“異色”に見えて実は共感度抜群な人間ドラマがある…ラブストーリー『恋する寄生虫』を考察する
“虫”によって自身の人生を掌握されてしまった男女の美しくも儚い恋の行方を、林遣都と小松菜奈のW主演で描いて話題を呼んだ映画『恋する寄生虫』(21)。主人公は極度の潔癖症である青年と、視線恐怖症で不登校の女子高生。社会にうまくなじむことのできない2人が出会いもがきながらも懸命に生きる姿を映しだす物語は、ユニークな設定の“異色”のラブストーリーでありながらも、どこかしらに生きづらさを抱える人に寄り添うヒューマンドラマでもあった。そんな本作のBlu-ray&DVDが発売中。そこで改めてストーリーや見どころを紹介していきたい。
孤独を抱える男女の運命の恋と、突きつけられる現実
世界に拒絶されたと思っている男が出会ったのは、世界を拒絶している女の子だった。極度の潔癖症の高坂賢吾(林)は外出中に気絶して倒れているところを、通りかかった視線恐怖症で不登校の佐薙ひじり(小松)に助けられる。高坂は人に触れることを病的に恐れ、外出する際は帽子に眼鏡、マスク、手袋で全身を覆い隠していないとダメ。一方の佐薙は他人と目を合わせられず、世の中の悪意を感じないよう、常にヘッドフォンをして外音をシャットアウトしていた。社会にうまく溶け込めない2人はまるで違っているようで、実際には似た者同士だ。
ある日、とある男性から佐薙の世話をするよう依頼された高坂は、嫌々ながら接するうち、彼女の本心を知ることになる。「自分はこのまま、恋をせずに死ぬのだろうか。死んだ時に悲しんでくれる人はいるのだろうか…」、佐薙の横柄な態度は彼女の臆病な心の裏返しだった。誰とも理解し合えず生きてきた2人がやっとわかり合える相手を見つけ、当然のように惹かれ合っていく。高坂といると自身の視線恐怖症が治まる佐薙。彼女となら、マスクなしでもいられるようになった高坂。互いの存在によって少し症状が穏やかになった2人は、世の中になじむべく、クリスマスに手をつないで歩くことを目標にリハビリという名目でデートを重ねる。
だが、実は彼らはある寄生虫に侵されていた。苦しんできた潔癖症や視線恐怖症、そして2人の心に宿る恋愛感情すらも全部“虫”のせい、というのが本作の肝となる部分である。
本作における寄生虫は、いつの間にか人の心を乗っ取り支配する。寄生した宿主同士に近づかせ、その出会いをまるで運命の恋と錯覚させる。やがて2人が結ばれることをきっかけにして、その寄生虫は宿主の心身を蝕み死に至らせるのだという。“虫”に食い尽くされる前に“虫”を取り除く治療をしなければいけないのだが、治療が完了すると恋していた気持ちは消えてしまう。治療するのか、しないのか。恋か死か。初めて人のことを好きになった気持ちを失いたくないと死を選ぼうとする佐薙に対し、高坂は佐薙のおかげで生きることに意味を見いだせたからこそ、佐薙に死んでほしくないと願う。
発売中
価格:7,480円(税込)、4,180円(税込)
発売元・販売元:バップ
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