国際派アクションスターや歴史を作った名監督、巨匠を支えた人々も…2021年に去った映画人を偲ぶ

コラム

国際派アクションスターや歴史を作った名監督、巨匠を支えた人々も…2021年に去った映画人を偲ぶ

映画監督・スタッフ

マイケル・アプテッド(映画監督・79歳・1月7日)

「007」など話題作を手掛けたマイケル・アプテッド監督
「007」など話題作を手掛けたマイケル・アプテッド監督写真:EVERETT/アフロ

テレビ作品の監督としてキャリアを積み、長編映画4作目となった『歌え!ロレッタ愛のために』(80)で脚光を浴びる。『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』(99)や『ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島』(10)などの大作映画も手がけた。

ジャン=クロード・カリエール(脚本家・89歳・2月8日)
『昼顔』(67)をはじめ、ルイス・ブニュエル監督のフランス時代の作品でタッグを組むなど、ヨーロッパを代表する名監督たちの作品で脚本を担当。テレビ作品や映画をすべてあわせると150作品以上にのぼる。自身で監督を務めたり、俳優として出演した作品も。2014年にはアカデミー賞名誉賞を受賞している。

成沢昌茂(脚本家・96歳・2月13日)
大映に入社し『新・平家物語』(55)や『赤線地帯』(56)などの溝口健二監督作品で脚本を務め、その後も『宮本武蔵』(61)や『黒蜥蜴』(68)など数多くの作品で脚本を手掛ける。自身でも永井荷風原作の『裸体』(62)で監督デビューを果たした。

村山新治(映画監督・98歳・2月14日)
今井正監督らのもとで助監督としてキャリアを積み、「警視庁物語」シリーズなど1950年代から1960年代にかけて数多くの作品を監督。1970年代以降はテレビを中心に活動し、「キイハンター」や「特捜最前線」などの名作ドラマを世に送り出した。

原正人(映画プロデューサー・89歳・3月17日)
日本ヘラルド映画でさまざまな洋画を日本に紹介し、1980年代以降はプロデューサーとして大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』(83)や黒澤明監督の『乱』(85) など日本映画屈指の名作を生みだす。『リング』(98)をはじめとしたJホラー作品でもエグゼクティブ・プロデューサーを務めた。

ベルトラン・タヴェルニエ(映画監督・79歳・3月25日)

フランス屈指の職人監督として多くの映画賞を受賞したベルトラン・タヴェルニエ
フランス屈指の職人監督として多くの映画賞を受賞したベルトラン・タヴェルニエ写真:EVERETT/アフロ

長編監督デビュー作の『サン・ポールの時計台』(74)でその名を轟かせ、その後も『田舎の日曜日』(84)や『今日から始まる』(99)など様々な作品を手掛けた職人監督。俳優として自作に起用したこともある息子のニルス・タヴェルニエは、現在監督として活躍中。

橋田壽賀子(脚本家・95歳・4月4日)

2013年2月に『おしん』製作発表会見に出席した橋田壽賀子
2013年2月に『おしん』製作発表会見に出席した橋田壽賀子撮影/山崎 伸子

松竹初の女性社員として脚本部に入社し、『長崎の鐘』(50)や『郷愁』(52)などで脚本を担当。その後独立してからはテレビドラマを中心に活動し、「おしん」や「春日局」、「春よ、来い」、「渡る世間は鬼ばかり」といった国民的作品を数多く生みだした。

モンテ・ヘルマン(映画監督・91歳・4月20日)
興行的失敗に見舞われながらも後年に高い評価を得た『断絶』(71)や、『コックファイター』(74)などの傑作を手掛け、『イグアナ 愛と野望の果て』(88)の後は一時的に監督業から離れる。2010年に21年ぶりの長編作品『果てなき路』を発表。ヴェネチア国際映画祭生涯功労賞を受賞した。

前田米造(撮影監督・85歳・7月6日)
1950年代に日活撮影所に入社し、1970年代に撮影監督デビュー。『家族ゲーム』(83)や『メイン・テーマ』(84)、「マルサの女」シリーズなど一時代を築いた日本映画を支える。『それから』(85)で日本アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞。昨年の同賞では会長功労賞も贈られた。

