衝撃の真実にたどり着け!新感覚スリラー『アンテベラム』が緻密に仕掛ける“本当の恐怖”
『ゲット・アウト』や『アス』、『ミッドサマー』にも通じる良作スリラーの潮流
さて、本作を読み解くための大きなヒントになるのは、前述したとおり『ゲット・アウト』や『アス』と同じプロデューサーが関わっていることだ。第90回アカデミー賞で脚本賞を受賞した『ゲット・アウト』、そしてオスカーを獲得した後のジョーダン・ピールが監督&脚本を務めた『アス』のなにが優れていたのか、を思い出してほしい。
どちらも「昔から問題視されていることなのに、現代も一向になくならない人間の負の感情」がテーマになっている。その負の感情は『ゲット・アウト』では差別、『アス』では不連帯という、目には見えないながらも“人コワ”(=人間の本質的な怖さ)に重点を置いたことにある。
本作は冒頭からして人コワに始まり、謎めいた展開を経て、最終的に人コワに落としこんでいく流れ。この流れが、いまのホラー/スリラージャンルでヒットの定番なのは、本作プロデューサーによる前述2作からも明らか。そのほか、スウェーデンの夏至祭をモチーフにした『ミッドサマー』(19)や、一般市民による粛清の日を描く「パージ」シリーズ、ゾンビと対峙するサバイバル『ワールド・ウォー Z』(13)や『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)など、近年の世界的大ヒットを収めたホラー/スリラー映画に共通する点だ。「いろいろ物珍しい設定が目立つけど、結局コワイのは生きている人」という落としどころは、個人主義に走りすぎている現代ならではのポイントではないだろうか。
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恐怖を増幅する映像美…『アンテベラム』が一際魅力を放つ理由
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