小松菜奈と坂口健太郎が桜吹雪が舞うなかで愛を紡ぐ『余命10年』の現場を直撃

コラム

小松菜奈と坂口健太郎が桜吹雪が舞うなかで愛を紡ぐ『余命10年』の現場を直撃

主人公と同様若くして病死した小坂流加の同名小説を、小松菜奈坂口健太郎をW主演に迎えて映画化した『余命10年』(2022年春公開)。メガホンをとったのは、第43回日本アカデミー賞6部門受賞作『新聞記者』(19)や『ヤクザと家族 The Family』(21)の藤井道人監督だ。2021年3月某日、東京都内石神井川沿いの桜ロードで桜吹雪が舞う重要なシーンを撮影する、藤井監督を直撃した。

小松演じるヒロインの茉莉(まつり)は、数万人に1人という不治の病にかかり、余命が約10年であることを知らされる。「もう恋はしない」と誓う茉莉だったが、和人(坂口)と出会い、惹かれあっていく。「余命10年」という容赦ない宣告を受けたのは、小説の著者である小坂自身である。その体験を基に綴られた恋愛小説の映画化作品ということで、小松たちはもちろん、藤井監督らスタッフ陣も並々ならぬ情熱を持って現場に臨んだ。

「恋愛映画というよりは、ドキュメンタリーのような10年間をつないでいこうと思いました」

【写真を見る】不治の病である茉莉を演じるため、1年かけてストイックに減量したという小松菜奈
【写真を見る】不治の病である茉莉を演じるため、1年かけてストイックに減量したという小松菜奈[c]2022映画「余命10年」製作委員会

藤井監督は、オファーを受けた際に「ストレートなタイトルを見て一瞬、躊躇しました」と告白。「軽い気持ちでこの仕事を受けることは正直考えられなかったです。でも、その後原作を読ませていただき、実際の小坂さんの人生についても知っていった時、これは実際にこの人生を生きた方のお話だと感じました。それですごくこの作品に魅せられ、小坂さんの人生と小説の世界観がリンクするような映画ができればと思い『挑戦させてください』と伝えたことが始まりです」

その後、茉莉が生きた人生を、移りゆく四季と共に描いていくために、約1年という長期スパンの撮影スケジュールが組まれたという。当日のロケ日は桜の開花状況に合わせて設定されたが、まさにドンピシャのタイミングだった。大型扇風機で風を起こすなか、小松たち2人が談笑しながら桜ロードを歩いていく。

遠くに西武池袋線の電車が走っている石神井川沿いの桜ロード。藤井監督が、突風で桜の花びらを飛ばせるタイミングをスタッフにキュー出しすると、絶妙なタイミングで2人に花吹雪が降り注ぐ。そこで笑顔を見せる茉莉と和人の表情がとてもナチュラルで美しい。ストイックに体重を落として茉莉になりきった小松からは、命の輝きが感じとれた。

同窓会で茉莉と出会い、惹かれ合っていく和人(坂口健太郎)
同窓会で茉莉と出会い、惹かれ合っていく和人(坂口健太郎)[c]2022映画「余命10年」製作委員会


「小松さんが主演として茉莉役にどれだけのものを懸けてくれていたかは、最初から伝わってきました」と、全幅の信頼を寄せる藤井監督。「茉莉ちゃんがどんなふうに生きていたのかを、小松さんと一緒に考えました。それで、きれいな感情だけを映す必要はないし、本当にムカついたらその感情もそのまま撮ることが一番大事だということで、ドキュメンタリーのような10年間をつないでいこうとなりました。夏にクランクインして、季節ごとに撮影をしていきましたが、いまはもう小松さんが茉莉ちゃんにしか見えません。小松さんにとっては、かなり大変な役だと思いますが、彼女にとって代表作になってほしいと思いながら、撮影をしています」

もう1人の主演を務めた坂口については「坂口くんのお芝居というか、たたずまいがすごく好きです」と言う。「小松さんも坂口くんもすごく素朴な面を持っているのに、とても華がある。撮影していくうちに、2人がどんどん役とシンクロしていくのがわかったので、僕は2人にすごく感謝しています。うちのチームは何テイクも粘って撮りますが、2人はその空間を楽しんでくれるし、僕もいままでの人生で撮ってきたなかで、ベストアクトの2人を撮れている気がします」

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