京都国際映画祭2021が開幕!上西雄大監督とゴリこと照屋年之監督が語る映画への情熱
自身が主演を務めた『ひとくず』(20)で鮮烈な長編映画監督デビューを果たし、赤井英和主演映画『ねばぎば 新世界』(21)などを手掛ける上西雄大監督と、お笑いコンビ、ガレッジセールのゴリではなく、本名の「照屋年之」名義で、『洗骨』(18)をはじめ、熱量の高い映画を撮り続けてきた照屋監督。今回、10月11日(月)〜17日(日)に開催される京都国際映画祭2021で、新作『西成ゴローの四億円』(11月9日公開)などをはじめ、特集上映が組まれる上西監督と、満島ひかり主演の短編映画『演じる女』(20)が上映される照屋監督の2人を招き、映画作りへの情熱やこだわりを語り合ってもらった。
『ひとくず』は空き巣に入った男が、母親の恋人から虐待されている少女と出会い、彼女を救おうとする物語、『西成ゴローの四億円』は病気の娘を持つ記憶喪失の父親が、高額な臓器移植の手術代を、腕っぷしの強さを活かし稼いでいく物語で、いずれの主人公も日陰者で、上西が演じている。
上西監督はこれまで、映像劇団10ANTSの所属の主宰俳優として、自身が出演する舞台や短編映画なども手掛けてきたが、2017年に撮った『ひとくず』が第12回ロンドン国際映画祭で作品賞や最優秀主演男優賞ほか多数の映画賞を受賞し、その後も舞台と映画、両輪で活躍の場を広げてきた。
照屋監督も『南の島のフリムン』(09)で監督デビュー後、短編や長編をコンスタントに撮り続けてきたが、とりわけ『洗骨』は第40回モスクワ国際映画祭でアウト・オブ・コンペティション部門に出品されたほか、その年の日本映画監督協会新人賞を受賞するなど高い評価を受けた。また、大阪出身の上西監督と沖縄出身の照屋監督は、共に地元を舞台にした人間ドラマを紡いできた共通点もある。
「所持金によって登場人物の“裏”を見せるのは、ポップな演出だけど深い」(照屋)
――今回、京都国際映画祭で特集上映が組まれることになった上西監督は、いまどんなお気持ちですか?
上西「とてもうれしいです。僕は大阪出身だから京都は近いですし、夢のような感じです」
――照屋監督は、上西監督の『西成ゴローの四億円』や『ねばぎば 新世界』などをご覧になっていかがでしたか?
照屋「『西成ゴローの四億円』でおもしろい演出をされるなと思ったのは、、登場人物が出てくるたびにストップモーションとなって、その人の所持金が見せられること。本人の職業とは裏腹に、所持金によってその人の“裏”が見えるので、ポップな演出ですが、すごく深いなと。お金がその人間を表していて、クリーンな人なのか汚い人なのか、あるいは努力家なのかが一瞬でわかります。
アクションで印象に残っているのは、半グレの男たちがナイフを持っている人をやっつけたあと、そのナイフを奪うのではなく、そのまま相手の手を使って別の人を刺すシーンがカッコ良かったです。何年か後に、僕もそうやって撮ろうかと。いますぐやるとパクったとばれるけど、たぶん10年後だったら逃げ切れると思うので、その時は見逃してください(笑)」
上西「そう言っていただけてうれしいです。すぐにでもやってください(笑)」
――登場人物の貯金や借金などの所持金をテロップで出すという発想はどこから来たのですか?
上西「テーマに貧困というか、コロナ禍でさらに広がっていくであろう経済格差の問題があります。西成で暮らす人たちは貯金がない人が多く、所持金は人間を表すのにわかりやすいなと思いました。ただ、いろんな人が出てくるので、台本を書きながらそれぞれの所持金をいくらにしようかとすごく悩みました」
照屋「登場人物の人柄を説明する箇所は、できるだけ短くしたいんですよね。実はこういう悲しい過去があったからこうなっている、ということを説明するにあたり、所持金を見せると一瞬でわかるし、主人公がなにも言わなくても、観客がそこを探りだしてくれるのでいいなあと。そこは驚きました」