荒俣宏、「世界妖怪会議」のプレゼンに感激「令和で人を救うのは妖怪です!」
8月13日(金)より公開となる映画『妖怪大戦争 ガーディアンズ』に先駆け、8月7日にところざわサクラタウンのジャパンパビリオンで「世界妖怪会議」が開催。ゲストに本作の製作総指揮および妖怪・雨降小僧役で参加した荒俣宏と、藤本正人所沢市長を迎え、各県の県知事や各国政府観光局員が、ご当地の妖怪やモンスターの魅力をリモートでプレゼンした。
プレゼンテーターとして、国内からは岩手県知事の達増拓也、徳島県副知事の後藤田博、鳥取県知事の平井伸治が参加。海外では、フランスから、フランス観光開発機構日本代表のフレデリック・マゼンク、フランス観光開発機構のミルドレッド・寺島、ドイツからはドイツ観光局アジア地区統括局長/日本支局長の西山晃、チェコからはチェコ政府観光局日本支局長のシュテパーン・パヴリーク、チェコセンター東京のヤクブ・ヴァーレク、チェコ政府観光局PR&マーケティングマネージャーの麻生理子、タイからは、タイ国政府観光庁東京事務所所長のセークサン・スィープライワン、神田外語大学学生の久保野加奈子と谷中彩来、フィリピンからはフィリピン観光省東京支局PR&マーケティングマネジャーの山本ジェニファーたちが登場した。
最初に藤本市長は『妖怪大戦争 ガーディアンズ』の舞台になった所沢がある武蔵野台地の歴史について語ったあと「私は常々、人間も自然の一部であり、自然への恐れを忘れてはいけないと思っています。妖怪とは、人間が暮らしてきたなかで、侵してはいけない領域への恐怖や戒めから生まれたものだと考えています。コロナ禍で人と会うことも考えなければならない世の中ではありますが、世界妖怪会議で、人間とは?自然とは?と考えながら、妖怪プレゼンテーターの方々と語りあうことができればと」と挨拶をした。
荒俣は「武蔵野台地ができて、だいたい2万年ぐらい。日本で人間が住み始めたのもそれくらいなので、妖怪も2万歳ぐらい。おそらくもっとも古い妖怪が、所沢に存在していたのではないかと」と所沢をアピール。また「昭和は、『ガンダム』のような巨大ロボットが人類を救ってくれた。平成になってからは、アメリカのコミックヒーロー、『アベンチャーズ』とかが助けてくれたんです。でも、いまはもう、誰が救ってくれるのか見えない世界ですが、僕はわかったんです。令和は妖怪だと。そういう意味で、業界の盛り上がりは重要になる。『妖怪大戦争 ガーディアンズ』はそういう時にできた映画です」と映画の魅力も語った。
その後、各県、各国のプレゼンがスタート。岩手県の達増知事は「遠野物語」をフックにカッパや座敷わらしを紹介し「カッパを捕獲するためには、『カッパ捕獲許可証』が必要です。教科書には、カッパは生け捕りにし、傷をつけないで捕まえること、頭の皿を傷つけず、皿の中の水をこぼさないで捕まえることなどの7カ条を守ってくださいとあります」と言って笑いを取る。
また「岩手県を舞台に、岩手の妖怪がたくさん出てくるアニメ映画『岬のマヨイガ』が8月27日に公開されます。私もカッパ役でカメオ出演しております」とおちゃめに語った。
続いて、徳島県の後藤田副知事は「隣にいるのは、徳島生まれの妖怪、子泣きじじいでございます」と子泣きじじいを紹介し「毎年11月に妖怪祭りも開催されており、町ぐるみで妖怪をPRして取り組んでおります」とアピール。
鳥取県の平井知事は気合十分に「ゲゲゲの鬼太郎」のコスプレをして登場。『妖怪大戦争 ガーディアンズ』にちなみ、神木隆之介が主演した映画『妖怪大戦争』(05)に登場する麒麟獅子について「麒麟獅子は、鳥取県の伝統芸能でありまして、日本遺産になっています」とアピール。
