miletが明かすコロナ禍での自身の変化「届けたい人がいると実感して、より希望にあふれる歌を書くようになりました」
「“聴いてくれる人がいる”ということが一番の原動力になります」
2018年より本格的に音楽活動をスタートさせ、ONE OK ROCK のToruプロデュースによる「inside you」でデビューを果たしたmilet。2021年8月には東京2020オリンピック閉会式に歌唱出演し、年末には2年連続でNHK紅白歌合戦に出場するなど、重厚感のあるボーカルと音楽性でめざましい躍進を遂げている。
これまでにもタッグを重ねてきたToruと、「One Reason」で再びタッグを組んだ。「原作を読んでイメージした内容をToruさんに伝えて、そこからToruさんが作ってくださったトラックに、私がメロディと歌詞を乗せていきました」と制作過程を振り返りながら、「Toruさんとはこれまでも何曲も一緒に作らせていただき、お互いの出したい音や方向性がわかってきている部分がある」と信頼感を吐露。Toruから刺激を受けることも多いそうで、「ONE OK ROCKの曲は、大きなステージで音を奏でてもその空間に負けない迫力があって、スケールが大きい。Toruさんは『生演奏でやっても迫力の感じられるものを、miletの曲にも入れていきたい』とおっしゃってくださいました。今回もご一緒できて本当にうれしいです」としみじみと話す。
ものづくりの喜びを味わいながら前進しているmiletにとって、音楽に向き合う原動力となっているのはどんなものだろうか?すると「もちろん音楽を作るのも好きですし、歌うことも好きです。でもなによりも“聴いてくれる人がいる”ということが一番の原動力になります」とキッパリ。
「コロナ禍では、聴いてくれる方々ともなかなか対面できず、ライブも何回か中止になってしまって落ち込むこともありました。でも手紙やSNSを通して、ファンの方たちが声を届けてくれた。そういったたくさんの愛を感じられたからこそ、『One Reason』も生みだすことができました。聴いてくれる方がいなければなにも生まれないと思いますし、早くみんなに歌を届けたい、みんなに元気になってほしいという気持ちがどんどん大きくなっていって。届けたい人がいると実感して、コロナ禍で逆に前向きになったような気がします」と輝くような笑顔を見せ、「コロナ禍ではものづくりの大変さも味わいましたが、テレビや映画を観たり、音楽を聴いていると、作り手の皆さんが命懸けで頑張られているとも感じて。作り手の気持ちをもっと知りたい、私も一つ一つにもっと真摯に向き合っていきたいと思いました」とコロナ禍で握りしめた想いを明かす。
「“私はずっとそばにいるよ、背中を押し続けるよ”という気持ちを込めて曲を書きました」
もともとmiletが歌い始めた原点も、“誰かのため”という想いからだった。「小さなころからクラシックが大好きで、生演奏のオーケストラを聴きに行く機会も多かった。ずっと音楽の力を感じながら過ごしていましたが、自分が“歌おう”という気持ちにはなっていなくて。大学生の時に、少し落ち込んでしまった友だちの前で歌ったことがあるんです。覚えたてのギターで弾き語りをしたんですが、その友だちがものすごく感動してくれて。『あなたの歌にはパワーがある。歌ってほしい』と言ってくれました。歌声が届いたことがうれしくて、その経験が歌に挑戦してみようかなと思ったきっかけです」。
グローバルな舞台に立つことも増えたmiletだが、いつも大切にしているのはこの原点。「オリンピックの閉会式など、刺激的ですばらしい経験をさせていただけるようになりました。でも、やはり“一人のために”という想いが私の原点。そう意識して歌うことが、きっとたくさんの方へと繋がっていく。聴いてくださる方に、『自分のために歌っている』と思ってもらいたいなと感じています」と告白。
「One Reason」も登場人物たちのドラマを彩り、未来への希望の光を感じられるような楽曲に仕上がった。miletは「私はもともとネガティブな人間だったんです」と照れ笑いを見せながら、「“歌を届けたい”と思うようになってから、ポジティブになって前向きな曲を書くようになりました。コロナ禍を経てより希望にあふれる歌を書くようになって、その変化には自分自身でも驚いています。『visions』という新しいアルバムも、“私はずっとそばにいるよ、背中を押し続けるよ”という気持ちを込めて曲を書きました。歌って、いろいろな影響力があるものだと思いますが、私の歌で誰かの人生が少しでも豊かになるとしたらとてもうれしい。これからも、聴いてくれる人がいるならば、少しでもみんなの人生の彩りになれるような音楽を作っていきたいです」と誓っていた。
取材・文/成田おり枝