リン=マニュエル・ミランダが振り返る、『イン・ザ・ハイツ』『tick, tick... BOOM!』から『ミラベルと魔法だらけの家』へ、駆け抜けた2021年

インタビュー

リン=マニュエル・ミランダが振り返る、『イン・ザ・ハイツ』『tick, tick... BOOM!』から『ミラベルと魔法だらけの家』へ、駆け抜けた2021年

これまでにピューリッツァー賞、グラミー賞、エミー賞、トニー賞を受賞している、現代のエンタメ業界を代表する作曲家、劇作家であり俳優のリン=マニュエル・ミランダ。2021年、彼が携わった映画は実に4本が公開となった。自作ミュージカルを原作に映画化された『イン・ザ・ハイツ』、11曲の挿入歌を作曲し、自身が主役の声優も務めた長編アニメーション『ビーボ』(Netflixにて独占配信中)、映画初監督作となった『tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』(Netflixにて独占配信中)では、ミュージカル「レント」の作者ジョナサン・ラーソンの半自伝的ミュージカルを映画化した。そして、8曲のオリジナル楽曲を提供した『ミラベルと魔法だらけの家』(公開中)について、「4本のなかで、『ミラベル』が一番私の“ホーム”に近い作品」と評する。

「『ミラベル』の楽曲制作は、家族をテーマに論文を書くようなものでした」

【写真を見る】『イン・ザ・ハイツ』『tick, tick... BOOM!』『ビーボ』『ミラベルと魔法だらけの家』…リン=マニュエル・ミランダの2021年を総まとめ!
【写真を見る】『イン・ザ・ハイツ』『tick, tick... BOOM!』『ビーボ』『ミラベルと魔法だらけの家』…リン=マニュエル・ミランダの2021年を総まとめ![c] 2021 Disney. All Rights Reserved.

『ミラベルと魔法だらけの家』は、南米コロンビアを舞台に、不思議な能力を持つ大家族マドリガル家のうち一人だけギフト(才能)を持たない少女ミラベルが、家族のつながりと代々伝わる魔法の才能を救う最後の希望として立ち上がる物語。劇中のミュージカル楽曲制作だけでなく、映画の起源から立ち会っているミランダにとって今作は、家族というテーマへの普遍的な共感と、新しい学びを得る経験になったという。

「この物語は、家族をテーマに論文を書くようなものでした。私たちはまず、自分たちの家族の話を共有し、インスピレーションを得ることから始めました。複数の世代にまたがるラテン系の家族を中心に、家族間の複雑な人間関係を描く物語になりました。また、たくさんのキャラクターが登場するので、私のなかの音楽のバラエティが無限に広がり、ミュージカルの作風やコロンビアの文化を探究する学生のように、そして実践者として学ぶことができました。これらの異なるキャラクターにできるだけバラエティに富んだ音楽スタイルをもたらすことは、本当にエキサイティングな挑戦でした」。


“魔法”にあふれる家で、絆の物語が紡がれる『ミラベルと魔法だらけの家』
“魔法”にあふれる家で、絆の物語が紡がれる『ミラベルと魔法だらけの家』[c] 2021 Disney. All Rights Reserved.

コロンビアの文化を学ぶために取材旅行に出かけ、そこで得た経験や知識が作曲やストーリーテリングにも活かされている。「もっとも不思議だったのは、コロンビア音楽の特殊性に触れるたびに物語が次へと動きだしていくことでした。だから、この映画でもっとも表現したい大事な曲の作曲を先延ばしにしていました。ディズニー作品には必ず、ヒーローやヒロインが旅に出る前に自分が得たいものについて歌う楽曲があります。すでにすばらしいポップアンセムがたくさんあるのに、自分がそれらと並ぶ曲を作らなければならないという恐れを捨てなければなりませんでした。頭のなかに『ありのままで(Let It Go)』(『アナと雪の女王』)の印象が強く残っていたので、とても時間をかけてクオリティを高めていきました」。

彼が手掛けたミュージカルナンバーのなかでも、ミラベルのおじで未来を予見する能力を持つブルーノの楽曲「秘密のブルーノ」は、いままでのディズニー作品では類のない楽曲になったと自負する。ミランダは「グループで歌うゴシックな楽曲で、必ずしもキャラクターのソロ楽曲がなくても音楽的に確立させることができるのだと興奮しました。アニメーションのミュージカルには幕構成はありませんが、この曲で第一幕の終わりを告げることができると思いました。いままで学んできたミュージカル舞台構成の伝統に基づき、ミュージカルの『リトル・ナイト・ミュージック』の『田舎でウィークエンド』や、『レント』の『クリスマス・ベルズ』からインスピレーションを得て作曲しました」と説明してくれた。

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