ペンギンにキャットウーマン、リドラー!『THE BATMAN-ザ・バットマン-』ヴィランの変遷をたどる
クリストファー・ノーランが監督した「ダークナイト・トリロジー」の完結作『ダークナイト ライジング』(12)から10年、DCヒーローたちが共演を果たした『ジャスティス・リーグ』(17)の公開から5年。ファンが待ち望み続けた「バットマン」最新作が公開中だ。マット・リーヴス監督による、新たなバットマン像が描かれる『THE BATMAN-ザ・バットマン-』。ロバート・パティンソン演じる、ダークな印象のブルース・ウェイン/バットマンの姿が魅力だが、シリーズではおなじみのヴィランたちも登場し、注目を集めている。本作の世界観にあわせて新たにチューニングがなされたペンギンにキャットウーマン、そしてリドラー。彼らの原点や過去作を振り返りながら、時代と共に変化してきたヒストリーを紹介したい。
ずんぐり体型が特徴的なゴッサム・シティのギャングのトップ“ペンギン”
ペンギンことオズワルド・“オズ”・コブルポットがバットマンのコミックスに登場したのは、1941年。その後、いくつかのバージョンの過去が描かれたが、ここでは最もメジャーなオリジンを紹介しておこう。
背が低く、ずんぐりと太った身体つきに尖った鼻を持つオズワルドは、その容姿から「ペンギン」というあだ名を付けられ、いじめを受ける子ども時代を過ごしていた。また、彼の父親が豪雨に打たれて肺炎を患って死んだことがきっかけで、息子が同じ目に遭わないようと、母親から病的な執拗さで晴れた日も傘を持たせされ続けたことが、さらに周囲から虐げられることになってしまう。
その後、裏社会の犯罪に手を染め、オズワルドは才覚を発揮。彼自身は特殊な能力は持たないものの、愛用の傘に仕込んだ特殊な武器と、体格に似合わぬ素早い動きで、ゴッサム・シティを裏側から牛耳るほどのギャングのトップとして君臨する。街を犯罪の温床とする原因を作っている主要人物でもあるため、バットマンとは何度も衝突し、代表的なヴィランとしてその名が刻まれている。
映画版のペンギンと言えば、ティム・バートン監督の『バットマン リターンズ』(92)で、ダニー・デヴィートが演じた姿を思い浮かべるファンが多いだろう。同作では、名家出身ながら奇形児として生まれたため、その醜い容姿を疎まれて捨てられるという暗い過去を背負っている。
サーカス団員として育ったペンギンは、そのなかで仲間を増やしてサーカス・ギャング団を結成する。ゴッサムの権力者である実業家のマックス・シュレックに踊らされて市長選に出馬するも、バットマンの活躍によって失脚。バットマンとマックスへの復讐を果たすべく、ゴッサム・シティにテロを仕掛けようと画策する。特殊メイクを施したデヴィートは、奇形的な不気味さと悲哀を重ね持つ雰囲気を表現し、強いインパクトを残した。
ドラマシリーズ「GOTHAM/ゴッサム」にもペンギンは登場し、ロビン・ロード・テイラーが裏社会で名を上げる前の下積み時代のオズワルドに扮している。臆病者だが大きな野心を持ち、着実に裏社会での足場を築く青年時代が描かれ、劇中の主要キャラとして人気を博している。
『THE BATMAN-ザ・バットマン-』では、コリン・ファレルが元の容姿がわからないほどの特殊メイクを施して、オズワルド役を怪演。犯罪の帝王カーマイン・ファルコーネ(ジョン・タートゥーロ)の右腕で、ナイトクラブ、アイスバーグ・ラウンジの支配人をボスから任され表向きは経営者を装っているが、ドロップという麻薬の売買網を取り仕切っている。また、「ペンギン」と呼ばれることを嫌っており、面と向かってそう呼ぶ者はいない。