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小松菜奈と坂口健太郎が『余命10年』で考えた、愛する人に出会える奇跡

インタビュー

小松菜奈と坂口健太郎が『余命10年』で考えた、愛する人に出会える奇跡

「『生きるとは?』というテーマを再定義された気がします」(小松)

演じ終わって燃え尽き症候群のような状態になったという小松菜奈
演じ終わって燃え尽き症候群のような状態になったという小松菜奈撮影/HIROKI KATO

――リリー・フランキーさん演じる梶原店長が、和人に言う「愛する人に出会えるなんて奇跡のようなものだ」という台詞が心に響きましたが、あのシーンはいかがでしたか?

坂口「実は、ずっと台詞が決まらなかったシーンでした。菜奈ちゃんと一緒に和人と茉莉の時間を重ねていくなかで、藤井監督から『和人はどういうふうに言われたら、一番救われるんだろう?』と言われて、ずっと話し合ってきました。それで、確か撮影前日に『坂口くん、この台詞にしようと思う』と言われたんです。やはり1年を通した撮影により少しずつ輪郭が見えてきて、結果的にあの台詞になりました」

かけがえのない出会いを経て、2人の人生は輝き始める
かけがえのない出会いを経て、2人の人生は輝き始める[c]2022 映画「余命10年」製作委員会

小松「また、リリーさんが言うからさらにすてきでしたし、その台詞を受けた坂口くんの表情もすごくよくて、完成した映像を観た時にグッときました」

――和人の少し不器用な感じがにじみ出ていてジンときましたね。

坂口「藤井監督から『つなげてみた時に、一番いい表情をチョイスしたいから』と言われ、何パターンも撮ったんです。和人の心のなかで、茉莉と一緒だった美しい光景を思い出したら、こんなに奇跡のような出会いができた自分は、なんて幸せなんだろうと思った気がします」


小松「そうだったんだ!」

――小松さんは、“奇跡の出会い”をどう捉えましたか?

小松「なんでしょう。運命というものがあるのかわからないですが、この人のこういう部分が好きだというようなことって、明確じゃない気がしていて。一緒にいて居心地がいいなとか、こういう趣味が合うなとか、たぶんそういうことなのかなと思っています。監督も同じように思われていたようで、なにか明確なきっかけがあって、和人が茉莉のことを好きになったのではなく、自然な流れでそうなったのがリアルだなと思いました」

――確かに、2人のやりとりは、地に足がついている感じがしました。

小松「もちろん、楽しいことだけじゃなくて苦しみもあるし、決してきれいごとだけじゃない世界がちゃんと描かれているから、観る人も映画の世界観に入っていけるんじゃないかな、と。どの登場人物の気持ちもすごくわかるし、私はそれぞれに感情移入ができました」

お互いを想い合う気持ちがせつない
お互いを想い合う気持ちがせつない[c]2022 映画「余命10年」製作委員会

坂口「僕もそうです。茉莉と和人に感情移入をする方はもちろんいると思うけど、自分が親だとしたら父親(松重豊)や母親(原日出子)の気持ちもわかるだろうし、茉莉たちの友人であるタケル(山田裕貴)や沙苗ちゃん(奈緒)に感情をもっていかれる人もいるだろうし、いろんな人に感情を乗せられるような作品だと思います」

小松「映画のタイトルで“余命”という言葉を聞くと、ほとんどの人が最後を気にしてしまうし、『どうせ亡くなっちゃうんでしょ?』とどうしても考えてしまうと思うんです。私自身も以前は、そういう悲しそうな物語に対して苦手意識がありました。でもそうじゃなくて、1人1人の人間がちゃんと生きる生命力というか、『生きるとは?』という定義を再認識できた気がします」

『余命10年』は3月5日より公開中
『余命10年』は3月5日より公開中[c]2022 映画「余命10年」製作委員会

――特にコロナ禍のいま観るからこそ、違う響き方がしますね。

小松「ベタかもしれませんが、いまの状況の大変さや、周りに話を聞いてくれる人がいてくれることのありがたさを、改めて考えることってなかなかないと思うんです。でもこの映画を観ると、そういう存在の大切さや尊さが、スッと入ってくる気がします。こういった状況下のなかで、この映画が誰かの救いになってくれたらいいなと願っています」

取材・文/山崎伸子

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