京アニが描く「Free!」、ファンが“沼”にハマる理由は?七瀬遙の成長物語をプレイバック!
高校の水泳部を舞台としたアニメーション作品「Free!」。京都アニメーションの制作によって2013年7月からテレビアニメが放映され、女性を中心に多くのファンが支持。“沼”とも称されるその人気は、複数の劇場版作品までもが制作されるなどして、いまも拡大し続けている。
人気の秘密は、細かく描き込まれた“京アニ作画”によって魅力にあふれたキャラクター像と、彼らの成長を感じられる数々の“青春”エピソード。特に丁寧に描きだされ、大きく成長を遂げていくのが主人公の七瀬遙だ。今回は彼にスポットを当て成長を追いかけながら、ファンが“沼”にハマるシリーズの魅力を再確認してみたい。
孤高の天才が、“チーム”の魅力に目覚めた第1期「Free!」
遙は天才的な水泳センスを持ち、フリー(自由形)を愛する高校2年生。勝敗には執着せず、ただ水が好き、水を感じたいという理由で水泳をしてきたが、中学時代に幼なじみの真琴とともに水泳部を辞めて以来は水泳そのものから遠ざかっている。
テレビアニメ第1期は、遙たちが岩鳶高校の2年生に進級する春からスタート。同じスイミングクラブに通っていた渚が入学してきたのをきっかけに元陸上部の1年生、怜も加わり、廃部となっていた水泳部をよみがえらせることになる。
「Free!」を語るうえで欠かせないキャラクターのもう一人が、小学校時代に遙たちをメドレーリレーに誘い、卒業後は水泳強豪国であるオーストラリアへ留学していた凛。彼は遙たちの進級と時を同じくして帰国しており、遙への敵意を露わにする。
留学を経験し、さらに水泳強豪校の鮫柄学園で厳しい鍛錬を重ねた凛に遙は敗北する。いままで当たり前のように誰よりも速く泳ぎ、勝ってきた遙は初めて敗北を味わい、自分がなんのために泳いできたのかを見失う。迷う遙を引き戻したのは水泳部の仲間たち。その気持ちに遙の心も動かされ、メドレーリレーに出場することを決意する。そのリレーから4人の固い絆を感じた凛は本来の泳ぎができなくなり、実力主義の水泳部でリレーのメンバーからも外されてしまう。
「もう水泳を辞める」と自暴自棄になった凛を引き留めたのは遙だった。勝敗だけでなく人にも執着しなかった遙が、凛と対峙して「リレーの楽しさを教えてくれたのはお前だ」と素直な気持ちを告げる下りは本シリーズでも一、二を争う名シーンだ。
水泳部の仲間、そして競技者として上を目指す凛という自分とは対極の存在を通して、遙の心に少しずつ火が灯り、チームで泳ぐことの楽しさに目覚めていく姿がシリーズを通して描かれている。
勝負の世界へ飛び込んでいく第2期「Free!-Eternal Summer-」
第2期の「Free!-Eternal Summer-」では、遙たちは3年生に進級。3年生といえば進路を考える時期だが、遙は相変わらずの“フリー”ぶりで、進路について考えている様子もない。一方、凛の夢はオリンピック出場。遙にも同じ道を歩んでほしいと思っているが、遙自身の勝負への関心の薄さは変わっていなかった。
大会には様々な大学のスカウトが有望な選手を求めて試合を見に訪れており、当然遙もその注目を浴びることになるが、勝負に関心のない彼にとってそれはノイズになってしまい、個人種目のフリーを泳ぎ切ることができなかった。この出来事をきっかけに、遙と凛、さらに遙を心配する部員の心はすれ違っていく。さらには、ずっと一緒に過ごしてきた親友の真琴が「東京の大学に行く」と自分の知らないところで進路を決めていたことにもショックを受け、遙は徐々に心を閉ざしてしまう。
凛はそんな遙を連れて、自分が留学していたオーストラリアへ渡る。現地のプールでナショナルチームのメンバーと泳いだことで、遙の心に変化が起き始める。プールを囲む大勢の観客、沸き起こる歓声のイメージとともに「泳ぎたい。この場所でずっと泳ぎ続けたい」と遙の心が語る。遙は競泳を続け、さらに過酷な勝負の世界へと飛び込んでいくことを決意する。進路や将来という誰もが覚えのある悩みはもちろん、水泳を続ける理由について向き合い、答えを出すまでの遙の心の動きがじっくりと描かれた。