原作ファンの全国書店員が映画『鹿の王 ユナと約束の旅』に歓喜!「いまの時代をもう一度考えるきっかけになること間違いなし」
2014年に児童文学のノーベル賞といわれる国際アンデルセン賞作家賞を受賞した上橋菜穂子。受賞後第1作として発表された医療冒険ファンタジー「鹿の王」は、2015年度本屋大賞と日本医療小説大賞をW受賞し、シリーズ累計250万部を突破する大ベストセラー小説だ。その圧倒的スケールの世界観から、長らく映像化は不可能だと言われてきたが、ついにアニメーション映画『鹿の王 ユナと約束の旅』として2月4日(金)より公開される。
アニメ映画化を見事に実現させた制作スタジオは、「攻殻機動隊」シリーズや「ハイキュー!!」シリーズで知られ、これまでに上橋菜穂子原作のテレビアニメ「精霊の守り人」「獣の奏者エリン」も手掛けてきたProduction I.G。本作で監督デビューを果たしたのは、『もののけ姫』(97)、『千と千尋の神隠し』(01)、『君の名は。』(16)といった大ヒット作で作画監督を担ったアニメーター、安藤雅司。今作ではキャラクターデザインと作画監督も兼任している。そして企画の立ち上げから携わってきた共同監督に『千と千尋の神隠し』で宮崎駿の監督助手を務めた宮地昌幸。まさに日本が誇るアニメクリエイターたちが集結した。
物語の主人公で、謎の病の抗体を持ち、生き残った孤独な戦士ヴァンを演じるのは、意外にも本作がアニメの声優初挑戦となる堤真一。もう一人の主人公であり、謎の病の治療法を探す若き天才医師ホッサルに竹内涼真。さらにヴァンの命をねらうミステリアスな女戦士サエを杏が演じ、魅力的なキャラクターたちに命を吹き込んでいる。
劇場公開に先立ち、原作ファンである全国の書店員がいち早く映画を鑑賞。寄せられた数々のアツいコメントと合わせて、本作の魅力を紹介していきたい。
かつてツオル帝国は圧倒的な力でアカファ王国に侵攻したが、突如発生した謎の病、黒狼熱(ミッツァル)によって撤退を余儀なくされた。以降、2国は緩やかな併合関係を保っていたものの、アカファ王国はウイルスを身体に宿す山犬を使って、ミッツァルを再び大量発生させることで反乱を企てていた。ミッツァルが国中で猛威を振るうなか、山犬の襲撃を生き延びたヴァンは、身寄りのない少女ユナと旅に出る。それぞれの思惑でヴァンの行方を追うホッサルとサエ、彼らの運命が交錯する。
コロナ禍の現代社会ともリンク…人類と謎の病との闘い
人類と謎の病との壮絶な闘いを描く本作。当初は2020年9月に公開を予定されていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、2度も公開を延期。奇しくも現実と作品が重なるような事態となった。原作を読んでいる書店員たちからもコロナ禍の現状とリンクしたという意見が挙がった。
「いまこの時に見るべき映画No.1ではないでしょうか!病に対する恐怖する人、立ち向かう人、政治的な駆け引き、そしてなによりそのなかで生まれる人と人との絆、どこをとってもいまの時代をもう一度考えるきっかけになること間違いなしです。そして原作ファンとしてこれだけは言いたい。映画を観た方は是非原作を読んでほしい。そして『鹿の王』をより一層かみしめていただきたい!!」 (三省堂書店 有楽町店/山口奈美子さん)
「医療を題材としたファンタジーは記憶になく、現在のコロナ禍の状況のなか、大変興味深く拝見させていただきました」(カルコス穂積/澤田知謙さん)
「映像がきれいで一気に『鹿の王』の世界観に引き込まれました。原作を読んだ時は医学や免疫の歴史をファンタジーでなぞるようなおもしろさに夢中になっていましたが、まさか、疫病に立ち向かうという設定がこんなに身近になるとは思いませんでした。黒狼熱をコロナに置き換えてみる人多いのではないでしょうか。現実はなかなか厳しいですが、せめて映画から希望をもらいたいと思います。一度読んだ人も映画を観たらもう一度原作に戻りたくなると思います。まだ読んだことがないという人は、ぜひ原作も味わってほしいと思います」(金沢ビーンズ明文堂書店/表理恵さん)
ミッツァルさながらの新型コロナウイルスによるパンデミックを経験したことで、作品で描かれる物語をより身近に、共感しながら観ることができるはずだ。