国際派アクションスターや歴史を作った名監督、巨匠を支えた人々も…2021年に去った映画人を偲ぶ
昨年来からつづく新型コロナウイルス感染症の影響はいまもなお残り、日本国内では1年越しで国際的な大規模イベントが催されたものの、世界中で社会的にも経済的にも大きな不安に包まれた2021年。映画界は着実にコロナ禍からの回復の一途を辿っていったが、そうしたなかで映画の一時代を築きあげた偉大な俳優・映画監督・脚本家・プロデューサーらの訃報が相次いで伝えられた。
本稿では、故人への哀悼の意を表しながら、<俳優・声優>と<映画監督・スタッフ>に分けて、簡潔ではあるが、今年逝去された映画人たちの功績を振り返っていきたい。
俳優・声優
福本清三(俳優・77歳・1月1日)
東映京都撮影所の斬られ役としてその名を馳せた、通称“5万回斬られた男”。深作欣二監督作品やトム・クルーズ主演の『ラスト・サムライ』(03)などさまざまな映画に出演し、2014年にはキャリア55年で初の主演作『太秦ライムライト』が公開された。
ナタリー・ドロン(女優・79歳・1月21日)
モデルを経て1964年にアラン・ドロンと結婚し、『サムライ』(67)で女優デビュー。わずか5年ほどの結婚生活など、常にスキャンダルが付きまとった女優生活を1980年代前半に一度退き、2008年に四半世紀ぶりに女優復帰。1980年代には監督業も務めていた。
クリストファー・プラマー(俳優・91歳・2月5日)
ブロードウェイを経て1958年に映画俳優として活動を始め、『サウンド・オブ・ミュージック』(65)のトラップ大佐役が有名。『人生はビギナーズ』(11)でアカデミー賞助演男優賞を受賞し、アカデミー賞・トニー賞・エミー賞の三冠を達成。アニメ映画『Heroes of the Golden Masks』が遺作となった。
ジョージ・シーガル(俳優・87歳・3月23日)
舞台俳優としてキャリアをスタートさせ20代後半で映画デビュー。『バージニア・ウルフなんかこわくない』(66)でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。晩年もテレビを中心に精力的に活動を続け、『トレヴィの泉で二度目の恋を』(14)が最後の映画出演となった。
田中邦衛(俳優・88歳・3月24日)
俳優座の7期生として入所し、『純愛物語』(57)で映画デビュー。映画では「若大将」、「網走番外地」、「仁義なき戦い」、そしてテレビでは「北の国から」シリーズと、日本を代表する俳優の一人として親しまれた。『最後の忠臣蔵』(10)以降は一線から退いていた。
田村正和(俳優・77歳・4月3日)
名優・阪東妻三郎を父に持ち、テレビドラマ「古畑任三郎」シリーズでおなじみの国民的俳優。1960年代に松竹の専属俳優としてキャリアをスタートさせ、数多くの映画に出演。『痴人の愛』(67)や『怪談残酷物語』(68)などが映画出演での代表的な作品で、『ラストラブ』(07)で14年ぶりに映画出演を果たした。
隆大介(俳優・64歳・4月11日)
仲代達矢が主宰する無名塾に1期生として入塾し、岡本喜八、黒澤明、五社英雄、熊井啓といった錚々たる監督たちの作品に出演。『影武者』(80)の織田信長役、『五条霊戦記 GOJOE』(00)の武蔵坊弁慶役で知られる。金子修介監督の『信虎』(21)が遺作となった。
フランソワーズ・アルヌール(女優・90歳・7月20日)
『七月のランデブー』(49)の端役で銀幕デビューし、『フレンチ・カンカン』(54)や『ヘッドライト』(55)など1950年代のフランス映画を彩った女優。1980年代以降は日本に出演作が紹介されることは少なくなったが活動を続けており、『Le cancre』(16)が遺作に。
千葉真一(俳優・82歳・8月19日)
「東映ニューフェイス」の第6期としてデビューし、深作欣二監督作品などでブレイク。クエンティン・タランティーノにも影響を与えた日本が世界に誇るアクションスター。真田広之らを輩出した「ジャパン・アクション・クラブ」を設立するなど、後人の育成に力を注いでいた。
二瓶正也(俳優・80歳・8月21日)
「東宝ニューフェイス」の第15期としてキャリアをスタートさせ、「クレージー映画」シリーズなど1960年代〜1970年代の東宝映画に数多く出演。また「ウルトラマン」のイデ隊員役としても知られ、晩年は「ウルトラ」シリーズの新作に幾度か顔を見せてファンを沸かせた。
ジャン・ポール・ベルモンド(俳優・88歳・9月6日)
『勝手にしやがれ』(59)や『気狂いピエロ』(65)といったヌーヴェルバーグの代表作から、『リオの男』(64)などの娯楽作に至るまで、フランスを代表する名優のなかの名優。2008年に製作された『Un homme et son chien』が最後の主演作となった。
ジェームズ・マイケル・タイラー(俳優・59歳・10月24日)
海外ドラマ「フレンズ」のガンター役で知られる。当初はエキストラとして参加したが、ひょんなことからレギュラーとなり最終シーズンまで150話に登場した“7人目のフレンズ”。最後の出演作にして主演作となった短編『The Gesture and The Word』は多くの短編映画賞を受賞。
太田淑子(声優・89歳・10月29日)
宝塚歌劇団退所後、ドラマや映画への出演に加え、テレビアニメの声優として活躍。オスカー女優サリー・フィールドの吹替えや、「ひみつのアッコちゃん」や「ヤッターマン」、「パンダコパンダ」などで知られ、「ドラえもん」ではセワシ役の声を担当した。
神田沙也加(女優・35歳・12月18日)
カンヌ国際映画祭で短編パルムドールに輝いた『ビーン・ケーキ(おはぎ)』(99)に出演し、『ドラゴンヘッド』(03)など映画やドラマで活躍。2000年代後半からはミュージカル女優としてその実力が認められ、「アナと雪の女王」シリーズではアナ役の日本版声優を務めた。