批評家が選ぶ、出演作ワーストランキング!“ロッテン”連発のブルース・ウィリスになにが起こった?
低い方から10作を並べると、なんと0%の作品が6本も。ちなみにここにレビュー数10未満の作品も含めれば『エア・ストライク』(18)、『10ミニッツ』(19)、『Apex』(21)の3作品が加わる。つまり出演作でまったく批評家から支持されていない作品が9本もあることになる。しかもその半数以上がこの4〜5年の間に出演した作品…。世界的知名度を誇る俳優とは思えない事態だ。
おそらく映画ファンでも知っている・観ている作品がほとんどないほどマイナーなタイトルが並んでいるわけだが、10作中9作が日本で公開や発売されているというのはおどろくべきポイントだ。毎年行われている特集上映「未体験ゾーンの映画たち」で上映されるか、劇場未公開のままDVDリリースされることがほとんどで、試しにU-NEXTでウィリスの名前を検索してみれば、同じような雰囲気の作品がやたらと並んでいるのを確認できるはずだ。
簡潔に0%の6作を紹介していこう。マフィアのボスに追われる元相棒を救うため大勝負に挑む凄腕の泥棒を主人公にした『レッド・ダイヤモンド』でウィリスはマフィアのボスを演じている。『ハード・キル』では傭兵の主人公に護衛を依頼する会社社長に。『アクト・オブ・バイオレンス』では復讐を誓う主人公たちと共に人身売買組織を追い詰める捜査官。『コードネーム:プリンス』では主人公を狙う犯罪組織のボスを演じ、『アウト・オブ・デス』では汚職警官に追われる主人公を支える元フィラデルフィア市警の男。そして『American Siege』では強盗団に立ち向かう小さな町の保安官を演じている。
どの作品にも共通しているのは、ポスタービジュアルであたかもブルース・ウィリスが主人公のように掲げられているにもかかわらず、実際に主演しているのは無名といっていい俳優。ウィリスは助演ポジションとして、限られた時間のみ出演しているということだ。低予算の映画に有名俳優であるウィリスをちょい役でキャスティングすることで箔を付けるというねらいが透けて見えるが、昨年掲載された「Collider」のコラムによれば、そこにはランドール・エメットというプロデューサーの存在が大きく関わっていることがわかる。
10年前の2012年には、ウェス・アンダーソン監督の『ムーンライズ・キングダム』(12)や、SF大作『LOOPER/ルーパー』(12)といった話題作に出演していたウィリスだが、その後は、代表シリーズの第5弾『ダイ・ハード/ラスト・デイ』(13)や『REDリターンズ』(13)などが大失敗。そして『エクスペンダブルズ3』(14)をわずかな出番で多額なギャラを要求したことにより降板となり、さらに『カフェ・ソサエティ』(16)では膨大なセリフ量を覚えることができずに降板。ハリウッドでの信頼を大きく損なってしまう。
そんななか手を差し伸べたエメットは、わずかな出演シーンでそれなりのギャラを払うことと、ポスターに顔出しをすることを条件に、ウィリスとタッグを組むようになる。そうしてAランクスターだったウィリスが、低予算B級アクションの常連俳優へと変身を遂げることになったという経緯だ。
とはいえ低評価リストで挙げたなかに、ウィリスにとって決して多くない主演シリーズの一つ「隣のヒットマン」の第2作『隣のヒットマンズ 全弾発射』が4%ロッテンという致命的な数字で入っていることを考えれば、2000年代からすでに低迷のフラグは立っていたのかもしれない。
先に挙げたラジー賞の「2021年のブルース・ウィリスの最低演技賞」で、どの作品が獲るのか皆目見当がつかないが(ラジー賞のことだから全作品を受賞にする可能性もあるだろう)、候補作である『コズミック・シン』は批評家からは3%しか支持されなかったものの、同じく「ロッテン・トマト」で示される観客からの評価スコアは57%とまずまずの数字。『American Siege』にいたっては批評家0%に対し、観客96%と熱烈な支持を集めている。やはり彼が“人気俳優”であることはどんな映画に出ようとも変わらないのだろう。
明日公開予定の<後編>では、ブルース・ウィリスの過去の名作がずらりと並んだ高評価作品を紹介していきたい。
文/久保田 和馬