「俺物語!!」の河原和音、恋模様も見逃せない『キネマの神様』をレビュー!感想イラストも描きおろし

インタビュー

「俺物語!!」の河原和音、恋模様も見逃せない『キネマの神様』をレビュー!感想イラストも描きおろし

山田洋次監督がメガホンを取った松竹映画100周年記念作品『キネマの神様』(8月6日公開)。映画監督を夢見た男の人生をつづる物語は、青春時代を共に過ごしたゴウ(菅田将暉/沢田研二)、淑子(永野芽郁/宮本信子)、テラシン(野田洋次郎/小林稔侍)の3人が織りなす恋愛ドラマも大きな見どころ。それぞれの想いが交差し三角関係が動きだす様子は、胸キュン必至だ。MOVIE WALKER PRESSでは、「俺物語!!」(作画:アルコ)や「素敵な彼氏」など数々の恋愛コミックの名作を生みだしてきた漫画家、河原和音に本作をいち早く観てもらい、その魅力を語ってもらった。合わせて描き下ろしてくれた、映画の世界を再現したとびきりキュートなイラストも堪能してほしい。

それぞれの恋心が交差する!
それぞれの恋心が交差する![c]2021「キネマの神様」製作委員会

「ゴウは憎めない、かわいいところがある。テラシンさんは幸せにしてあげたくなるタイプ」

1960年代を舞台にした、まぶしいほどの青春模様が描かれる
1960年代を舞台にした、まぶしいほどの青春模様が描かれる[c]2021「キネマの神様」製作委員会

本作は“映画の神様”を信じ続けた男、ゴウの人生を、過去から現代へとつながる物語として描く人間ドラマ。1960年代、ゴウは助監督として、映写技師のテラシンをはじめ、スター女優の園子(北川景子)、撮影所近くの食堂の看板娘の淑子に囲まれながら夢を追い求め、青春を駆け抜けていった。それから50年。ギャンブル好きで、妻や娘にも見放されるほどのダメ親父となったゴウは、再び映画に向き合っていくなかで忘れかけていた夢や青春を取り戻していく。

本作を観た河原は、「映画の現場は、熱そうで華やかそうで過酷そうで、それでいて楽しそうだなあと思いました」と若き日のゴウが働く撮影所の熱気に大いに魅了された様子。またゴウ、淑子、テラシンの繰り広げる恋愛模様については、「母の世代の恋愛だなあと思って。両親は恋愛結婚だったので、きっとこんな空気だったのかなと想いを馳せました」とノスタルジックな味わいを楽しんだという。

【写真を見る】ゴウ、淑子、テラシンの三角関係に心が揺れる!
【写真を見る】ゴウ、淑子、テラシンの三角関係に心が揺れる![c]2021「キネマの神様」製作委員会

映画監督を目指しているゴウは、夢に向かって突っ走る熱血ぶりもチャーミング。一方のテラシンは、映写技師としてコツコツと働き、真面目で誠実だが、女性に対してはめっきり不器用な男性。まったくタイプの違う男性だが、2人とも食堂の看板娘で朗らかな笑顔がかわいらしい淑子に想いを寄せており、3人の恋模様からも目が離せない。

若きゴウ役を菅田、テラシン役を野田がそれぞれ魅力的に演じており、映画を観た後には、「自分はゴウ派か、テラシン派か」と考えてみたくなる。河原は「女性陣が聖母レベルなのに男性は面倒な人たちだなあ…と思いました」としながら、「テラシンさんが私を好きになってくれるなら、テラシンさんです」と“テラシン派”を宣言。

淑子をめぐって、男の戦い!?
淑子をめぐって、男の戦い!?[c]2021「キネマの神様」製作委員会

しかし「恋がこんなに苦しいものだとは」と悩み、一生懸命に書いたラブレターで想いを伝えようとするなど、テラシンが淑子のことを好きすぎるために「テラシンさんがずっと実は淑子ちゃんが好きで、仕方なく私、とか、想いを残しているとか、一番はいつまでも淑子ちゃんとかだったら嫌だな。でも幸せにしてあげたくなるタイプです」と妄想を繰り広げながら、「ものすごく本気で答えてしまってすいません」と我に返る瞬間も。

