富田望生と『フラ・フラダンス』の“聖地”を巡礼!作品に込めた、故郷・福島県いわき市への想い
「いわきの、戻りたくなる温かさみたいなものが『フラ・フラダンス』から感じとれると思います」
本作で描かれる5人の新人ダンサーたちは、富田と同年代の新社会人だ。そんな彼女たちが体験することや、見聞きするものにも共感を覚えたようだ。「新社会人の悩みは、ジャンルは違えど誰もがぶつかるものなので、この作品は同年代の方々のパワーになるものだと思います。それに、掴みきれないぐらいいろいろなものがある東京と違って、いわきにあるのは『スパリゾートハワイアンズ』と『アクアマリンふくしま』という水族館、それと美味しいウニぐらい。なにもないと言えばなにもないのかもしれないけれど、戻りたくなる温かさみたいなものがこの町にはあるんですよね。その空気は、劇中の5人がいわきで過ごしていく日々からも感じとれるものだと思います」と、作中にもいわきならではの魅力が込められていることを語る。
ハワイアンズ内をじっくりと歩き回ったあと、富田がフラガールたちと登壇する舞台挨拶に向かうため一度屋外に出ると、南国そのもののパーク内とは打って変わって、冬の東北の寒さが身にしみる。そんななかでも富田は常に明るさを失わず、筆者らを楽しませようとおどけてみせる。インタビューの最後に、「いまの気持ちは?」と聞くと、「未知な感覚ですね」とはにかむ。「不思議ですね。今回、役者としていわきに来られていること、フラガールの皆さんと一緒にステージに立つということは、震災がなければ起こり得なかったものなので。ですから、いまは震災が私にとってはきっかけにもなったと信じて前に進むしかないと思っています。震災がなければ、こうして“伝えられる側”にいることもなかったと思いますし、『いわきを地元と言っていいのかな?』なんて悩んでいる場合ではなく、自分は伝えていく使命を任されたんだと捉えて、これからも胸を張って表に出ていこうと思います」。
そう力強く語ってくれた富田の凛とした面持ちと、フラガールたちにも通ずるひまわりのような笑顔は、『フラ・フラダンス』という作品のポジティブなエネルギーを象徴しているようで、夜風のなかにいるこちらの心までが、不思議と暖かくなるようだった。
取材・文/イソガイマサト