第94回アカデミー賞“オスカー・ウィーク”に、国際長編映画賞候補の監督たちが勢揃い「映画オタクの世界で最も大きな集会」
ビバリーヒルズにある映画芸術科学アカデミーの本部では、今週1週間“オスカー・ウィーク”が行われ、2年ぶりに候補者が集うイベントが連日行われている。3月24日には、国際長編映画賞候補監督が勢揃いしたシンポジウムが行われた。
会場には、『ドライブ・マイ・カー』(日本)の濱口竜介監督、『わたしは最悪。』(ノルウェー)のヨアキム・トリアー監督と主演のレナーテ・レインスベ、『The Hand of God』(イタリア)のパオロ・ソレンティーノ監督、『FLEE フリー』(デンマーク)のヨナス・ポヘール・ラスムセン監督、『ブータン 山の教室』(ブータン)のパオ・チョニン・ドルジ監督が登壇した。『未来を生きる君たちへ』(10)で第83回アカデミー賞外国語映画賞(当時)を受賞したスサンネ・ビア監督と映画キュレーターのラジェンドラ・ロイ氏が司会を務め、およそ1時間30分に渡って映画論や映画業界が置かれている問題などについて意見が交わされた。
「濱口監督すべての映画監督にとって悪夢のような存在」(ソレンティーノ)
共にノミネートされている監督たちが、ほかの映画を紹介しながらバトンをつなぐ演出で、『The Hand of God』のパオロ・ソレンティーノ監督は「この男はすべての映画監督にとって悪夢のような存在です。主要映画祭の賞をさらってしまう。彼が映画を作っていない時に映画を作ることが大事ですね」と濱口監督を紹介すると、会場から大きな笑いが起きた。そして、5本の候補作について「違いよりも共通点を。どれも崇高な人間性ついて描いていて、人間が繊細さをもって善人になろうとする姿を描いています。だからこの時代に必要とされているのでしょう」と語った。
『わたしは最悪。』を紹介した濱口監督は、「まず、タイトルがすばらしいです」と述べ、「最初にタイトルを聞いた時は内容を知らなかったので、大量殺人を行うような内容に違いないと思っていました。あのポスターの彼女はきっと殺人を犯した後にあの爽快な顔で走っているんだと思っていました」と笑いを誘った。そして、「彼女は自分自身を“世界で最も悪い人間だ”と自認していますが、それは自分たちが生活の中でする選択と遠いものではなく、最悪な人間とは自分自身のこととも捉えられる、普遍的な映画だと思いました。恋する喜び、それに伴う別れがある、我々の人生そのものを描いたような傑作だと思いました。この映画を作ってくれてどうもありがとうございました」と、隣に座るヨアキム・トリアー監督に向けて語った。
『ブータン 山の教室』のパオ・チョニン・ドルジ監督は、「これは私の初監督作で、初めてのシンポジウムになります。ここに同席している4人の監督は、私が監督を目指した理由でもあり、とても奇妙な気分です。この小さな映画がここにいる、可能性を祝福したいと思います」と挨拶。また、ブータンには2軒の映画館があるが、ラップトップから映像を出力して上映するため、盗難防止のために必ず監督も同席しているという逸話も語られた。