自分の理想に対して、意志を貫き通そうとするゴウ
自分の理想に対して、意志を貫き通そうとするゴウ[c]2021「キネマの神様」製作委員会

さらに「ゴウちゃんはちょっと私の個人的トラウマに引っかかるので絶対ないですし、向こうも絶対私を好きにならなさそう」とゴウへの複雑な想いを明かしつつ、「ゴウちゃんを好きになる人の気持ちはわかります。憎めない、かわいいところがあるし、夢を語る時にキラキラしているので、見ていると楽しいのかな?とか、あと才能もあるし…と思ったり。下っ端時代のゴウちゃんは、全部かわいくて好きです」とあふれる情熱とともに、ものづくりの才能を発揮していくゴウの魅力にも抗えないものがあると話す。

「永野芽郁さんのこれからの活躍も楽しみにしています」

スター女優の園子は、淑子の恋を温かく見守っている
スター女優の園子は、淑子の恋を温かく見守っている[c]2021「キネマの神様」製作委員会

まっすぐな登場人物たちが繰り広げる恋や青春を繊細な感情描写と共に描き、読者から熱狂的な支持を集めている河原。創作活動のヒントにするために映画を観るわけではなく、いつも「観たいものを観るようにしています」と言うが、「映画を観ると、必ずヒントになる」と刺激を受けることもあると明かす。

「三角関係を描くのは得意ではないので、本気の三角関係ものは描いたことがない」という河原だが、映画などで三角関係を見ると、「なにを考えてこの振る舞いなのかな…とか女の子の気持ちのほうが気になる」のだとか。「『キネマの神様』はセリフに無駄がなく厳選されているので、表情や行間からこちらが想像することになります。観る側の能力も問われるな!と思いました。少女漫画はそのへんはわりとがっつり描く気がします」と少女漫画との違いにも目を向け、「園子さんが『ずっとモテモテだったんだろうなあ』と思わせるムーブをするので、自分には縁のないセリフやアピールの仕方をするのが衝撃的でした。“女のプロ感”がすごいというか。それでいてとてもかわいかったです」と北川演じるスター女優の溌剌とした言動にも興味が湧いたという。

時代と溶け込んだ永野芽郁の演技力にも注目!
時代と溶け込んだ永野芽郁の演技力にも注目![c]2021「キネマの神様」製作委員会

本作で若き日の淑子役を演じているのは、永野。永野といえば、河原が原作を手掛けた映画『俺物語!!』(15)にも出演。ヒロインの大和凛子役をみずみずしく演じていた。『キネマの神様』での永野の印象は、どうだったのだろうか。

河原は「永野さんがあの時代の女の子に見える。不思議ですよね」と時代と溶け込んだ永野の演技力にも舌を巻き、「淑子ちゃんは場合によっては嫉妬されるかもしれないポジションで、下手をすると嫌な女の子に見えてしまうかもしれない、危うい立ち位置だと思いました」とコメント。

漫画家・河原和音から『キネマの神様』の特別描き下ろしイラストが到着!
漫画家・河原和音から『キネマの神様』の特別描き下ろしイラストが到着!イラスト/河原和音

しかしながら「私があの人を幸せにする!」と周囲の反対を押し切ってでもゴウへの恋心を貫こうとする淑子のピュアさに釘付けになった様子で、「永野さんがかわいいので、永野さんを通して淑子を好きになるような気がしました。三角関係でも、ずるいところのない、ただまっすぐに恋をする少女という感じで、自然に見えるけれど、永野さんは女性の視点もすごく考えてらっしゃるんだろうと思います。あざといかな?という場面でも、『あらかわいい。これは好きになるわ』と思って観てしまいました」と惚れ惚れ。「ファンなので、これからのご活躍も楽しみです」とエールを送っていた。

文/成田 おり枝

■河原和音プロフィール
漫画家。1991年に「彼の一番好きなひと。」でデビュー。以降、1996年に「先生!」、2003年に「高校デビュー」、2008年に「青空エール」や、原作を担当した「俺物語!!」(作画:アルコ)など、映画化作品を数多く連載。「俺物語!!」は「このマンガがすごい!2013」オンナ編1位、第37回講談社漫画賞少女部門を受賞。最新作「太陽よりも眩しい星」が別冊マーガレットにて連載中。
「太陽よりも眩しい星」詳細ページ:http://betsuma.shueisha.co.jp/lineup/taiyouyorimo.html
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