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初めて明かされる『るろうに剣心』10年の秘話が満載!大友啓史監督が読者の質問に次々回答

インタビュー

初めて明かされる『るろうに剣心』10年の秘話が満載!大友啓史監督が読者の質問に次々回答

「大友監督が影響を受けた映像作品を教えてください」(40代・女性)

「映像作品はその時々で観るものが全然違いました。中学生時代は松田優作さん、ジャッキー・チェン、ブルース・リーなど、王道のアクション映画が好きだったし、高校時代に一人暮らしを始めたころはヨーロッパのアートムービーに没頭しました。ベルナルド・ベルトルッチの『暗殺の森』やルイ・マルの『太陽がいっぱい』、フランソワ・トリュフォーの『大人は判ってくれない』、日本映画だと寺山修司さんの映画なども繰り返し観ました。大学時代は、五社英雄さんや深作欣二さんの映画をはじめ、東京暮らしでミニシアターに行けたので、ジム・ジャームッシュ、リュック・ベッソン、レオス・カラックスなどの映画をランダムに観まくっていましたね」

「大友監督は大学で法学を学ばれていましたが、畑違いである映像の道へ進まれたキッカケを教えてください」(40代・女性)

NHKで学んだテクニックが、大友監督のキャリアの根底にある
NHKで学んだテクニックが、大友監督のキャリアの根底にある[c]和月伸宏/集英社 [c]2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

「僕は大学で法学部に入った時、早く司法試験に合格したいと思い、予備校みたいなセカンドスクールにも通っていました。ところが最初の2年で自分には向いてないと思い始め、学士入学で法学部を卒業したら、仏文学部とか文学系に転学しようとも思っていたんです。3、4年生になって、就職からの逃避もあったと思いますが、できれば大学に残りたいと考えていた時期もあったし、そのころから自分はメディアの仕事が向いてるんじゃないかとも思い始めました。その後、就職試験を受け、ご縁のあったNHKに入ってドキュンタリーを志望し、地方で『のど自慢』や『きょうの料理』などいろんな番組を担当したあと、映画が好きだった学生時代を思い出して、ドラマ畑に行ったという流れです」

「僕はいま大学3年生なのですが、就職や将来のことで不安です。大友監督は学生時代、なにか不安なことはありましたか?アドバイスをお願いします」(20代・男性)

「最終章」では、これまで明かされなかった剣心の苦悩が描かれる
「最終章」では、これまで明かされなかった剣心の苦悩が描かれる[c]和月伸宏/集英社 [c]2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

「僕が就職したころはバブル時代で、いまよりも恵まれた状況でしたが、僕自身も自分がどの道に進むべきなのかずっとわからなくて、就職試験でもメーカーや金融、商社、会計事務所、印刷系、出版社など、いろんな職種を受けました。ただ1つ言えることは、自分の運命を決めるのは、人との思いがけない出会いなので、部屋にこもって考えていても解決しないところがあると思います。

僕はNHKの面接官との相性がすごく良くて、そこで話が盛り上がり、内定をもらいました。一人でいる孤独な時間に自分の考えを固めるのも大事だし、いまはコロナ禍で外出しにくいのですが、僕はなるべくチャンスを活かし、リモートでも人と会って話をしたほうがいいと思います。そうすれば、自分の道が自然に開けるという場合もあるし、僕自身も映画監督になろうと思ってなったわけじゃなくて、そういう出会いを経て、結果的に映画監督にたどりついた感じです」

「大友監督作で初めて没頭したのは大河ドラマの『龍馬伝』でしたが、監督の思う幕末という時代が持つ魅力はどんな点ですか?」(30代・女性)

「幕末は時代の大きな変わり目で、個人のエネルギーが集約されます。黒船の来航以来、日本はこのままいくと取り返しがつかないことになる、という想いに駆り立てられた人たちが動き始めました。『龍馬伝』でも、人々がずっと座敷に座って延々会議をしているのではなく、龍馬が動けば風が巻き起こる。時代が動く。龍馬が巻き起こす変革のうねり、風の動きを可視化するために、スモークやコーンスターチを使った演出をしましたが、そのタッチが活劇に相性が良く、現在の作品群につながっています」

