樋口真嗣監督が新バットモービルに興奮!「破綻のない『マッドマックス』のマシンのような内燃機関という名の暴力の結晶」

インタビュー

樋口真嗣監督が新バットモービルに興奮!「破綻のない『マッドマックス』のマシンのような内燃機関という名の暴力の結晶」

若き日のブルース・ウェインことバットマンを描いた『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が公開中だ。ヒーローとして覚醒する前の姿を描いた今作は、歴代バットマン映画のなかでも特出した衝撃作。そんな本作の魅力をDCファンとしても知られ、『シン・ウルトラマン』(5月13日公開)が控える樋口真嗣監督に語ってもらった。

『THE BATMAN―ザ・バットマン―』の感想を語った樋口真嗣監督
『THE BATMAN―ザ・バットマン―』の感想を語った樋口真嗣監督

「虚飾と浪費によって積み上げられた混沌は、まさしくゴッサム・シティ」

映画を観終えた樋口監督に、本作をひと言で表すなら?と尋ねると、返ってきた答えは「まさしくゴッサム!」だった。物語の舞台ゴッサム・シティは、凶悪犯罪が横行する巨大都市。真実と嘘、正義と不正が入り乱れたゴッサムの本性を暴く今作は、この街さながらの混沌としたドラマが繰り広げられていく。

「映画は現実を映す鏡と言われています。いま、世界は混沌としていて答えがない。『ダークナイト』でクリストファー・ノーランが提示した回答から14年。人間…いや、人類はいまできる現在を、学ぶべき歴史をいかに無駄遣いしてきたのか。虚飾と浪費によって積み上げられた混沌は、まさしくゴッサム・シティ。それは創世記の災厄ぐらいではリセットすらされないのだ。そして向かうべきアララト(漂着点)さえ見えない」。

両親の復讐のために犯罪と戦う、“2年目”のバットマンの奮闘を描きだす
両親の復讐のために犯罪と戦う、“2年目”のバットマンの奮闘を描きだす[c] 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & [c] DC

作品に寄せたこの言葉からもわかるように、樋口監督も明確な答えを見いだせていない。権力者は堕落し、格差は広がり、分断が広がる世界で、我々と同じように、バットマンも自身にまつわる隠された闇にたどり着き、そのなかでもがき、苦悩することになる。

「『ダークナイト』は9.11直後の混乱のなか、それでも人間の正しさを信じるフェリーのくだりが希望の象徴でした。今作を観ると、ノーランよりも複雑な出口の見えない沼に入っていく感じがします」。

ゴッサム・シティで連続殺人事件を起こす謎の知能犯、リドラー
ゴッサム・シティで連続殺人事件を起こす謎の知能犯、リドラー[c] 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & [c] DC

「パティンソンの、暗闇のなかで光っているマスク越しの目線がすごくよかった」

今作のブルース・ウェインは、バットマンとして活動を始めてまだ2年。「顔を隠して正義に基づく暴力を正当化するなど、ヒーローのレゾンデートル(存在意義)に揺さぶりをかけるのが前提」と樋口監督が言う、“バットマン像”がまだ確立される前段階だ。犯罪と戦う目的も、正義というより殺害された両親の復讐のため。そんなバットマンの盲点を突いて、知能犯リドラーは揺さぶりをかけてくる。さらに“目には目を”のバットマンの活動も、社会に思いがけない影響を及ぼしていく。


マスクからのぞくロバート・パティンソンの“虚ろな目”が印象的
マスクからのぞくロバート・パティンソンの“虚ろな目”が印象的[c] 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & [c] DC

そんな今作でバットマンことブルースを演じているのがロバート・パティンソンだ。アイドルスターから個性派俳優へと脱皮し、一昨年に出演したクリストファー・ノーラン監督作『TENET テネット』(20)も記憶に新しい。今作では復讐に心を奪われ葛藤するブルースを熱演。パティンソンについて樋口監督は、その魅力は“目”にあるという。

「パティンソンの虚ろな目が好きなんです。『ライトハウス』のどん底感も最高でした。今度のバットマンでは、暗闇のなかで光っているマスク越しの目線がすごくよかった」とその演技を称えた。

■樋口真嗣
1956年生まれ、東京都出身。『ゴジラ』(84)に造形助手として、映画界に入り、特技監督として「平成ガメラシリーズ」などに携わる。おもな監督作は『ローレライ』(05)、『日本沈没』(06)、「進撃の巨人ATTACK ON TITAN」シリーズ(15)、『シン・ゴジラ』(16)など。待機作は5月13日(金)公開の『シン・ウルトラマン』。


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