デビュー前から次作オファーも!スピルバーグが認める歌姫レイチェル・ゼグラーの奇跡の歌声
ブロードウェイに最大限の敬意!スピルバーグの徹底ぶり
『ウエスト・サイド・ストーリー』では、ヨーロッパ系移民を中心にした若者の集団“ジェッツ”とプエルトリコ系移民の“シャークス”の対立を背景に、ジェッツの元リーダーのトニー(アンセル・エルゴート)とシャークスのリーダーの妹であるマリアの至上の愛が歌に乗せてつむがれる。
キャリア初のミュージカル映画の製作にあたり、スピルバーグはブロードウェイに最大限の敬意を払った。振付師としてニューヨーク・シティ・バレエ団でアーティスティック・アドバイザーを務めるジャスティン・ペック、脚本家として「エンジェルズ・イン・アメリカ」でピューリッツァー賞を受賞したトニー・クシュナー(※スピルバーグ作品では『ミュンヘン』、『リンカーン』でもタッグを組んでいる)、衣装デザインとしてポール・タゼウェルらブロードウェイで実績を持つスタッフを招いたのだ。
その徹底ぶりはキャスティングにおいても同様だった。シャークスのリーダーであるベルナルドにデヴィッド・アルヴァレス、ベルナルドの恋人アニータにアリアナ・デボーズ、ジェッツのリーダーのリフにマイク・ファイストとトニー賞受賞俳優を配役したほか、61年の映画版でアニタを演じ、史上16人しかいないというEGOT(エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞の4冠に輝いた者を示す)のリタ・モレノが、トニーが働く店のオーナーのバレンティーナ役で出演。分断のなかで一筋の希望を象徴する存在なので役柄含めてどうぞ注目してほしい。
批評家たちも絶賛!デビュー前からすでに売れっ子のレイチェル・ゼグラー
世界に名だたる名匠スティーブン・スピルバーグ渾身の作品で、相手役はハリウッドスターのエルゴート、実力も実績もあるミュージカル俳優たちに囲まれたゼグラーには、一般人では計り知れないプレッシャーがあったことだろう。
しかしゼグラーはその不安をはねのけ、レナード・バーンスタインが作曲し、スティーヴン・ソンドハイムが作詞した往年の名曲を堂々と歌い上げた。なかでも非常階段での「Tonight」は是非とも観て欲しいシーン。「ロミオとジュリエット」のバルコニーの逢瀬を彷彿とさせる名場面中の名場面だが、スクリーンを完全に支配したセグラーの美声にうっとりすること請け合いだ。
昨年11月末にニューヨークで行われたワールドプレミアでは、一足先に作品を鑑賞した批評家たちも押しなべてゼグラーを絶賛。そんなゼグラーは第79回ゴールデングローブ賞では主演女優賞を受賞。さらに『ウエスト・サイド・ストーリー』が公開する前に『シャザム!フューリー・オブ・ザ・ゴッズ(原題)』への出演も決定し、ディズニーの実写版『白雪姫』のヒロインにも抜擢されている。
スピルバーグがその才能を認めた歌姫レイチェル・ゼグラー。せつなくも美しい恋物語と共に、ゼグラーの歌声を堪能してほしい。
文/足立美由紀