公開後までNGワードだった「失礼だな 純愛だよ」、“全部サビ”な主題歌…『劇場版 呪術廻戦 0』大ヒット達成の“仕掛け”をプロデューサーに聞いた!
2021年12月24日に公開されて以来、爆発的な人気を獲得し、新たなファンを増やし続けている『劇場版 呪術廻戦 0』。初日3日間の興行収入は26億円を超え、歴代2位を記録。そして2月4日には、初日舞台挨拶の際に目標に掲げていた100億円を突破した。もともと芥見下々による原作コミックとテレビアニメが高い人気を誇っていたとはいえ、コロナ禍の影響を受けながら、この大ヒットは快挙。劇場版がこれほどまでにヒットしている要因やその舞台裏について、プロデューサーである東宝の松谷浩明と齋藤雅哉に話を聞いた。
「このプロジェクトが次のステージに行くためには、どうしたらよいか」(松谷)
――最初に、お2人がプロデューサーとして、本作にどう関わられたのか、仕事の内容について教えてください。
松谷「私たちは製作プロデューサーという立ち位置で、プロジェクト全体の旗振り役兼調整役になります。クリエイティブ面とビジネス面の両方に関わりながら、原作元、スタジオ、関係各社など、あらゆるところと協力して、プロジェクトを進めていく役割です」
齋藤「ちょっと固い言い方をすると、製作委員会制であるビジネスにおいて、映画をどうやってヒットさせるか、という部分の責任者として立ち回るのが製作プロデューサーの仕事です。クリエイティブ面では『(私たちの目線で言うと)ファンの皆さんはこういうものを求めているんじゃないか』という意味合いで、意見をさせていただいたりします。作品を作るのは、あくまで制作スタジオのMAPPAさんをはじめ、スタッフやキャストの方たちなので、私たちは様々な調整を間に入って行います」
――「呪術廻戦」の原点でもある、原作コミック「呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校」を映画化するという企画は、どのようにスタートしたのでしょうか。
松谷「テレビアニメが盛り上がってきて、『このプロジェクトが次のステージに行くためには、どうしたらよいか』という話をしている頃に、MAPPAの大塚社長から、『次、映画という選択肢があったらどう思いますか?』と、心強い言葉をいただけました。それから具体的になにができるのか、集英社さん、MAPPAさん、芥見先生と可能性を協議しました」
齋藤「いろいろなパターンを考えていくなかで、シリーズを観ていない、初めての人でも楽しめる『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』が(映画化の)候補に挙がりました。単行本が1冊でパッケージングされていて、アニメの劇場版としての尺感もちょうどいい。かつ、物語としてのカタルシスも非常に大きい作品でしたので、これを映画にするのがいいんじゃないかと、みんなで決めました」
「テレビシリーズ2クール分を観たファンの皆さんが喜ぶような構成も」(齋藤)
――興行収入100億円突破ということで、この大ヒットの理由はなんだと思いますか?
松谷「そうですね。まず、芥見先生の描く原作のキャラクターや世界観、物語のおもしろさ。そして、その原作の魅力を、MAPPAさんが映像だからこその表現で、アニメーションとしてさらにすばらしいものにしてくださっている。この2つが大前提のポイントだと思っています。
松谷「MAPPAさんは並々ならぬモチベーションと集中力で、気合の入ったすばらしいフィルムを作り上げてくださいました。朴性厚監督やアニメーション・プロデューサーの瀬下恵介さんをはじめ、原作に対して愛情とリスペクトを強く持っていて、私たちプロデューサーの意見にも真摯に耳を傾けてくださり、そのうえで妥協せずストイックにクリエイティブを追及してくれていました。タフな状況だったかと思いますが、スタッフの皆様には頭が上がりません。
芥見先生については、テレビシリーズの時からシナリオや設定の監修などコミットしてくださっておりましたが、加えて劇場版では解禁ビジュアルや入場者特典の描き下ろし漫画など、ご尽力いただき心から感謝しています。また、集英社の担当編集さんたちやライツ担当者さんが、芥見先生へのご相談はもちろん、クリエイティブ、プロモーションなど、プロジェクトのために全面的な協力体制を築いていただけたことも非常に心強かったです」
齋藤「今回、劇場版を作るにあたっては、脚本の瀬古浩司さんのお力もすごく大きかったと思っています。原作の『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』の魅力をそのまま映像化することに加えて、テレビシリーズ2クール分を観たファンの皆さんが喜ぶような構成も入れていただいて。乙骨と里香、五条と夏油という物語の縦筋は決してブレることなく、何度も観たくなる仕掛けが脚本にしっかり練り込まれていました」