進化を遂げた伝説のホラー『ハロウィン KILLS』、9.11を巡る国家の闇に迫る『モーリタニアン』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、ジョン・カーペンターによるホラーの金字塔「ハロウィン」シリーズ最新作、9.11の首謀者として不当に拘束された男を巡る国家の闇を描くサスペンスドラマ、血のつながらない2つの親子に隠された嘘と秘密が交錯する感動作の、ドキドキが止まらない3本!
神出鬼没のマイケルが、“最凶”の残虐さを発揮!…『ハロウィン KILLS』(公開中)
ジョン・カーペンター監督の伝説的な名作『ハロウィン』(78)の40年後を描いた『ハロウィン』(18)は、不死身の殺人鬼ブギーマンことマイケル・マイヤーズの復活をストレートに映像化したスラッシャー・ホラーだった。ところが、その続編にあたる最新作『ハロウィン KILLS』は意表を突いた展開を見せる。前作の壮絶なラストシーンの直後、舞台となるハドンフィールドの街の住民が自警団を結成。一方、マイケルと深い因縁で結ばれたローリーは重傷を負って病院に運ばれ、彼女の娘カレンと孫アリソンを交えた三世代の女性たちのドラマも同時進行する。そんな混沌とした極限状況のもと、神出鬼没のマイケルは旧シリーズも含めて“最凶”の残虐さを発揮。まさしく“KILLS”という題名にふさわしく無数の死者が続出するハロウィンの惨劇、その血みどろのカオスに身を委ねてほしい。(映画ライター・高橋諭治)
国家権力と事実の関係にリアルに戦慄…『モーリタニアン 黒塗りの記録』(公開中)
世界には、知られざる衝撃の実話がある。そして、知っておくべき事実もある。映画のそうした役割を強く実感させる一作だ。9.11同時多発テロに関与したとされる、モーリタニア出身のモハメドゥ・スラヒ。キューバのグアンタナモ収容所に拘束された彼だが、正式な裁判を受けておらず、不当な拘束だと訴える弁護士のナンシーと、モハメドゥへの死刑判決を急がされる米軍のスチュアート中佐。両者の調査、モハメドゥとの面会などで真相が近づいてくるかと思いきや、タイトルにあるように裁判に必要な機密書類は「黒塗り」だらけだった…。こうした書類の黒塗りは、日本でも似たような事例を記憶している人も多いので、国家権力と事実の関係にリアルに戦慄。超骨太なテーマが全編から伝わってくる。そしてなにより、グアンタナモで受ける試練の想像を絶する苦痛や、わずかに見つけた希望、そして諦めの感情など、モハメドゥの運命がドラマチック。サポート役に回ったジョディ・フォスター、ベネディクト・カンバーバッチの真摯な演技も感動を倍増させる。(映画ライター・斉藤博昭)
一瞬見せる憂いの表情が謎を解く鍵…『そして、バトンは渡された』(公開中)
2019年の本屋大賞を受賞した瀬尾まいこの同名小説を、永野芽郁と石原さとみの共演で映画化した本作。血のつながらない親たちに育てられ、苗字が4回も変わった優子。泣き虫な娘“みぃたん”に深い愛情を注ぎながらも、突然姿を消してしまった自由奔放な女性、梨花。映画は併行して描く2つのドラマを次第に交錯させ、ひとつの真実を浮かび上がらせていく。優子が4回も苗字を変えたのはなぜなのか?梨花が突然姿を消した理由とは?石原さとみがほかではあまり見たことのない“魔性の女”とも思える梨花をのびのびと演じているが、彼女が一瞬見せる憂いの表情にこそすべての謎を解く鍵が!田中圭と大森南朋、市村正親が、なかなか成立させ難い、優しい嘘をつく大人たちを繊細な芝居で体現しているのも見逃せない。(ライター・イソガイマサト)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/サンクレイオ翼