「日本で撮影することは、すべての監督の夢」ヘンリー・ゴールディングが明かす、日本との深い縁

インタビュー

「日本で撮影することは、すべての監督の夢」ヘンリー・ゴールディングが明かす、日本との深い縁

ハズブロの人気アクションフィギュアを原作に、2009年にはチャニング・テイタム主演で、2013年にはドウェイン・ジョンソン主演でそれぞれ大ヒットを記録した「G.I.ジョー」シリーズ。その劇中に登場する、黒いマスクを被り一言もしゃべらない謎多き“忍者ヒーロー”スネークアイズの誕生にまつわる物語を描くシリーズ最新作『G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ』が公開中だ。

本作で主人公のスネークアイズ役を演じているのは、『クレイジー・リッチ!』(18)でブレイクを果たしたマレーシア出身のヘンリー・ゴールディング。シリーズに登場するキャラクターのなかでも屈指の人気を誇る同役に抜擢されたことについて、「気軽に引き受けられるような役ではなかった」とその責任の重さを感じながら臨んだことを吐露した。

シリーズの人気キャラ“スネークアイズ”の過去に迫る本作
シリーズの人気キャラ“スネークアイズ”の過去に迫る本作[c]2021 Paramount Pictures. Hasbro, G.I. Joe and all related characters are trademarks of Hasbro. [c] 2021 Hasbro. All Rights Reserved.

「彼は『G.I.ジョー』のなかでもっともすばらしいキャラクターです。その責任を負うために、新鮮な視点と優れたストーリーテリングで彼のキャラクターを考察していく必要がありました。過去にある種の危険がスネークアイズにあり、まるで霧のような謎があり、彼が沈黙に陥った理由や嵐影一派の複雑な歴史がある。この映画で彼の旅路を刻むことができるのはすばらしいことだと感じました」と語り、「スネークアイズの魅力は彼が持つミステリーです。本作で我々は、マスクをつける前の彼と出会うことになり、彼が犯した間違いを見て、なにを考えていたのかがわかることになります」と続けた。

物語の舞台となるのは日本。闇の組織からある男の命を救ったスネークアイズは、秘密忍者組織“嵐影”への入門を許可される。600年の間、日本の平和を守り続けた“嵐影”は、悪の抜け忍集団と国際テロ組織“コブラ”連合軍による攻撃にさらされ、危機に瀕していた。そしてスネークアイズは、迫り来る忍者大戦から世界を守るため、嵐影の3つの試練を乗り越えて真の忍者となるべく修行を重ねていくことになる。


ロケが困難だった東京の街並みはセットで再現!
ロケが困難だった東京の街並みはセットで再現![c]2021 Paramount Pictures. Hasbro, G.I. Joe and all related characters are trademarks of Hasbro. [c] 2021 Hasbro. All Rights Reserved.

内閣府が初めて実施した外国映像作品ロケ誘致の実証調査対象作として、ハリウッド映画としては異例の1か月超に及ぶ長期日本ロケが行われたことでも大きな話題を集めている本作。かねてから日本は海外と比較してロケ撮影にかなり多くの制限があることで知られており、本作でも接近戦が繰り広げられる街角のシーンではバンクーバーのスタジオに日本のとある街を緻密に再現したセットを構築。しかし、歴史を感じさせる建築物をセットで再現させることは不可能ということで、日本ロケが行われることとなった。

「とても価値のある経験でした」と満足そうに振り返るゴールディングは、実は日本とかなり縁のある俳優だ。「僕は昔、仕事で旅行番組のホストをしていました。その時に何度も日本に行ったことがあります。それに僕の妻は日本に5年ほど住んでいたので、最初にデートをしはじめた時には、僕は毎月のように東京に行っていました」。本作の撮影が行われたのは茨城県と大阪府、そして兵庫県の姫路の3ヶ所。とくに姫路では姫路城や圓教寺、亀山本徳寺といった歴史的な建造物が重要なシーンで使用されている。

内閣府の外国映像作品ロケ誘致の実証調査対象作に選ばれ、1か月超の日本ロケが行われた
内閣府の外国映像作品ロケ誘致の実証調査対象作に選ばれ、1か月超の日本ロケが行われた[c]2021 Paramount Pictures. Hasbro, G.I. Joe and all related characters are trademarks of Hasbro. [c] 2021 Hasbro. All Rights Reserved.

「この映画はとても日本文化に根付いているので、信憑性を持たせることがとても重要でした。撮影所だけで、あたかも日本のようなフリをしたらすぐに気付かれてしまう。だから日本に行かなくてはならなかったのです」と、その意義について熱弁したゴールディングは、自身の出世作となった『クレイジー・リッチ!』の監督で前作『G.I.ジョー バック2リベンジ』の監督を務めたジョン・M・チュウとのエピソードを明かす。「僕の成長ぶりをよろこんでくれた彼に、日本での撮影の様子を伝えたら、とても嫉妬していました(笑)。日本で自由に撮影をすることは、すべての監督の夢ですからね」。

本作のもうひとつの見どころは、なんといっても剣術を使ったアクションシーンの数々。アクション監督を務めたのは「るろうに剣心」シリーズなどに携わった谷垣健治。「彼が教えてくれた剣術とワイヤーワークは、ボクシングやムエタイとはまるで違うものでした。『るろうに剣心』の剣術は、僕がスクリーンで観たことのあるなかで、もっともすばらしいもので、彼はそれをこの映画に取り入れようとしていました」。そして「家に帰るととにかく身体中が痛くて、僕は徹底的にうちのめされました。最初の4日間ぐらいは『一体なにをやっているんだ…』と思う瞬間もあって、でも集中すればうまくいくと考え、トレーニングに励みました」と、撮影前の過酷な日々を回想。

ハリウッド映画でリアルな日本の風景が見られる貴重な作品に
ハリウッド映画でリアルな日本の風景が見られる貴重な作品に[c]2021 Paramount Pictures. Hasbro, G.I. Joe and all related characters are trademarks of Hasbro. [c] 2021 Hasbro. All Rights Reserved.

メガホンをとったロベルト・シュヴェンケ監督は大の日本映画フリークで、チャンバラシーンは黒澤明監督の映画から影響を受けているという。一方で演じる側のゴールディングは、北野武が監督と主演を務めた『座頭市』(03)を参考にしたことを明かす。「この映画を観た時、暴力の背後にある静けさに驚かされました。視覚以外の感覚を研ぎ澄ませて周囲の世界をすべて感じる。僕はすべての間にあるコントラストが大好きなんです」と目を輝かせながら語った。

さらに「ドラえもん」や『AKIRA』(88)など、日本の作品を子どもの頃から親しんできたことを楽しげに明かしたゴールディングは、「僕たちはこの映画で、日本の文化を、時代を超えた美しさの感覚を染み込ませるようにして祝福しています」と本作に散りばめられた日本映画への敬意を語り、その出来栄えにたしかな自信をのぞかせていた。

構成・文/久保田 和馬

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