一度観たら忘れられないベルの表情、仮想世界<U>はいかにして作られた?「Making of 竜とそばかすの姫」まとめ【前編】
高知県がもとになったエモーショナルな自然の風景
未来的なSF世界が広がる<U>から打って変わって、#3「Making of 竜とそばかすの姫:細田守とクリエイター~現実世界を描く~」では、すずが暮らす現実世界の制作現場にカメラが潜入している。これまでも『おおかみこどもの雨と雪』(12) では富山県上市町を、『バケモノの子』(15)では東京の渋谷を舞台にするなど、細田作品は実在の土地をベースにしてきており、そのエモーショナルな風景のファンは多い。
今作の舞台に高知県を選んだ理由を、細田監督は「川が美しいから」とシンプルに説明する。高知県といえば四万十川が有名だが、監督が注目したのは、市の中心部を流れる鏡川と、日本全国1位の水質を誇る仁淀川だ。特に仁淀川は、動画で監督が口にする“仁淀ブルー”という言葉が生まれるほど、澄んだ青色が美麗な清流。この涼やかな川と、木々が鬱蒼と茂る山、そして欄干のない沈下橋が、臨場感のある四国の夏の情景を描出している。緻密に描き込まれた風景画と実際のロケ地を見比べられるのも、メイキング動画ならではだ。
多彩なアーティストが集結した“音楽”にもフォーカス
本作の“主役”の一つを担っているのが音楽。#4「Making of 竜とそばかすの姫:細田守とクリエイター~音楽の世界~」では音楽監督/音楽を務める岩崎太整の仕事に注目する。これまで「SR サイタマノラッパー」シリーズや『モテキ』(11)などで、映画と多様な楽曲をリンクさせ、作品を大ヒットに導いてきた岩崎のもと、「DEATH STRANDING」などゲームデザイナー、小島秀夫の作品の音楽を手がけてきたLudvig Forssell 、実験的な音楽活動を展開する作曲家、坂東祐大という、多方面で活躍するアーティストが集結。三者が、最大74名のオーケストラと約1週間かけて演奏を収録した様子が収められている。また、すずを見守る合唱隊のメンバーを演じ、歌声も披露している森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、中尾幸世の奏でるハーモニーも見もの!
コンテンポラリーダンス界の才能がモーションキャプチャーでベルの動きを表現
前半のラストを締めくくる#5「Making of 竜とそばかすの姫:細田守とクリエイター~キャラクターが動き出す~」は、ベルの圧倒的な歌唱シーンの動きを体現する稀代の振付師、康本雅子によるモーションキャプチャーにフォーカス。「ベルの内面を表現するダンスを」と細田監督は、コンテンポラリーダンス界で唯一無二の才能を起用したと話す。撮影用のスーツに身を包んだ康本の独創的なダンスに合わせて、モニターに映しだされたベルも動きだす。一青窈やMr.Childrenなどビッグアーティストと組んできた康本が、ベルの歌唱シーンに躍動感を与えていく様子は<U>の世界さながらだ。
メイキング動画の前半は、国際的な実績も獲得している細田守のもとに結集した、国内外の精鋭クリエイターとのコラボレーションが印象的だった。後半は、豪華ボイスキャスト陣のインタビューも収録されているので、こちらも要チェック。期待高まる『竜とそばかすの姫』の制作過程を覗いて、公開前に予習しよう!
文/水越小夜子