山内静夫(映画プロデューサー・96歳・8月15日)
戦後に松竹大船撮影所に入社し、『早春』(56)や『東京暮色』(57)、『秋刀魚の味』(62)に至るまで小津安二郎監督の作品をプロデュース。以後も『塀の中の懲りない面々』(87)や『釣りバカ日誌』(88)と、松竹映画の歴史に名を刻む作品を送りだしてきた。

澤井信一郎(映画監督・83歳・9月3日)

2016年7月に行われた「角川映画祭」で舞台挨拶に登壇した澤井信一郎監督
2016年7月に行われた「角川映画祭」で舞台挨拶に登壇した澤井信一郎監督撮影/池田 織枝

助監督を経て『野菊の墓』(81)で監督デビュー。『Wの悲劇』(84)や『早春物語』(85)といった角川映画の傑作を手掛け、2000年代に入ってからも『仔犬ダンの物語』(02)、『17才 〜旅立ちのふたり〜』(03)などでアイドル映画の名手としての才を発揮した。

山本暎一(アニメーター・9月7日)
1961年に虫プロダクションの創設に携わり、テレビアニメ「鉄腕アトム」の演出などを手掛ける。劇場用作品でも『千夜一夜物語』(69)や『哀しみのベラドンナ』(73)といった意欲的な作品を次々と監督。1970年代以降は「宇宙戦艦ヤマト」シリーズに携わった。

高岩淡(映画プロデューサー・90歳・10月28日)
1950年代に東映に入社後さまざまな役職を歴任。「東映太秦映画村」誕生の立役者となるなど日本映画の発展に貢献。『柳生一族の陰謀』(78)などで企画を務め、1990年代からはアニメ映画の製作を数多く担当。1999年に製作を務めた『鉄道員』は高い評価を集めた。

ワダエミ(衣装デザイナー・84歳・11月13日)
黒澤明監督の『乱』(85)で第58回アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞。その後もピーター・グリナーウェイ監督作品や大島渚監督の『御法度』(99)、チャン・イーモウ監督作品など世界の名だたる監督たちの作品に携わる。アン・ホイ監督の『第一炉香』(20)が最後の作品に。

スティーブン・サンドハイム(作曲家・91歳・11月26日)
ブロードウェイ・ミュージカルで作曲家・作詞家として成功を収め、『ディック・トレイシー』(90)ではアカデミー賞歌曲賞を受賞。代表作のリメイク版である『ウエスト・サイド・ストーリー』(2022年2月11日公開)の公開直前にこの世を去った。

リナ・ウェルトミューラー(映画監督・93歳・12月9日)

女性監督初のアカデミー監督賞にノミネートされ、歴史を切り拓いたリナ・ウェルトミューラー監督
女性監督初のアカデミー監督賞にノミネートされ、歴史を切り拓いたリナ・ウェルトミューラー監督写真:EVERETT/アフロ

フェデリコ・フェリーニ監督の『8 1/2』(63)に参加し、同年に監督デビュー。『セブン・ビューティーズ』(75)では女性監督として史上初めてアカデミー賞監督賞にノミネート。第92回アカデミー賞では名誉賞を受賞した。

ジャン=マルク・ヴァレ(映画監督・58歳・12月25日)

『ダラス・バイヤーズクラブ』で2人の俳優にオスカーをもたらしたジャン=マルク・ヴァレ監督
『ダラス・バイヤーズクラブ』で2人の俳優にオスカーをもたらしたジャン=マルク・ヴァレ監督写真:EVERETT/アフロ

1980年代にカナダでMV監督としてキャリアをスタートさせ、1995年に映画監督デビュー。『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(09)で脚光を集め『ダラス・バイヤーズクラブ』(13)は第86回アカデミー賞作品賞候補に。近年はドラマシリーズを中心に活動していた。



以上、駆け足ではあるが、2021年にこの世を去った先人たちの業績を振り返ってきた。
亡くなったすべての映画人にあらためて哀悼の意を表するとともに、2022年には映画界のみならず世界全体が平穏な日常を取り戻せることを願っている。

(文中、いずれも敬称略)

文/久保田 和馬

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