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初めて明かされる『るろうに剣心』10年の秘話が満載!大友啓史監督が読者の質問に次々回答

インタビュー

初めて明かされる『るろうに剣心』10年の秘話が満載!大友啓史監督が読者の質問に次々回答

「最終章の劇中で巴が持っていた風車と、『京都大火編』で剣心が持っていた風車とはなにか関連性はありますか?」(30代・女性)

巴の秘めた想いを表現しきった有村
巴の秘めた想いを表現しきった有村[c]和月伸宏/集英社 [c]2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

「着想は『京都大火編』からきています。あの時代はたくさんおもちゃがあったわけでもないし、風車は平和な暮らしを象徴するものでもあったので。それが巴のそばにあり、それを縁も感じていて、神谷薫(武井咲)も手にするんです。また、原作に『歴史の歯車が狂狂(くるくる)回り始める』という当て字があり、その言葉がものすごく僕のなかに残っていました。確かにあの時代は、それぞれが思う方向とは違う側に運命の歯車が回っていったので、そのイメージが連鎖し、風車を、それぞれの運命を繋ぐ小道具として活用しました」

「原作コミックでは巴が持っていた小刀が偶然かすって十字傷になったのに対して、実写版では巴が意図して剣心の頬に傷をつけていました。これはどういう意図があったのでしょうか?」(20代・男性)

2人の感情の流れを、大友監督は繊細に切り取る
2人の感情の流れを、大友監督は繊細に切り取る[c]和月伸宏/集英社 [c]2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

「原作とアニメを押さえたうえで、実写として見せる場合、きれいな十字傷がつくという偶然性には頼れないなと思ったからです。僕は剣心の十字傷を見た時、誰かの強い意志を感じたんですね。その誰かとは、当然巴か剣心でなければならない。巴の意志と、それを受け止める剣心の意志とが重なった方が、ドラマとして厚みのある作品になるであろうと思い、あの形を演出しました。

十字傷はある意味、剣心に託された十字架のようなもので、巴から渡された宿命でもある。巴の日記にもあった『あの人はこれからも先も人を斬るけれど、その先、さらに多くの人を助けるでしょう』という想いを剣心と巴が共有した結果が十字傷になったということです。だから助監督や美術監督といろんなポージングをしながら、どうやったら上手く傷がつけられるかを探っていきました」

「剣心が巴の亡骸の隣でご飯を食べるシーンが印象的でしたが、どういう意図で撮られたのでしょうか?」(30代・女性)

原作ファンからも圧倒的な支持を集める、追憶編
原作ファンからも圧倒的な支持を集める、追憶編[c]和月伸宏/集英社 [c]2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

「剣心はあの時まだ10代で、もしかしたら巴は彼が初めて愛した人かもしれないし、しかも巴を斬る前日に2人は結ばれているわけです。それなのに、自分の意図とは違う形で、一番大切な人の命を自分の手で奪ってしまった。なので剣心としては、突然訪れた巴の死を受け止める時間が必要で、それが巴の亡骸と過ごす時間でした。あの時間に、剣心は巴と暮らした生活を思い出しながら、失くしてしまった小さな幸せ、愛する人の大切さをかみしめていたと思います。

また、大義のために、巴の許嫁だった清里(窪田正孝)を犠牲にした罪が、ズシッと重くのしかかってくる時間でもあったかと。そのなかで彼は、巴の生き方を無にしないためにも、新しい時代のためにも、自分がやれることをやるしかないというところまでたどりつく。濃密だけど、彼にとってはすごく空虚で寂しい、無に等しい時間だった。と同時に、自らのその後の人生の有様を思索し、覚悟する時間でもあったのだろうと考え、あのようなモンタージュシーンを作りました」

「『The Beginning』の最後で、第1作の鳥羽伏見の戦いに繋がる編集がすばらしかったです。若き佐藤健さんの芝居にも驚かされましたが、最初からこの構想はあったのでしょうか?」(50代・女性)

