ペンギンにキャットウーマン、リドラー!『THE BATMAN-ザ・バットマン-』ヴィランの変遷をたどる
なぞなぞ好きな(?)知能犯の“リドラー”
『THE BATMAN-ザ・バットマン-』におけるメインヴィランのリドラー。本作では、アメリカで実際に起こった「ゾディアック事件」をモチーフとし、犯行現場に“?”マークと暗号を残す連続殺人事件の犯人として登場する。ミリタリーコートに防寒マスク、ゴーグルを身にまとった出で立ちで、原作コミックスとはイメージが大きく異なっているのも特徴。犯行予告にSNSを駆使するなど、現代的なアプローチが試みられている。
コミックスにリドラーが初登場したのは1948年。本名はエドワード・ニグマで、少年時代に教師が行ったパズルを解くコンテストに参加した際、不正をすることで優勝する。その結果、周囲から“賢い人物”と見られることに優越感を味わい、それが強い自己顕示欲へと変化していく。「バットマンや警察、ほかのヴィランよりも自分は賢い」と提示するため、なぞなぞと絡めた犯罪に手を染めることに。
ペンギンやキャットウーマンと同様に、彼も狂気をはらんではいるものの、特殊な能力を持たない普通の人間である。原作では、パープルの“?”マークをあしらったグリーンのスーツと目元を隠すマスクを着用している。
リドラーといえば、監督がバートンからジョエル・シュマッカーに代わった『バットマン・フォーエヴァー』(98)が有名で、コメディを得意とするジム・キャリーによるエキセントリックなキャラクターも話題となった。元々はブルースが経営するウェイン・エンタープライズのエレクトロニクス部門の技術者で、テレビ信号を直接人間の脳に送り、マインドコントロールを可能とする装置「BOX」を開発。しかし、それを危険視したブルースに融資を拒否されたことで失職。バットマンに恨みを持つトゥーフェイスと手を組み、「BOX」を量産してゴッサム・シティを混乱へと陥れる。
「GOTHAM/ゴッサム」では、コーリー・マイケル・スミスがリドラーを演じており、ゴッサム警察の検察官として登場する。なぞなぞ好きで、いつもなぞなぞを交えて会話をする変わり者。一方で、ゴードン刑事の捜査に協力する優秀さも見せている。しかし、署内の女性に恋をし、彼女の交際相手である同僚刑事を殺害したのをきっかけに狂気に陥り、徐々に完全犯罪をもくろむ人物=リドラーへと変わっていく。
時代性や監督によって、様々なアレンジが施されて変化する「バットマン」のヴィランたち。よりダークな雰囲気を前面に押し出し、バットマン自身も“探偵”としての要素がクローズアップされることになる『THE BATMAN-ザ・バットマン-』では、彼らもこれまでの作品とは異なる独自の存在感を示しているので、その姿を劇場で確かめてみてほしい。
文/石井誠