「クレヨンしんちゃん」だけじゃない!吹替声優・矢島晶子と『ホーム・アローン』の深いつながり

コラム

「クレヨンしんちゃん」だけじゃない!吹替声優・矢島晶子と『ホーム・アローン』の深いつながり

1991年に日本初公開された『ホーム・アローン』(90)。クリスマス休暇に、自宅でたった一人過ごすはめになったいたずらっ子と、泥棒2人組との爆笑必至の攻防が描かれる本作は、クリスマスシーズンの風物詩とも言える作品となった。本年12月24日、30周年で「金曜ロードショー」放送されたバージョンで主人公のケビン(マコーレー・カルキン)の日本語吹替えを務めたのは、テレビアニメ「クレヨンしんちゃん」の初代野原しんのすけ役で人気を博した声優の矢島晶子で、生意気で小憎らしいけど、かわいくもあるケビンを魅力たっぷりに演じている。そこで本稿では、ませた子どもを演じさせれば右に出る者がいない矢島の吹替声優としての活躍を、本作との深い関わりを中心に振り返りたい。

「ホーム・アローン」の日本語吹替えは、矢島晶子なしでは語れない!

【写真を見る】大人顔負けの振る舞いを見せていたケビンも、母の前ではやはり子ども!(『ホーム・アローン』)
【写真を見る】大人顔負けの振る舞いを見せていたケビンも、母の前ではやはり子ども!(『ホーム・アローン』)写真:EVERETT/アフロ

『ホーム・アローン』のケビンと言えば、矢島の声をイメージする人が多いだろう。しかし、そう思ってパッケージを購入した人は、ケビンの声が彼女の声でないことにおどろくはず。実は、本作には複数パターンの日本語吹替版があり、1992年に発売されたソフト版と1998年の「日曜洋画劇場」で放送されたいわゆるテレビ朝日版では声優の折笠愛が、フジテレビ版と呼ばれる1994年の「ゴールデン洋画劇場」での放送回では矢島がケビン役を務めているのだ(機内上映版では大谷育江が担当)。

DVDやBlu-ray、Disney+で配信されているものはソフト版に準拠しているが、本年12月24日の「金曜ロードショー」など民放で再放送される際はフジテレビ版の音源を使用しているため、お茶の間には矢島バージョンのケビンが定着することとなった。ちなみに、ソフト版にも矢島は参加しており、ケビンの従弟でおねしょグセが治らないフラーの声を担当している(演じているのは、マコーレーの実弟キーラン・カルキン)。

余談だが、フジテレビ版では矢島のほかに、ケビンの次姉ミーガンをならはしみき、同じく次兄のジェフを伊倉一恵、ケビンの母を手助けするポルカバンドのリーダーを屋良有作が演じているなど、「クレしん」声優が集まっているのも見逃せないポイントだ(それぞれ、みさえ役、ふかづめ竜子役、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』の井尻又兵衛役など。ソフト版のバンドのリーダーはアクション仮面の玄田哲章が担当)。


玄関から侵入を企んだ泥棒を、真正面から銃で迎え撃つ!(『ホーム・アローン』)
玄関から侵入を企んだ泥棒を、真正面から銃で迎え撃つ!(『ホーム・アローン』)写真:EVERETT/アフロ

ケビンを演じる矢島の声は、しんのすけの声と比べるとキーが高くなっているのが特徴で、知らずに聞くと同じ人物だとはわからないかも。どちらかというと、より子どもらしい印象を受け、いじわるな長兄バズとケンカをした時に、周囲が自分だけを責めることにむくれたり、突然家族みんながいなくなったのを知ってはしゃぎ回ったり(ケビンは神様が家族や親戚を消したと思っている)、家に侵入しようとする泥棒を様々なトラップで撃退した際のガッツポーズなど、観る者をいろいろな声色で楽しませてくれる。一方で、家族を消してほしいと願ったことを後悔したケビンが、サンタクロースの格好をした男性に「サンタさんに伝えて。今年のクリスマスプレゼントを欲しがらないから、家族を帰してください」とお願いする言葉には心を打つものが。