「デートに誘えないところがそっくり」木村昴が吹替版を演じた『イン・ザ・ハイツ』、主人公に感じたシンパシー

インタビュー

「デートに誘えないところがそっくり」木村昴が吹替版を演じた『イン・ザ・ハイツ』、主人公に感じたシンパシー

「セリフから歌への切り替えに、いかに違和感を感じさせないか」

昨今のミュージカル映画はセリフだけでなく歌も日本語に吹き替えている作品が多いが、今作は、歌はオリジナルのまま、セリフだけが吹き替えとなっている。セリフから歌へ、歌からセリフへと続く際にどれだけ違和感を与えないかは、木村が特に苦労した点だったそうだ。「なるべくオリジナルのウスナビの声に近付けたいなと思って演じました。まったく一緒は難しいけど、僕の中で近付けられるところまでいきたくて。ウスナビ役のアンソニー・ラモスさんって、すごく特徴的ないい声をされてますし、なおかつラテン訛りがあって、アメリカ英語みたいにハキハキしゃべるというよりは、わりとルーズな話し方なんですよね。なので、日本語も同じようにルーズにしゃべろうと意識しました。冒頭のシーンで弁護士さんに故郷の写真を見せてもらうシーンがあるんですけど、『マジかよ…』ってぼそっと言うんですよ。声優としてはハッキリした声で言いたくなるところなんですけど、ぼそっと歯切れ悪く話す彼の癖を真似したり。そういうところはなるべく表現できたらいいなと思って演じました」。

 自身との共通点も多いという、主人公のウスナビ
自身との共通点も多いという、主人公のウスナビ[c] 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

両親の母国であるドミニカ共和国で悠々自適な生活を送ることを夢見るウスナビや、デザイナーを夢見るヴァネッサなど、ニューヨークに実在する街「ワシントン・ハイツ」の中で夢を追い求めたくましく生きる若者たちを描いている今作。作品にちなんで木村の夢について聞くと、「いますぐに叶えたい夢があるとしたら、ちょっと生意気ですけど一日休みが欲しい(笑)!」とのこと。「急にポンって休みになるんじゃなくて、『よし!休むぞ!』っていう日が欲しいんです。そしたら朝からまずディズニーランドに行きます(笑)。それからショッピングして、夜ご飯を食べて、釣りに行って…ってめちゃくちゃ遊びますね!お休みっていっても一日ゴロゴロしたいわけじゃなくて、大好きなテーマパークでジェットコースターに乗ったり、ポップコーンとかホットドックを食べまくりたい。IKEAとコストコに行くのもいいな〜。IKEAでホットドックにめちゃくちゃピクルスのせて食べて、コストコでプルコギドックも食べたいです!」と満面の笑みを見せた。

ポジティブで明るい木村ならではの言葉が印象的だ
ポジティブで明るい木村ならではの言葉が印象的だ撮影/河内彩


街の人々は経済的危機に見舞われ、我が家を追われる状況に置かれる。若者たちは「この土地に残るか、それとも自身の夢を叶えるために住み慣れた街を捨てるか」と、思い悩む。結局自分にとっての「ホーム」とはどこであり、なんなのか…?今作は陽気なミュージカル映画であるのと同時に、そんな社会的テーマも私たちに訴えかける。木村は、「それぞれの故郷を離れて『ワシントン・ハイツ』に来た人たちが、そこで第二の故郷を作る。そんな街の人々にすごく共感できました」と話す。「僕の母国はドイツで、向こうに実家があるんです。だから、もしかしたら僕にとっての“ホーム”はドイツなのかもしれないけど、個人的な考え方としては、いまいるところが “ホーム”になるんじゃないかな、と。自分の育ったルーツという意味での故郷はそれぞれあると思うんですけど、『住めば都』という言葉が日本にもあるように、どこに行ったとしても自分がその場所を“ホーム”だと思えればどこでもいい。くさい言い方になっちゃいますけど、“ホーム”は心の中にあって、場所じゃないのかなと思います。あと僕は、小学校のときに3回も転校しているので、わりと“ホーム切り替え機能”が充実してるんですよね(笑)」とポジティブで明るい木村らしい考えを明かしてくれた。

 ワシントン・ハイツに生きる若者たちの等身大の姿が描かれる
ワシントン・ハイツに生きる若者たちの等身大の姿が描かれる[c] 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

自身とウスナビには共通点が多いと話していたが、前向きな言葉の数々からも、どんな困難にも立ち向かい夢に向かって突き進んでいく“ウスナビらしさ”を感じることができた。そんな彼がウスナビを演じているからこそ、吹き替え版もオリジナル同様、観る者にパワーを与え、夢を追い続けることのすばらしさを改めて教えてくれる作品となっている。

取材・文/紺野真利子

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