また「鳥取県といえば鳥取県砂丘ですが、今回鳥取で始めて、入江聖奈選手がボクシング女子で金メダルを獲りました。入江選手が『砂丘色のメダルが欲しい』と言っていたんです」と喜びを口にしたあとで「米子鬼太郎空港」や「水木しげるロード」、「鬼太郎列車」などを猛プッシュ。最後に「鳥取県は蟹の水揚げ高が日本一なんです。それで9月からは鳥取県は“蟹取県”に改名します」と暴走発言をし、会場を爆笑の渦に包んだ。
その後は海外チームへ。フランス観光開発機構フレデリック・マゼンクとミルドレッド・寺島チームは伝説のモンスター「タラースク」について「マニアックですが、南フランスを代表するモンスターですが、かなり恐ろしいです」と解説。ライオンのたてがみ、カメの甲羅、ヘビの尻尾を持つビジュアルも紹介されたが、荒俣も「全然知らなかったです」と驚いていた。
ドイツからは、ドイツ観光局アジア地区統括局長の西山が魔女のハットを被って登場し「ドイツのハルツ地方は、魔女の街なんです。毎年4月30日には、魔女祭りが開かれ、魔女と魔法使いの仮装した人たちが集まってきます」と「魔女」での町おこしの内容を伝えると、荒俣も「僕も、ドイツの魔女まつりに、水木しげる先生と行ったことがあります」と当時の思い出を振り返り、西山を喜ばせた。
チェコからはチェコ政府観光局のチームがプレゼンをすることに。「ヴォドニーク」という緑色の水の精のコスプレをした局員が異彩を放っていたが「ヴォドニークは池や川、水車の近くに住む水の精で、燕尾服の裾が常に濡れています」とのこと。荒俣が「カッパと同じですね。カッパも常にお皿が水に濡れてないといけないから」と共通点を見出して、会話を盛り上げた。
タイからは、タイ国政府観光庁東京事務所所長のセークサン・スィープライワンが解説したあと、タイの民族衣装をまとった神田外語大学の学生2人にバトンタッチ。2人は、『ナンナーク』(99)など、何度も映画化もされてきた「ナーンナーク」の伝説を紹介していった。
戦争に行った夫を待つ間に、難産で命を落とした妻が、精霊となって夫の前に現れ、村に災いをもたらしたというとナーンナークの伝説。荒俣は「ロマンチックな妖怪です。私が1番好きな話です」とうなずき、映画についてもプッシュした。
最後は、フィリピンから、フィリピン観光省東京支局PR&マーケティングマネジャーの山本ジェニファーが登場。「フィリピンには島の数と同じぐらい、妖怪にまつわる話がたくさんあります」としたうえで、バンコクにまつる、頭と足が馬で身体と手は人間という「ティクバラン」についてプレゼンした。
「いたずら好きな性格の妖怪です。また、日本で言うところの『狐の嫁入り』という、陽が照っているのに、急に雨がパラつくという天気を、フィリピンでは『ティクバランの嫁入り』と言います」という豆知識も紹介し、荒俣たちを楽しませた。
彼らのユニークなプレゼンを聞いたあと、荒俣は「大変興味深い内容で、みなさん、すばらしかったです」と称えたあとで「各県、各国のプレゼンを聞いたうえで、人間と妖怪やモンスターとのつき合い方は、なんだか共通点があるなとも感じました。世界のどこを探しても妖怪はいて、この世界は妖怪だらけだというふうにも思います。やっぱり令和は、妖怪だ!と思いました」と感無量の様子だった。
最後に、藤本市長が「妖怪は家族を大切にします。妖怪は友だちを大切します。そして妖怪は子どもたちと仲良くします!」とヤミット宣言をし、「世界妖怪会議」は大盛況のなかで幕を閉じた。
取材・文/山崎伸子