『マトリックス レザレクションズ』は、いまの時代に観るべき極上のエンタテインメント!
自分の使命を自覚したネオ、トリニティーとの関係とは…?
なぜネオが現実世界に連れて来られたのか?――それこそが『マトリックス レザレクションズ』の最大のポイントで、彼にしかできない役割があるからだ。それは、この現実世界からAIが支配する仮想空間「マトリックス」に侵入し、ネオと共に戦う同志にして深く愛し合う恋人でもあった、トリニティー(キャリー=アン・モス)を救出すること。
作品の冒頭で、ゲームデザイナーのネオはトリニティーらしき女性に出会うが、彼女の名前はティファニーとなっており、トリニティー本人であることがわからなかった。「マトリックス」に侵入し、そのトリニティーを救いだすことこそ、「マトリックス」に捕らわれた人類解放のためのネオの使命だったのだ。ここからさらに想像を超える世界観が広がり、怒涛のバトルが繰り広げられるので、その衝撃と興奮はぜひスクリーンで味わってもらいたい。ネオがトリニティーを助けることに、どんな意味があるのか?2人が一緒になることで、どんな奇跡が起こるのか?それは救世主としての運命だけではなく、ネオとトリニティーの究極のラブストーリーの様相も呈して、ドラマチックな展開も用意されていく。
この点については、ネオ役のキアヌ・リーブスも「本作は“マトリックス・アクション”、“マトリックス・アイデア”がたくさん詰まっていて、愛も描かれています。ラブストーリーでもあるのです」と、日本のファンに向けてコメント。現実と仮想世界が交わる壮大なアクションにして、この『マトリックス レザレクションズ』は、観ているうちに感動のヒューマンドラマだと気づかされるはずだ。
「マトリックス」はいま、この時代に観るべき映画
2021年に新章として登場した『マトリックス レザレクションズ』は、このタイミングで作られたことにも大きな意味がある。『マトリックス』第1作では、ネオが現実世界と、仮想世界「マトリックス」を行き来する手段として、電話が用いられていた。当時はインターネットも存在していたが、電話回線が使われていたのでこの設定も納得だが、本作には「電話ボックスは不要になった」というセリフも登場するように、いまやネットもWi-Fiで瞬時につながる時代。むしろ「マトリックス」の世界との行き来がリアルに感じられるのではないか。
現実世界で生活している我々は、ネットの中でもう一つの別の世界を生きている感覚が増大してきている。ビットコインや暗号資産など、お金の実体もどんどん曖昧になっているし、SNSと現実を別空間に感じている人も多いだろう。さらにネットに流れるニュースがどこまで本当なのか、フェイクニュースが話題となり、もはや現実で起こっていることを、ちゃんと理解しているのかも定かではない。情報は誰かに“操られている”かもしれず、AI(人工知能)の進化によって、人間には抵抗できないなにかも存在している…と、「マトリックス」の世界を“仮想”として楽しめた前3作の時代と違って、2021年のいまこそリアルに感じられる点が多くなった。ネオは仮想空間と現実の違いに大きな衝撃を受けるが、この感情もむしろ現在のほうが共感しやすいはずだろう。
ネオを演じたあと、トップスターの道を進んできたキアヌ・リーブスは、今回久しぶりに「マトリックス」の世界に復帰した理由を次のように語っている。「一人のアーティストとして、こういう作品に関われることは生涯何度もあることではありません。20年以上かけて作られてきた『マトリックス』はポジティブな形で多くの人の心に触れた映画。ネオが自分の置かれた状況の真実を求めている姿に、僕は特別な思い入れがあるのです」
現実と仮想が混沌としていき、より身近になった「マトリックス」の世界。一方でこの20年、地に足をつけてスター俳優としての人気を築いてきたキアヌ・リーブス。その両方が一つになる瞬間にスクリーンで向き合うことで、我々観客もなにか“特別な想い”が込み上げてくるだろう。
文/斉藤博昭