一度観たら忘れられないベルの表情、仮想世界<U>はいかにして作られた?「Making of 竜とそばかすの姫」まとめ【前編】
『時をかける少女』(06)や『未来のミライ』(18)など、夏休みシーズンに“ワクワク”を届けてきた細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』が、いよいよ7月16日(金)に公開される。心に傷を抱える女子高生が、現実世界と仮想世界<U>を通じて、周りの人々と関わりながら成長していく物語。「ずっと創りたいと思っていた映画です」と細田監督が意気込む今作の、メイキング映像「Making of 竜とそばかすの姫」が現在配信中だ。公開前にこれだけ充実したメイキング映像が見られるのは異例と言えよう。今回は、全10回となる配信から前半(#1~5)のハイライトをご紹介!
物語の舞台は自然豊かな高知の田舎町。幼い頃に母を事故で亡くして以来、父と2人で暮らしている17 歳のすず(声:中村佳穂)は、ある日、親友に誘われて、全世界から50億人以上が集うインターネット上の仮想世界<U(ユー)>に参加する。その世界で彼女は、「As(アズ)」と呼ばれる自身の分身を作り、「ベル」という名前でまったく別の人生を生きることに。母の死がきっかけで大好きな歌を歌えなくなっていたすずだったが、ベルの姿では自然と歌うことができた。すると、その歌声は瞬く間に<U>の世界で話題となり、ついに大規模コンサートが開かれることに。しかし、突如そこに乱暴で傲慢な謎の存在「竜」が現われ…。
ディズニー作品を手掛けてきたアニメーターがベルのキャラクターをデザイン
#1「Making of 竜とそばかすの姫:細田守とクリエイター~ベルのキャラクターが出来るまで~」では、ピンク色の髪に大胆なメイクでカリスマ性を放つ歌姫、ベルのキャラクター作りにフォーカスする。キャラクターデザインを手がけたのは、『アナと雪の女王』(13)をはじめ、『塔の上のラプンツェル』(10)、『シュガーラッシュ』(12)など、数多くのディズニー作品を手がけてきたジン・キムだ。
今回、彼とのタッグが実現した経緯について細田監督は、「きっかけは『未来のミライ』が(第91回)アカデミー賞にノミネートされたこと」と説明。何度かロサンゼルスへ行くうちに知り合いになり、「『一緒に作品できたらいいね』という社交辞令みたいなことを言っていたら、本当に『やろう!』という話になりました」と振り返る。動画には、キム直筆の原画がいくつも登場。これまでの細田作品とは違った魅力を持つ、いきいきとした表情を浮かべる“ディズニープリンセス風”なベルは必見だ。さらに映像では、個性あふれる煌びやかなベルの衣装についても言及。これまでの細田作品の衣装デザインはスタイリストの伊賀大介が担当してきたが、今回は彼のアイデアで、フラワーアーティストの篠崎恵美、ファッションデザイナーの森永邦彦も参加していることが明かされている。
新進気鋭のクリエイターが創りだした<U>の世界
#2「Making of 竜とそばかすの姫:細田守とクリエイター~Uの世界を描く~」では、本作の顔とも言える壮大な仮想世界<U>に注目している。大きな三日月に放射状の線が走る空、浮遊する建造物など、どこかレトロフューチャーを思わせる景色を生みだしたのは、細田監督たっての希望でオファーしたという、ロンドン在住の建築家兼デザイナーのエリック・ウォンだ。新進気鋭の若手作家であるエリックは、大学で教鞭をとりながら、架空の都市設計やイラストレーションを制作している人物。「『サマーウォーズ』で描かれた仮想世界OZの延長線上にある世界を」というオーダーに対し、フラットでグラフィカルなOZを踏襲した斬新な<U>を創造し、監督の期待に見事応えた。