南沙良、ミニシアターを巡るVol.18 CINEMA NEKO(後編)

コラム

南沙良、ミニシアターを巡るVol.18 CINEMA NEKO(後編)

「DVD&動画配信でーた」と連動した連載「彗星のごとく現れる予期せぬトキメキに自由を奪われたいっ」では、私、南沙良がミニシアターを巡り、その劇場の魅力や特徴をみなさんにお伝えします。第17回は東京の青梅市にあるCINEMA NEKOさん。支配人の菊池康弘さんとの対談の模様をお届けします!

「青梅の街に50年ぶりに復活した映画館なんです」

木のぬくもりを感じられる、開放感のある劇場です
木のぬくもりを感じられる、開放感のある劇場です撮影/杉映貴子

南「木造の映画館なんて、初めて見ました!」

菊池「東京では唯一です。昭和10年に建てられた都立繊維試験場をリノベーションしてつくりました。登録有形文化財なんですよ」

南「オープンの経緯は?」

菊池「弊社(=株式会社チャス)は地元で4店舗ほど飲食店をやっているんですが、10年ほど前にお客さんから『青梅って昔、映画館があったよね』『また青梅で映画が観たいなあ』なんて話を結構聞いたんです。実は青梅って映画館が3つもあったんですが、50年くらい前に全部なくなっちゃったんですよ。なんとかできないかと動いていたら、レンタルスペースとして使われていたこの建物に辿り着きました」

南「80年以上前の建物を映画館にするのは、大変だったのでは?」

菊池「ええ。総工費1億円くらいかかっています」

南「そんなに!?」

菊池「見えないところの耐震補強などが大変で。実はイチからつくったほうが安かったかも(笑)」

南「でも、その甲斐あって本当に素敵な空間ですよね。ロビーの壁もレトロでおしゃれです」

菊池「壁はもともと石膏ボードが貼ってあったんですが、はがしてみると内側から木の壁が出てきたんです。漆喰の下地に使われる木摺りと呼ばれるものなんですが、格好良かったので、職人さんに頼んで1枚ずつ丁寧に剥がしてもらい、また貼り直しました」

「閉館してしまった新潟の映画館の椅子を譲ってもらったんです」

 【写真を見る】開放的な空間が心地よいCINEMA NEKOの魅力を紹介!
【写真を見る】開放的な空間が心地よいCINEMA NEKOの魅力を紹介!撮影/杉映貴子 スタイリスト/藤井希恵 ヘアメイク/大久保智美


南「劇場内の青い椅子も綺麗でした。座り心地もすごく良くて」

菊池「この椅子はもらいものなんです。新潟の十日町にあったシネマパラダイスという映画館が数年前に閉館してしまったんですが、そこの館長さんに譲っていただきました。実は、たまたま青い椅子を探していまして。青梅の“青”でもあるし、デザイナーさんとも、青い椅子がいいですねなんて話していたら、廃棄処分になる前日にご連絡をいただいて。慌ててトラックで取りに行きました(笑)」

南「すごい縁ですね。ところで、いまお話を聞いている劇場併設のカフェ、めちゃくちゃ雰囲気がいいですね。私、本を読みにひとりでカフェに行ったりするんですけど、ここはとても気に入りました」

大きな窓からの光が心地よいブックカフェにもぜひ立ち寄ってみては?
大きな窓からの光が心地よいブックカフェにもぜひ立ち寄ってみては?撮影/杉映貴子

菊池「カフェだけの利用もOKですよ。もともと飲食をやっていたスタッフがフードもつくっているので、料理の腕はプロ級です。先日は『花束みたいな恋をした』に登場した焼きそばパンを出していました。そうだ、南さん、なにかメニューのアイデアはありませんか?」

南「えっ!そうですね…。私、B級サメ映画が大好きなので、グラスに真っ赤な紅茶みたいなのを入れて、そこに模型のサメが頭だけ出しているのはどうでしょう」

菊池「被害に遭った方の血ですか!?独創的すぎる…。でも、サメは普通ヒレを出すんじゃ?」

南「頭は譲れません(笑)。そうだ、劇場の名前はどうしてシネマ“ネコ”なんですか?」

菊池「ヒントは青梅の産業です」

南「うーん、さっき街のロケ撮影でサンマの匂いがしていたので、猫がお魚をくわえた…とか?」

菊池「惜しい!正解は、ネコがネズミを捕るからです。青梅は織物の街で養蚕が盛んだったんですが、ネズミが蚕を食べちゃうんですよ。だから青梅の街の人はずっとネコを大切にしてきたんです」

南「全然、惜しくなかった(笑)」

取材・文/稲田豊史

●CINEMA NEKO
公式サイト https://cinema-neko.com/
住所 東京都青梅市西分町3丁目123 青梅織物工業協同組合敷地内
電話 0428-84-2636
最寄駅 JR青梅線 東青梅駅

●南沙良 プロフィール
2002年6月11日生まれ、東京都出身。第18回ニコラモデルオーディションのグランプリを受賞、その後同誌専属モデルを務める。
女優としては、映画『幼な子われらに生まれ』(17)に出演し、デビュー作ながらも、報知映画賞、ブルーリボン賞・新人賞にノミネート。2018年公開の映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(18)では映画初主演ながらも、第43回報知映画賞・新人賞、第61回ブルーリボン賞・新人賞、第33回高崎映画祭・最優秀新人女優賞、第28回日本映画批評家大賞・新人女優賞を受賞し、その演技力が業界関係者から高く評価される。2021年には、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021のニューウェーブアワードを受賞。
最近の主な出演作に『ゾッキ』(21)、『彼女』(21)、TBSドラマ「ドラゴン桜」など。現在は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出演中のほか、待機作に『女子高生に殺されたい』(4月11日公開)、『この子は邪悪』(2022年公開)などがある。
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