高校1年生のウェス・アンダーソン監督が寄せた「ニューヨーカー」への“憧れ”『フレンチ・ディスパッチ』インタビュー

インタビュー

高校1年生のウェス・アンダーソン監督が寄せた「ニューヨーカー」への“憧れ”『フレンチ・ディスパッチ』インタビュー

「どのエピソードでも、ヒーローは記者なのです」

――フランス映画や文化と共に、「ニューヨーカー」誌の影響を強く感じました。

「今作は『ニューヨーカー』と著名な記者たちにインスパイアされた映画です。『ニューヨーカー』に出会ったのは、ヒューストンの高校1年生のころ、図書室で行われていたホームルームの時でした。私の席の向かいには雑誌を並べた木製の棚があり、その中にあったイラストの表紙の雑誌が『ニューヨーカー』でした。それに目を惹かれ、授業が始まる前にいつも読むようになったんです。バックナンバーも読み始め、繰り返し出てくる記者の名前を自然と覚えていました。本当にハマっていたんですね」

ビル・マーレイが、風変わりな記者たちを束ねる「フレンチ・ディスパッチ」誌の編集長役を務めている
ビル・マーレイが、風変わりな記者たちを束ねる「フレンチ・ディスパッチ」誌の編集長役を務めている[c]2021 20th Century Studios. All rights reserved.

――今作のオムニバス構成は、どのように形成されたのでしょうか。

「この映画は言わば大きな旅行カバンです。オムニバス映画であり、短いストーリーのアンソロジーです。雑誌が記事を寄せ集めて作られるように、この映画も、雑誌のいくつかの記事を映画化したオムニバスものになっています。編集長が最初に登場し、雑誌の概要を教えてくれます。そして、趣きのまったく違う各ストーリーへと誘われていくのです。どのエピソードでも、ヒーローは記者なのです」

――監督の映画に最も多く出演している俳優の一人である、オーウェン・ウィルソンは、自転車で取材する記者を演じ、アンニュイ=シュール=ブラゼの案内役を務めます。

「最初の短編は自転車レポーターのエルブサン・サゼラックが書いた記事です。自分も住むアンニュイ=シュール=ブラゼに、特にその場末の暮らしに取り憑かれています。映画を撮影している時点の街だけではなく、歴史も紹介します。タイムマシーンに乗せて街を案内する、というような。街がどれほど様変わりしたかを独自の視点で表現しているんです」

20世紀フランスの架空の街が舞台。撮影はアングレームという街で行われた
20世紀フランスの架空の街が舞台。撮影はアングレームという街で行われた[c]2021 20th Century Studios. All rights reserved.

「ある時点から、やりたいことは全部やると決めたんです」

――『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』は、画面がモノクロから急にカラーになったり、ワイドの画角からスタンダードになったり、字幕がどこからともなく現れたり…。これまでの作品以上に複雑で、楽しい仕掛けがなされていますね。

「ある時点から、やりたいことは全部やると決めたんです。例えば、もし、モノクロで、画角はワイドで、キャメラは手持ちのシーンが必要なら、それをやる、ということです。この部分を漫画にできるかなあ…できるよ。やっちゃおう、と。映画を始めたころはいつも、『こんなことできるのだろうか』と思っていました。いまや、そんなことは口に出すのもやめました。もちろん、考えがまとまり、気持ちが一つにならなくてはなりません。ですから優れたスタッフ――アダム・ストックハウゼン(美術)、ミレーナ・カノネロ(衣装)、ロバート・イェーマン(撮影監督)、サンジェイ・サミ(キーグリップ/ステディカム)、アレクサンドル・デスプラ(音楽)――に囲まれていることが重要なのです」

モノクロのシーンもあれば…
モノクロのシーンもあれば…[c]2021 20th Century Studios. All rights reserved.

アニメーションのシーンもある!
アニメーションのシーンもある![c]2021 20th Century Studios. All rights reserved.

映画に登場するキャラクターのモデルについてや、ロケ地についてもたっぷり語っている4000字にわたるウェス・アンダーソンのロングインタビューは、劇場用パンフレットで読めるので、あわせてチェックしてほしい。

文/平井伊都子 構成/編集部

■『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン
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