『竜とそばかすの姫』の“歌姫”を務めた中村佳穂のバイタリティ「ここからおもしろいことが確実に起きていく!」
細田守監督が、『サマーウォーズ』(09)に続いてインターネット上の世界を描いた最新作『竜とそばかすの姫』(公開中)で、ヒロインすず・ベル役の声優に選ばれたミュージシャンの中村佳穂。細田監督は完成披露報告会見で中村について「すごく歌を大事にしていて、歌に愛されているというか、歌と中村さんが近い存在にいる。唯一無二です」という惜しみない賛辞を送っていた。そんな中村の素顔に迫り、初のアフレコ体験についての感想も聞いた。
母親の死という大きな喪失感から、大好きな歌が歌えなくなった主人公のすず役を務めた中村。すずが親友のヒロちゃん(幾田りら)に誘われ、50億人が集うインターネット上の仮想世界<U>へ入り込む。そこでは<As(アズ)>と呼ばれる自分の分身を作り、別の人生を生きることができる。すずは自分の<As>を「ベル」と名付け、そこで美しい歌声を披露したことで、歌姫として注目されていく。ある日、ベルは大規模なコンサートを開くが、そこに乱暴な「竜」(佐藤健)が現れ、コンサートを台無しにしてしまう。
「すず役が正式に決まった時も、めちゃくちゃ笑いました」
もともと細田監督は中村の音楽を聴いており、ライブにも足を運んでいたそうだが、中村によると「私も高校時代に『時をかける少女』を観て以来、細田監督の大ファンでした」とのこと。
「細田監督は何度か演奏を観に来てくださって。その時お話したことはありましたが、オーディションの話をいただいた時はかなり驚きました。もしかして自分が声優の仕事をするかもしれないと思うと、めちゃくちゃおもしろい!と思い、家で笑ってしまいました」というなんとも朗らかなリアクションから、中村の人となりが伝わってくる。
「オーディションなので、もちろんまだ自分に決まったわけではなかったけど、声優が本職ではない私が、そこに行っていいのだろうかという気持ちもありました。でも、私のライブを観にきてくださった監督からのお誘いなので、なにか感じるものがあったのかもしれないと思い、お伺いすることにしました。正式に決まった時も、めちゃくちゃ笑いました!」という中村。
「もともと私には、自分が知らないことが起きると笑ってしまう癖があって。自分が知らない見た目になったり、音楽で自分が予想していたものを超えたりと、新しいことが起きるとすごくうれしくなって笑っちゃうんです。だからオーディションの話をいただいた時点で笑って。オーディションも楽しんでいくべきだと思ったし、すず役が決まったあとも、ここからもおもしろいことが確実に起きていく!と思って、この半年間はずっと笑っていた気がします」。
それは、中村が常に、音楽や物事に対して「素直でいたい」と思っている心の表れかもしれない。
「新しいことが起きた時、素直に反応するほうが、自分の音楽性に合っているなとも思っています。今日も完成報告会見の準備で、このホテルに足を踏み入れただけで興奮しちゃって。『天井高い!』と、思わず笑ってしまいました(笑)」。
でも、なぜそこまでポジティブに捉えられるのか?と聞くと「それは多分、支えてくれてる人たちのおかげです」と答えてくれた。
「もしも周りの人から『なにを笑ってんの?』とかいなすようなことを言われたら、私はきっと萎縮しちゃうタイプ。でもみんなが『佳穂ちゃんは絶対にそのままでいいから、楽しくやって!』と言ってくれるんです。音楽活動を始めたのは20歳ごろで、いま29歳になりましたが、ずっと変わらずにいられたのは、本当に幸せなことです」。