『ニュー・シネマ・パラダイス』に『ラ・ラ・ランド』…『映画大好きポンポさん』に込められた名作映画のスピリット

コラム

『ニュー・シネマ・パラダイス』に『ラ・ラ・ランド』…『映画大好きポンポさん』に込められた名作映画のスピリット

『ニュー・シネマ・パラダイス』のような、映画に取り組む熱いハート

人付き合いが苦手で、映画を心の拠りどころにして大人になったジーン。彼のフェイバリット作品とされているのが、老映写技師アルフレードと少年トトの交流を描いた『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)だ。ポンポさんが『MEISTER』の脚本執筆にあたってこの作品を参考にしている描写があるほか、ポンポさんの祖父で引退した伝説のプロデューサーが、迷えるジーンにアドバイスする師弟のような関係は、アルフレードとトトに重なって見える。


映写技師の老人と映画好きの少年との交流を描く『ニュー・シネマ・パラダイス』
映写技師の老人と映画好きの少年との交流を描く『ニュー・シネマ・パラダイス』[c] 1989 CristaldiFilm

ネクタイに帽子と正装で初監督作の撮影に臨むジーンは、幼いながらスーツ姿で初映写に臨むトトを彷彿とさせ、ジーンがフィルムをぶった切ってはつないでいく編集時のイメージ映像も、フィルムを夢中でいじるトトのよう。なにより純粋に映画に取り組む熱いハートは『ニュー・シネマ・パラダイス』そのものだ。

ジュゼッペ・トルナトーレ監督と映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネによる黄金コンビの名作(『ニュー・シネマ・パラダイス』)
ジュゼッペ・トルナトーレ監督と映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネによる黄金コンビの名作(『ニュー・シネマ・パラダイス』)[c] 1989 CristaldiFilm

『映画に愛をこめて アメリカの夜』を意識した撮影現場の風景

撮影から仕上げまで、映画作りの作業の多くがデジタル化されている現在。本作でもデジタルによる映画作りが描かれるが、その一方でアナログ的な味わいも重視されている。印象深いシーンの一つが、ジーンの記憶の断片がフィルムに焼き付けられた映像として登場するプロローグ。フィルムの端には、高速で送られるパーフォレーション(送り穴)や音声を記録したサウンドトラックまで丁寧に描かれているが、この映像によって連想させられるのはフランソワ・トリュフォーが監督のほか、劇中の監督役で出演もした『映画に愛をこめて アメリカの夜』(73)である。

『パメラを紹介します』という1本の映画の撮影開始から完了までを、映画の中で描く『映画に愛をこめて アメリカの夜』
『パメラを紹介します』という1本の映画の撮影開始から完了までを、映画の中で描く『映画に愛をこめて アメリカの夜』[c] 1973 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

タイトルロールでフィルムの端に焼かれたサウンドトラックが延々と映しだされるこの作品は、『パメラを紹介します』という劇中映画の撮影現場を映した内幕もの。実は『映画大好きポンポさん』の制作陣がもっとも意識したのがこの作品ということで、多くのスタッフが働く撮影風景や、過酷な現場で「映画愛」を糧に奮闘する人々を追った温かな視点は本作にも受け継がれている。

【写真を見る】名作映画のエッセンスが結集!編集作業をこれまでにない形で視覚化した映像は必見
【写真を見る】名作映画のエッセンスが結集!編集作業をこれまでにない形で視覚化した映像は必見[c]2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

ほかにも『MEISTER』の主人公が『セッション』(14)の鬼教師フレッチャーのようなパッションの持ち主だったり、美女と怪物系のB級映画を量産しているポンポさんと予告編作りが認められて監督になるジーンの関係が、B級映画の帝王ロジャー・コーマンとジョー・ダンテ監督のようだったり…と、本編に込められた“映画愛”を挙げていけばキリがない。そんな「このシーンはもしかして…」を見つけるのも、『映画大好きポンポさん』の楽しみと言えるだろう。

文/神武団四郎


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