心霊スポット・牛頸ダムを現地調査。「少女を人柱に…」“もう一つの牛首村”が福岡に実在した
「呪怨」シリーズの清水崇監督の最新作『牛首村』(公開中)。舞台となっているのは富山県に実在する北陸最恐の心霊スポット「坪野鉱泉」だが、その周辺に「牛首村」という名前の村はないそうだ。はたして「牛首村」はどこかに実在するのだろうか…。その手掛かりを探していると、意外な場所の情報が飛び込んできた。映画の世界と現実の境界が曖昧になったような感覚に襲われながら、我々は現地調査へ向かった。
取材班が辿り着いたのは福岡県。そう、偶然にも我々が探している「牛首村」は「恐怖の村」シリーズの第1弾『犬鳴村』(20)の舞台となった犬鳴トンネルからそう遠くない場所にあったのだ。菅原道真公が祀られている有名な太宰府天満宮にほど近い大野城市。見えてきた地名は“牛首”ではなく“牛頸”…。この「牛頸地区」こそが、かつて「牛頸村(うしくびむら)」と呼ばれた場所だ。辞書によれば“首”と“頸”はほとんど同じ意味なので、文字の違いはよしとしよう。
“牛首”ではなく“牛頸”、歴史ある地区に伝わる人柱の言い伝え
大野城市が公開している郷土史の資料によれば、この「牛頸地区」は日本三大窯跡群の一つであり、6世紀から8世紀にかけて須恵器が焼かれた場所だという。地名の由来にはいくつかの説があり、近くの山の形が首を伸ばした牛に似ていたことから付けられたという説や、須恵器の技術者として朝鮮半島の牛頭(ソシモリ)という場所から渡ってきた人々が村を作ったことがはじまりとする説がある。
牛頸地区の入口近くにあるのは、大宰府守護のために創建されたという平野神社。またその南側には豊臣秀吉の九州征伐によって落城したという不動城の城跡が。歴史を感じさせるスポットがいくつもあるこの地区は、かつて太宰府天満宮を訪れる参詣人や商人たちの通り道になっていたとのことで、山賊たちが現れて金品を奪うという事件も頻発していたとか。また山賊以外にも、往来する人々の行く手を阻んだ“底なし沼”があったという。
道を作ろうとしてもすぐ元に戻ってしまう底なし沼に村人たちが難渋していた時、ある娘が自ら人柱になることを名乗り出たという言い伝えがある。それは古くからこの地域では16歳の娘を人柱にすればどんな難工事も完成するといわれていたからで、その娘も16歳だった。村人たちはさすがに申し訳がないと丁寧に申し出を断るのだが、娘は自ら底なし沼へ入り、そこには道ができたそうだ。いまもイガイ牟田池という沼地のそばにある六地蔵のかたわらには、娘を供養する祠がある。
そんな牛頸地区をさらに奥へと進んでいけば「牛頸ダム」がある山間の方に差し掛かる。どうやらここが、九州を代表する心霊スポットの一つとして様々なウワサが飛び交う場所のようだ。我々は車を走らせダムへと続く一本道を進んでいった。