いよいよ本日開幕!大改革を遂げた、第34回東京国際映画祭の見どころをチェック
ついに幕を開ける“アジア最大級の映画の祭典”第34回東京国際映画祭(TIFF)。昨年はコロナ禍ということもあり、規模を大きく縮小してリアルとオンラインのハイブリッド型で開催するなどいくつもの新たな試みを行ったが、ポストコロナの再スタートともいえる今回、さらなる飛躍に向けて大きな改革を遂げた。そこで本稿では、従来との変更点に触れながら、今年のTIFFの見どころや注目作品、イベント等をチェックしていきたい。
六本木から日比谷・有楽町・銀座地区へ!17年ぶりの大移動
1985年の第1回から2003年の第16回までは渋谷のBunkamuraをメイン会場に、2004年の第17回から昨年の第33回までは六本木のTOHOシネマズ六本木ヒルズをメイン会場としていたTIFF。今年からは、長年にわたって“映画の街”として親しまれてきた日比谷・有楽町・銀座地区にメイン会場が移転。同地区のホールや複数のミニシアターを上映会場とし、昨年に引き続き同時期開催となる第22回東京フィルメックスと共に、街全体で映画の祭典を盛り上げていく。
また、会場のみならず上映作品の選定にも大きな変革が。これまで映画祭のプログラミング責任者を務めてきた矢田部吉彦が退任し、新たに市山尚三がプログラミング・ディレクターに就任。従来の「特別招待作品」が「ガラ・セレクション」部門に、「Japan Now」部門が「Nippon Cinema Now」部門へと刷新されるなど、それぞれの部門が新たなテーマとビジョンをもとに生まれ変わった。
オスカー有力作や巨匠の新作など、話題作がずらり
そんな今年の東京国際映画祭でオープニングを飾るのは、現代ハリウッド映画の巨匠クリント・イーストウッドの監督40作目となる『クライ・マッチョ』(2022年1月14日公開)。そしてクロージングに選ばれたのは、トニー賞受賞ミュージカルを映画化した『ディア・エヴァン・ハンセン』(11月26日公開)。この2本を含み、新たに創設された「ガラ・セレクション」部門には、各国の国際映画祭で話題を集めた作品や名だたる巨匠の最新作など10本がラインナップされている。
今年7月に行われたカンヌ国際映画祭でプレミア上映されたウェス・アンダーソン監督の『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(2022年1月28日公開)や、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞し、来年のアカデミー賞の有力候補と目されているジェーン・カンピオン監督の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(12月1日よりNetflixにて独占配信)。エドガー・ライト監督の最新作となるホラー『ラストナイト・イン・ソーホー』(12月10日公開)など、映画ファン必見の話題作を日本での劇場公開よりも一足早く観ることができる。
コンペティション部門には、国際色豊かな15作品が選出
また、国際映画祭の花形でもあるコンペティション部門も、例年にも増して豪華な作品が勢ぞろい。今年は世界113の国と地域から集められた1533本のなかから、よりすぐりの15作品が選出。フランスの大女優イザベル・ユペールを審査委員長に迎え、2年ぶりに最高賞となる東京グランプリなど各賞を決定する。
注目作品は、第21回東京フィルメックスでグランプリを受賞したアゼルバイジャンのヒラル・バイダロフ監督の新作『クレーン・ランタン』(21)や、『サイの季節』(12)のバフマン・ゴバディ監督がトルコで撮影した新作『四つの壁』(21)など。日本からも池松壮亮と伊藤沙莉が共演する松居大吾監督の『ちょっと思い出しただけ』(21)と、『スパイの妻』(20)や『ハッピーアワー』(15)で共同脚本を務めた野原位の劇場監督デビュー作『三度目の、正直』(21)が選出。
国際色豊かなラインナップのなかで、どの作品が東京グランプリに輝くのか目が離せない。
吉田恵輔監督特集や、新設のアニメ部門も必見!
「Nippon Cinema Now」部門では“この1年で公開された日本映画のなかから、特に海外に紹介されるべき日本映画”という観点で選ばれた7作品と、今後海外での評価が期待される吉田恵輔監督の3作品が上映。日本を含むアジアの新鋭監督の作品を上映する「アジアの未来」部門や、各国の映画祭を沸かせたアーティスティックな作品が集められた「ワールド・フォーカス」部門も注目作が目白押し。
そして今年新たに創設された「ジャパニーズ・アニメーション部門」では、「温故知新」をキーワードに、今年3月に逝去されたアニメーターの大塚康生のレトロスペクティブ、「2021年、主人公の背負うもの」をテーマにした最新アニメ作品の紹介、生誕50周年を迎える「仮面ライダー」シリーズの特集上映が開催。例年、名作との新たな出会いを楽しめる「日本映画クラシックス部門」では森田芳光監督の『家族ゲーム』(83)や、日本の女性監督の草分け的存在である田中絹代監督作4作品が上映される。
“観る”だけじゃない映画の楽しみ方も盛りだくさん
ほかにもAmazon Prime Video協賛のもと新たな才能の発掘を行う「Amazon Prime Videoテイクワン賞」が設立されたり、昨年からスタートした国内外の映画人たちが語り合う「トークシリーズ@アジア交流ラウンジ」には『ドライブ・マイ・カー』(公開中)の濱口竜介監督や『パラサイト 半地下の家族』(19)のポン・ジュノ監督が参加したりと、様々な方面から映画を掘り下げる企画が用意されている今年のTIFF。是非とも会場に足を運び、どっぷりと映画の魅力に浸かってみてはいかがだろうか。
第34回東京国際映画祭は11月8日(月)まで開催中。各上映、イベントのチケット情報、スケジュール詳細は公式ホームページを確認してほしい。
文/久保田 和馬
※吉田恵輔の「吉」は“つちよし”が正式表記