半世紀にわたって進化してきた妖怪たち…『妖怪大戦争』三部作の歩みを“造形”で振り返る
勇者に選ばれたごく平凡な少年が、伝説の剣を手に世界の存亡を懸けた戦いに挑む!多彩な妖怪が大戦争を展開するエンタテインメント超大作『妖怪大戦争 ガーディアンズ』が公開中だ。本作は、1968年に公開された、大映の「妖怪三部作」を代表する痛快作『妖怪大戦争』、スペクタクルを満載し大ヒットした2005年の平成版『妖怪大戦争』に続く令和版。日本古来の妖怪や妖怪獣に大魔神と、ありとあらゆる妖怪たちが集結し、過去三作中でも最大級のバトルを繰り広げる。
おなじみの日本古来の妖怪たちが登場する『妖怪大戦争』(68)
1968年版で描かれるのは、日本に飛来した古代バビロニアの妖怪ダイモンとの大戦争。人間に乗り移り勢力を広げていくダイモンを倒すため、日本の妖怪たちが立ち上がる。時代劇として製作された本作には、河童や油すまし、から傘、ろくろ首など日本古来の妖怪たちが登場する。人間側の主人公が幼い兄妹ということあり、どれも素朴で不気味ないっぽう、愛嬌も漂うルックス。デザインにあたっては、江戸時代の画家である鳥山石燕や、漫画家の水木しげるによる妖怪画が参考にされた。一人一人は弱い彼らが手を組んで、圧倒的パワーのダイモンに挑むけなげな姿は、思わず応援せずにはいられない。
「ガメラ」シリーズも手がけたエキスプロダクションが、妖怪の造形で参加
妖怪たちの造型には、同時期の「ガメラ」シリーズでも怪獣たちを手がけたエキスプロダクションが参加。河童はマスクに甲羅を背負った生身の俳優、ダイモンや隠神刑部は着ぐるみ、美しい顔と怖い顔を持つ二面女はメイク、から傘やろくろ首は操演などキャラクターに合わせた手法が使い分けられた。デジタル時代の現在に比べ技術的には粗さもあるが、それが“キモカワイイ”味わいを醸しだしている。背の小さい油すましやひとつ目小僧を子役が演じ、河童は江戸弁、油すましは関西弁など口調でも色分けするといった徹底したキャラ作りは、その後の『妖怪大戦争』にも生かされた。
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』にも多数の妖怪が登場するが、1968年版から性格や立ち位置が受け継がれた妖怪も少なくない。大将格のぬらりひょんは油すまし、大御所的な隠神刑部は雲外鏡、子ども好きの姑獲鳥は二面女など多くの妖怪にそのルーツが見て取れる。また1968年版の黒田義之監督は、1966年に3作が製作された「大魔神」シリーズで特撮監督として腕を振るった人物。さらにダイモン役の橋本力は、すさまじい目力でシリーズすべての大魔神を演じていた。今回『妖怪大戦争 ガーディアンズ』に登場する大魔神は、実は所縁のあるキャラクターといえる。