お騒がせ名優メル・ギブソンの底力!『マッドマックス』から40余年…最新作は怒れるサンタ役
12月25日のクリスマス。資産家の息子でわがままな少年ビリーがサンタから届いたプレゼントの箱を開けると、そこにはひとかけらの石炭が入っていた…。『クリスマス・ウォーズ』(公開中)は、サンタを逆恨みした悪ガキが、復讐のためサンタに殺し屋を差し向ける物語だ。クリスマスに子どもたちに笑顔を送るはずのサンタは、本作では、彼の存在を信じない子どもの増加に嘆き、酒をあおる。「影響力を失った。もう潮時なのかもしれない…」とつぶやくこのサンタを演じるのは、かつて一世を風靡した大スター、メル・ギブソン。たびたびのゴシップにまみれ、いまやダーティなイメージがちらつく彼だが、生来のカリスマ性と、味わいや凄みをたっぷり増した円熟ぶりで、近年ますます精力的に活動している。
『クリスマス・ウォーズ』の劇中では、サンタとスゴ腕の殺し屋スキニーマンの攻防戦がスリリングに描かれるが、サンタが雪原で銃撃戦を繰り広げるのはこれが最初かも?原題は「Fatman(太っちょ)」。サンタが殺し屋に「愉快な太っちょだからって、なめてんじゃねぇぞ」というセリフもあるが、怒りに燃えて戦う男がよく似合うギブソンらしさがたっぷり堪能できる。
1956年1月3日生まれのギブソンはすでに60代半ばの大ベテラン。年齢的には聖なる役を演じる適齢期といえる。ニューヨーク生まれのギブソンは、12歳の時に家族とともにオーストラリアに移住。テレビを通し映画に魅力に取り憑かれ、やがて演技の道に進んだ彼が脚光を浴びたのがジョージ・ミラー監督作『マッドマックス』(79)だった。ギブソンが演じたのは、妻子を殺した暴走族に復讐を果たすパトカー警官マックス。内に闘志を秘めた寡黙な男をリアルに演じ強烈な印象を残した。
『マッドマックス2』(81)がアメリカで大評判となり、ピーター・ウィアー監督の社会派ドラマ『危険な年』(82)の演技でも高い評価を得したギブソンは、いよいよハリウッドに進出を果たす。ダイアン・キートン共演の『燃えつきるまで』(84)、『マッドマックス/サンダードーム』(85)も話題を呼んだギブソンは、1985年People誌の「もっともセクシーな男」に選ばれるなど、人気スターの仲間入りを果たす。現在はニコール・キッドマンやラッセル・クロウ、ヒュー・ジャックマン、ナオミ・ワッツ、マーゴット・ロビーほかオーストラリア出身のハリウッドスターは数多い。しかしオーストラリア映画の存在があまり知られていなかった当時、ギブソンはハリウッドがこの地に目を向けるきっかけを作ったひとりでもあった。
精悍な顔つきに強い目力、大柄ではないが均整の取れた肉体を持つギブソンは、ルックスからしてアクション映画にぴったり。そんな彼の『マッドマックス』と並ぶ代表作になったのがリチャード・ドナー監督作『リーサル・ウェポン』(87)だ。ギブソンが演じた刑事リッグスは、ベトナム戦争帰りの猛者で口より先に手が出るタイプ。悪を憎むまっすぐな正義感、本心をうまく伝えられない不器用さなど、その後に彼が演じる多くのキャラクターに通じる要素を持った愛すべきタフガイだ。映画は大ヒットを記録し、シリーズ全4作が製作された。
『リーサル・ウェポン』が公開された80〜90年代にかけてのハリウッドは、シルヴェスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ハリソン・フォード、ブルース・ウィルスほか多くのスターが人気を競ったアクション映画の戦国時代だった。そんななかでギブソンは、感情むき出しで大暴れするワイルドな姿で多くのファンを獲得。それ以降、2000年代初頭にかけて映画スターの活躍度合いの指標“トップテン・マネーメイキングスター”の常連となった。