『大魔神』『帝都物語』と密接な関係も!荒俣宏が明かす、“裏日本書紀”としての『妖怪大戦争 ガーディアンズ』
1968年から翌年にかけて3作立てつづけに公開された昭和の「妖怪三部作」と、平成を代表する天才子役・神木隆之介が主演を務めた『妖怪大戦争』(05)。時代を超えて語り継がれてきた“妖怪”の物語が、令和の時代にさらにスケールアップして描かれる『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(公開中)。前作に引き続き企画段階から携わった妖怪研究の第一人者、荒俣宏は本作について「妖怪映画のヌーヴェルヴァーグであり、日本の妖怪というものを意識し直すひとつのベースとなる作品です」と高らかに宣言する。
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』の物語は、寺田心演じる気弱な小学生の渡辺ケイが、廃校の神社で真っ赤なおみくじを引いたことをきっかけに、妖怪の世界へと迷い込むことから幕を開ける。突如としてフォッサマグナに眠る古代の化石たちが結集し、巨大な妖怪獣へと姿を変えたことで、日本の妖怪たちは大慌てに。このままでは“あのお方”が封じられた結界が破壊されてしまう一大事になってしまうと察知した妖怪たちは、封印された大魔神を目覚めさせ、妖怪獣を迎え撃つ奇策を思いつく。そこで、大魔神を復活させる力を持つ妖怪ハンターの末裔であるケイに白羽の矢が立つことに。
「“裏日本書紀”のようなものが作れるのではないかと考えました」
「これまでの妖怪映画は、京都をはじめとした妖怪の有名な産地がクローズアップされることが多かった。けれど本作では関東全般、特に所沢がある武蔵野と呼ばれる地域を描きたかったのです」と、昨年オープンした角川武蔵野ミュージアムがある所沢市周辺エリアを盛りあげることが企画発足時のねらいであったこと明かす荒俣。そして「この場所と妖怪文化との間に大きな関係があるという発見ができればいいなと思いスタートしたのですが、いざやってみると色々とおもしろい事実がわかってきたのです」と笑みをこぼす。
それは劇中の重要なキーワードとなっている“フォッサマグナ”によって、所沢がある武蔵野、関東平野は数千年前までかなりの部分が海の底に沈んでいたという事実だ。「そこから長い年月をかけて平野が形成されて、一方3万年くらい前からは人が住み着くようになりました。旧石器時代からいたんですよ」と解説する。「たとえば『日本書紀』に描かれているように、出雲平野ができたことで国生み神話の源となった。そこから人間と妖怪のお付き合いの歴史が始まったのですから、武蔵野平野もそんな国生みの場所なのではないかと思ったのです。そうしたら、“ダイダラボッチ”の発祥地であることがわかったのです」。
「しかも旧石器時代の遺跡が最初に発見されたのは関東ローム層であり、縄文文化の研究も品川の貝塚から始まっている。つまり日本国生みの考古学的な物証は関東平野を中心に見つかってきた歴史があり、武蔵野平野から古代の日本文化を展望することができる場所なのだと、ぼく自身も実感できたのです。なのでこの『妖怪大戦争 ガーディアンズ』から、“裏日本書紀”というか、太平洋岸の古代史のようなものが作れるのではないかと考えるようになりました」と、饒舌に本作のバックグラウンドを明らかにした。