乗り込み、使徒と戦うことを強要された14歳の少年、シンジの成長を描く本シリーズで、三石は、シンジの保護者的な役割も果たし、反ネルフ組織“ヴィレ”で戦艦AAAヴンダーの艦長を務めるミサト役を。山口は、ミサトと共に“ヴィレ”に所属し、AAAヴンダーの副長を務めるリツコ役を演じている。
――「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズが、ついに終劇を迎えました。長い旅を終えた感慨とは、どのようなものでしょうか。
三石「まずアフレコが終わった段階で、一つ大きな旅の終わりを迎えたんだなという感じがありました。そしてお客様に観ていただけたことで、いまは“送り出した”という気持ちになっています。今回は登場人物たちそれぞれが浄化されたり、幸せを見つけていくので、最初はそれに少し違和感もあって(笑)。あれ?胸のザラつきがないぞ?と。『エヴァ』に対して、いつの間にかそんなふうに感じる体質になってしまっているんだなと思いました」
――たしかに、驚くような結末でした。
三石「でも本当にすばらしい結末でしたね。人物たちの気持ちがグッと心に迫って、涙しました。ミサトとしては今回大切な役割を任せていただき、それがとてもうれしかったです。いまは自分の役割を果たしたという達成感はありますが、それだけにまだ完成作を総体的、客観的に観られないでいる…というのが、正直なところかもしれません」
山口「私は台本を読んだ時に、『庵野さんは役者も観てくださる方も、誰もが悔いのないようにすべての役に愛情を注いで終わらせてくれた。本当に“完”なんだ』と思いました。読み終えてから、30分くらいは号泣していたと思います。こんなに壮大な作品に関わらせていただけて、これで役者人生を終えてもいいと思えたくらい、感動しました」
三石「それはダメよ(笑)!」
山口「あはは!でも本当にそれくらい感動したの。『お母さん、私を産んでくれてありがとう』『神様、庵野さんに出会わせてくれてありがとう』と思ったりして(笑)。庵野さんと同じ時代に生まれたことに、ものすごく感謝しました。それから冷静になって、『リツコとして、庵野さんのやりたいことを最後までやり遂げたい』と思い、収録には気合を入れて臨みました。さらに完成作を観たら、いままでにないほど『エヴァ』にハマってしまって(笑)。『わからないところも全部知りたい。研究したい!』と思っているので、これから『エヴァ』のループが始まる予感がしています」
「『エヴァ』の収録は、丸腰で戦いに挑むよう」(三石)
――お2人は、一緒に収録に臨まれたそうですね。お互いの存在が励みになったことはありますか。
三石「私はいつも(山口)由里子ちゃんに支えられています。『エヴァ』の収録って、どこか丸腰で戦いに挑むようなところがあって。一生懸命に発したセリフでも、素直にOKが出てくることは少なかったです。『それならばどうしよう』と熟考を重ねる。そこには、役者としての戦いがあります。この収録が一人だったら、どれだけ大変だっただろうと思います。私たちは『ここはどう思う?』など不安を分かち合いながら2人で臨むことができたので、本当に幸せだなと感じています」
山口「庵野さんが、『ミサトとリツコは一緒に録りたい』と言ってくださったんです。劇場版では別々に収録したことはないんじゃないかな。ミサトとリツコは人類を救うという役割を背負っているので、そういった空気感、緊張感も必要なんですが、私は琴ちゃん(三石)がそばにいてくれるだけで、スッとリツコになれる。ずっと一緒に収録をしてきたからこそ、そういった関係性を作ることができたんだと思います」
――『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の収録で、特に「一緒でよかった」と実感された瞬間があれば教えてください。
山口「クライマックスにミサトがひとりで突っ込んでいくシーンの収録は、とても印象に残っています。庵野さんも(監督の)鶴巻(和哉)さんもじっくりと時間をかけてくださって、私たちが納得いくまで試行錯誤を重ねてくださいました。私たちが演じてみて、ディスカッションをして、庵野さんも『君たちはどう思う?』と尋ねてくれる。庵野さん、鶴巻さん、三石さんと4人で作り上げているという実感があって、ものすごくいい時間だったなと思います」
三石「最後のシーンは、気持ちを込めれば込めるほど涙が止まらなくて。私としては泣き台詞にはしたくなかったんです。初めて庵野さんにお願いをしました。あくまでも、感動するのはお客様。完成作を観たら、やはり泣いていないテイクを使っていただいていたので、ホッとしました」
――先日放送され話題となった「プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル」では、庵野総監督が「三石さんが納得すればそれでいいから」とおっしゃっていました。
三石「そうなんですよ。役者に心残りを持たせたくなかったのかな。あの時は由里子ちゃんがずっと後ろにいてくれて、『さっきのより、いまの方がよかったよ』とか、『こっちの方が好き』と言ってくれて。とても心強かったです」
各劇場HPをご確認ください。
https://theater.toho.co.jp/toho_theaterlist/shin-evangelion.html
※ご鑑賞の際は各劇場での感染対策にご協力をお願いいたします。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』『:破』『:Q』
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