「あのシーンをもう一度撮り直したほうがいいのかどうかは考えましたが、観直して大丈夫だなと思ったので、以前撮ったものを使用しました。脚本を作りながら、『The Beginning』の最後をああいう終わり方にすれば、シリーズの連関が続いていくなと思ったんです。第1作は僕や健くん、スタッフにとってまさに“Beginning”だったし、ONE OK ROCKも当時『The Beginning』という曲を作ってくれたので、シリーズを締めくくるに美しい終わり方にたどり着けたと思いました。そして、剣心の過去と十字傷のついた経緯を知ることで、第1作からの見え方も変わるのではないかと」

「『The Beginning』は、第1作に撮られたシーンを混ぜて編集されていますが、一番意識したのはどんな点ですか?佐藤健さん江口洋介さんが本当に違和感なくすばらしかったです」 (40代・女性)

『The Final』冒頭では、汽車のなかで激しいアクションを披露した江口
『The Final』冒頭では、汽車のなかで激しいアクションを披露した江口[c]和月伸宏/集英社 [c]2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

「人間には肉体年齢と精神年齢があり、辛いことがありすぎると、精神的にも見た目的にも老けていきますが、明るく豊かな時代になると、そうはならないのだと思います。明治の明るい時代の剣心は、贖罪を抱えていても、幕末のように殺伐とした時代の彼とは違い、薫を始めとする神谷道場の仲間たちと出会い、『神谷活心流』の考えに触れたことで変わっていった。気持ち的に和らぎ、むしろ年齢的にも若く見えることが、設定上も納得できるというか、そういう考えに基づき演出しています。

逆に15年前の人斬り抜刀斎だったころの剣心は、なにを食べてもおいしくないし、酒を飲んでも血の味しかしない、社会の片隅で孤独に生きているテロリストなわけで、老いて見えて当然かなと。江口さん演じる斎藤一も同様ですね。大義をかざして剣を縦横無尽に振れる戦場こそが、剣に生きる彼が一番輝きを放つ場所でもある。鳥羽・伏見の戦いのシーンでこそ若さに溢れ、猛々しい印象を残す。そういうイメージを基に10年前の素材を利用しています」

「いままでのシリーズでは本編が終わって暗転し、そこから主題歌が始まるパターンでしたが、『The Final』だけは本編に被せて曲が入る演出でした。佐藤健さんはそこがすごく好きだと言っていましたが、そうした理由を教えてください」(50代・女性)

「ONE OK ROCKの曲『Renegades』が届いた時、反逆者という意味を持つ言葉から連想される曲調とは全く違う、予想外の前奏に惹かれました。剣心と薫が2人で仲良く手をつないでいく背中、その根っこにあるものを捉えた見事な導入です。シリーズ最後の2人のカットでは、この先剣心と薫はずっと一緒に生きていくいくんだろうなと、観客に感じて欲しかった。編集の段階で細かくタイミングを合わせ、最終的にあの形になりました」

「これまで『るろうに剣心』シリーズを撮ってきて、心が折れたことや、人知れず泣いたことはありましたか?」(50代・女性)

大友監督は全身全霊を傾けて本作に挑んだ
大友監督は全身全霊を傾けて本作に挑んだ[c]和月伸宏/集英社 [c]2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

「心が折れたという表現が合っているかどうかはわからないですが、撮影中は不安定になる時期もありました。様々な作業が重なり、撮影が大変すぎて睡眠時間が取れないのと、お酒を飲んだりもするので、けっこう激しく感情が揺れて、電話でやりとりをしながら、怒ったりして。撮影が終わったあとも、そこから先の方針などで上手くいかなかったりすることもありますし。僕はそういう時、ホテルに着く前の、移動中の車のなかで、落ち込んだり喜んだり、怒ったり泣いたり、感情を整理しますね。車にはドライバーも乗っていますが、基本的には僕一人のスペースになれるから、他人には見せられない感じで、感情を爆発させることがよくありました」

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