エドガー・ライトがこだわり尽くした『ラストナイト・イン・ソーホー』、スウィンギング・ロンドンの光と闇をひも解く
『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)、『ベイビー・ドライバー』(17)などで人気を誇る英国のカリスマ監督エドガー・ライトが、本格的なスリラーに挑んだ!キャリア最高の出来映えとの呼び声も高い新作『ラストナイト・イン・ソーホー』(公開中)は、夢を追って田舎町からロンドンに上京してきた女性が体験する恐怖の物語。時代背景こそ現代だが、1960年代の、いわゆるスウィンギング・ロンドンに憧れるヒロインは夢かうつつか判然としない、半世紀前の世界に迷い込んでしまうのだ。
スウィンギング・ロンドンの世界で、恐怖がシンクロしていく…
主人公エロイーズは、服飾デザイナーを目指してロンドンにやってくる。60’sファッションをこよなく愛する彼女の感性は、現代の最先端を目指す同級生たちから浮いてしまう。居心地の悪さを覚えたエロイーズは独り暮らしを決意し、学生寮を出て、ロンドンの繁華街ソーホーの古いアパートの屋根裏部屋を格安で借り受けた。以来、彼女の周囲で起こる不思議な出来事。気づけば意識は、夢のなかで出会う60年代のスウィンギング・ロンドンを象徴するかのような女性、サンディにシンクロしていく。
60年代の世界で、歌手を夢見るサンディはキュートなルックスで男たちの視線を集めていた。エロイーズはサンディを手本に髪をブロンドに染め、さらに夢の中のソーホーの探索を続ける。しかし、夢と現実を行き来するうちに眩しい都会の裏側が見えはじめ、そしてついには、サンディが殺される場面を見てしまう…。そんな幻視を我がことのようにとらえるエロイーズは、悪夢のなかで逃げられない状況に置かれ、彼女の現実世界は侵食されていく。
「私は狂ってしまったの?」――なぜ、こうなったのか。60年代のソーホーでサンディはなぜ殺されたのか、そして殺したのは誰か?
Next
映画マニアをも唸らせる、エドガー・ライトのこだわり
作品情報へ