「幕末以外では、どの時代に興味がありますか?」(40代・女性)

「剣心」10年間の集大成であり、大友監督の幕末ものの集大成ともなった
「剣心」10年間の集大成であり、大友監督の幕末ものの集大成ともなった[c]和月伸宏/集英社 [c]2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

「どの時代にも興味があります。昭和、平成、令和と年号が移るたびに大きく変わったことがあると思うし、僕たちが生まれた昭和や、その前の大正、遡った戦国時代もおもしろそう。それぞれの時代によっておもしろがり方がたくさんあるので、今後はいろんな時代を撮っていきたいと思っています。ただ、幕末は比較的やりきった感はありますね」

「『るろうに剣心』の映画がこれで最後となるのは本当に寂しいです。現在、原作コミックでは『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚・北海道編-』が連載中ですが、『るろ剣』ファンは続編を待ち望んでいます!」 (10代・男性)

20代から30代へ、シリーズを通して飛躍を続けた佐藤
20代から30代へ、シリーズを通して飛躍を続けた佐藤[c]和月伸宏/集英社 [c]2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

「すみません。ここまで、『ファイナルです!』と言ってしまっているので、いまのところは『またやります』ってことにはならないです(苦笑)」

「今後、『るろうに剣心』のキャラで誰か1人にスポットを当てたスピンオフを作るとしたら、誰のどんな話を選びますか?」(40代・女性)

「それぞれのキャラにバックボーンとなるストーリーがあるので、やろうと思えばどのキャラでもスピンオフはできます。神谷道場の面子でいえば、剣心と出会う前の薫や、相楽左之助(青木崇高)、恵の話もおもしろいと思います。武田観柳(香川照之)や縁の中国時代なども興味深いですし、誰とは決められないですね」

「次に佐藤健さん主演で映画を撮ることになったとしたら、どんなものを撮りたいですか?」(50代・女性)

「健くんとは10年間みっちりやったので、僕のなかでは『恋は続くよどこまでも』でも佐藤健の姿に剣心が見えちゃうから、いまは少し時間を空けたほうがいいんじゃないかなと思います。健くんは30代なので、たぶんこれからは20代では演じられなかった役など、いろいろな勝負をしていくでしょう。その流れで、僕自身のなかにも自然と、年相応の佐藤健とまた組みたい企画が出てくる気がするので、無理やり探すものでもないかなと。役者と監督は夫婦と同じようなもので、出会う時にはまた出会えると思います」

「ついに映画『るろうに剣心』シリーズが幕を閉じましたが、大友監督は燃え尽き症候群にはならなかったのですか?また、次の作品の構想があれば教えてください」(50代・女性)

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は公開中
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は公開中[c]和月伸宏/集英社 [c]2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

「なってないです(苦笑)。まだ公開中ですし、ひとりでも多くの人に観てほしいと思っているので。緊急事態宣言という嵐を受け、ほかの映画がまたどんどん延期していくなかで、僕たちは踏みとどまって公開を決めました。やはり10年間やってきたシリーズへの思い入れや、映画館を支えたいという気持ちもあったから。

緊急事態宣言のなかで、観たいと思いつつもまだ足を運んでいただけないお客さんも多いと思いますし、そういう意味で僕のなかではまだシリーズは終わっていなくて、現在進行系であがいてる感じです。だから、こういう記事を通して、劇場の方々に、ファンの方々の声を届けてほしいとも思いました。

僕はいまだに闘っています。もちろん次の作品も動きだしてはいるけど、配信など新しい流れが出てきているなかで、僕自身は映画に対する熱い想いがあり、配信作品とどう両立させていこうかとは考えています。ただ、いまはまだ、多くの方々に、最終章を観ていただきたいという気持ちでいっぱいです」

取材・文/山崎伸子

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