富田望生と『フラ・フラダンス』の“聖地”を巡礼!作品に込めた、故郷・福島県いわき市への想い
「本作には、“いま”のハワイアンズらしさがいっぱいに詰まっています」
2006年に公開され、大ヒットを記録した映画『フラガール』はハワイアンズの誕生秘話を描いた作品だったが、今回の『フラ・フラダンス』は2011年3月11日の東日本大震災を経験した、いまのハワイアンズの新人ダンサーたちの物語。彼女たちの時間は、富田さんが生きてきた震災後の時間ともほぼ重なる。「そうですね。蘭子ちゃんは秋田出身という設定ですが、フラガールや仲間に対する愛情、私が抱いている地元への想いを重ね合わせてもキャラクターが崩れることはないと思ったので、“伝えられる側”にいるいわきの代表として参加しているんだという信念を持ちながら、蘭子ちゃんを演じさせていただきました」。
富田自身、本作のプロモーションでのハワイアンズ訪問が10数年ぶりの機会になったそうだ。それだけに、いまも変わらない笑顔で踊るダンサーたちを久しぶりに目にした時は「やっぱり感動しましたね」と瞳を輝かせる。「コロナ禍で休業していたことは知っていたので、活気が戻っているのか不安だったのですが、フラガールさんのパフォーマンスを拝見して、彼女たちは止まる気はないんだなと実感しました。それどころか、どんどん進化している。まだまだ進化の途中で、アイデアはほかにもいっぱいありまっせ!みたいな力強さもすごく感じました」。
「ハワイアンズ自体も、流れるプールの真ん中にお魚が泳いでいる水槽があったりと、施設自体はすごく進化しているなと思ったけど、入口で流れている音楽や売店の雰囲気は変わっていなくて」としみじみ言葉にする。そのうえで、「今回の映画でも描かれていますが、先輩から後輩へしっかり受け継がれている“ハワイアンズらしさ”があるんだなって思えたし、一方でTikTokなどで流行っている最近の振りがショーに取り入れられているなど、常に変化していこうという気概も同時に感じました。そういった変わっていく部分、変わらない部分もリアルに切り取られた『フラ・フラダンス』には、『フラガール』の時代とはまた違った、いまのハワイアンズらしさがいっぱいに詰まっていると思います」と、前のめりに語る。
「いわきを離れた私が、“地元の人”として表に立っていいのか悩んだこともありました」
そこまでハワイアンズに強い想いを持ちながらも、訪れるのが「10数年ぶりになった」というのには大きな理由がある。2011年3月11日、東日本大震災の発生により福島県は大きな被害を受けており、それはいわき市に暮らす富田家にとっても例外ではなかった。被災を受けた家族の仕事の変化によって、一家は東京に移り住むことになり、富田自身も中学時代より俳優として活動を開始。東京を拠点に忙しい日々を送るなかで、地元へ足を向ける機会は自然と少なくなっていった。
富田は被災当事者であり、自ら望んでいわき市を離れたわけではない。筆者にその複雑な心中を明かしてくれた。「震災10年を迎える前から、3月11日が近くなると震災関連のお仕事をさせていただいているんですが、母も祖父母もいまは東京で暮らしていますし、友だちの多くも東京に出てきていて。いわきに帰るきっかけも少なくなったなか、“地元の人”としてしゃべっていいのかな、と悩んだこともありました。私一人が上京していて、『家族がいわきで暮らしているので、地元の情報もよく入ってくるんですよ』ということでもないので」。
富田は「ただ、」と続け、「好きなんですよね、いわきのことが」とおだやかに微笑む。「震災の時が11歳になりたてで、いま21歳なので、ちょうどいわきで半分、東京で半分過ごしたことになるんですけど、完成した映画を観た時に純粋に地元の人間としてうれしくなっていることに気がつきました。『地元はいわきです』って言ってもいいと思えるくらい、私はいわきに愛情があるんだなって、『フラ・フラダンス』は自分自身を再確認するきっかけにもなりました」。