韓国ドラマブームを牽引した「冬のソナタ」日本での放送から20周年。ペ・ヨンジュンと“ジウ姫”の現在は?
新型コロナウイルス感染症が全世界に拡散する前、ソウル明洞(ミョンドン)の街や春川(チュンチョン)の南怡島(ナミソム)は日本人観光客で賑わっていた。韓流スターやK-POPアイドルが出演するミュージカルやライブに行っている日本国籍のファンも数え切れない程増えている。今になっては全然珍しくないこの光景は、約20年前、とあるドラマをきっかけに広がったものである。
2003年4月よりNHK-BS2で放送された韓国ドラマ「冬のソナタ」は、社会現象とまで言われる程のブームを巻き起こした。ユン・ソクホ監督の初の海外進出作品は予想以上の成果を収め、地上波のNHK入りを果たした。土曜日23時台に放映されたこのドラマは、20%台の奇跡的な視聴率を記録した。最初はあまり大きな反響はなかったが、"すごくおもしろい"という口コミが広がり、回を重ねるごとに視聴率が急増し、30~40代の主婦を中心に人気を集めた。
「冬のソナタ」の主人公として一途で純粋な愛を描いたペ·ヨンジュンは日本の中年女性に"ヨン様"と呼ばれ、単なる人気スターを超えて韓国大衆文化を代表するアイコンとなった。 ベ·ヨンジュンが初めて来日した時、羽田空港では目を疑うような風景が演出された。30代から60代まで、幅広い年齢層の女性ファンたちが入国ロビーを埋め尽くし、一部は涙を流していた。 ペ·ヨンジュンが泊まっていたホテルの周辺も、一瞬でも彼の姿を見るために集まったファンで大賑わいとなった。ペ·ヨンジュンと共演した相手役のチェ·ジウも"ジウ姫"と呼ばれる程人気を博し、劇中その2人と三角関係を形成した俳優のパク・ヨンハも爆発的な人気を誇った。
翌年の2004年、「冬のソナタ」は毎日新聞社選定の"日本のヒット商品"2位にランクインした。韓国でドラマ史上最高額である192万ドルの輸出実績を記録した同作は、日本第一生命経済研究所によると、日本では5705億ウォン(約570億円)の観光収入と1兆1,906億ウォン(約1,190億円)の生産誘発額、5,791億ウォン(約579億円)の付加価値を創出した。
ドラマの主な背景となった春川の南怡島は、人気観光コースとして急浮上した。「冬のソナタ」の放送直後、南怡島は旗を持ったツアーガイドの説明を聞きながら"聖地巡礼"をする日本人団体客があふれていた。劇中、主人公たちが通った中央高校前の文房具にはペ·ヨンジュンとチェ·ジウのグッズがずらりと並んでいた。初放送から20周年を迎えたが、南怡島にはいまだに「冬のソナタ」を懐かしむ多くの人が訪ねている。新型コロナウイルスの影響で外国人観光客が大幅に減少した2021年の訪問者数も103万3,000人余りだった。
「冬のソナタ」はシンドロームを起こすと同時に、日本での韓流ブームの起爆剤になった。 もちろん同作が放送される前にも、チョ·ヨンピルのような韓国歌手や映画が日本で注目を集めたことはあるが、あくまでも一時的な人気にすぎなかった。しかし「冬のソナタ」をきっかけに日本のテレビ局もこぞって韓国ドラマを求めるようになり、韓流コンテンツは大勢の人から支持される一つの文化として位置付けることができた。
実際「冬のソナタ」に続いて「美しき日々」「オールイン 運命の愛」「天国の階段」などの韓国ドラマが人気を集め、有料衛星放送局だけでなく、フジテレビやNHKなどの地上波TV放送局のゴールデンタイムに編成されるようになった。特に「冬のソナタ」が主に中年女性をターゲットにしていたとすれば、2005年にNHK-BS2にて放送された「宮廷女官チャングムの誓い」は男性の韓流ファンを増やすきっかけとなった。
2000年代後半から韓国ドラマの人気はK-POP中心の韓流ブームへつながり、10~20代の若い消費者も急増した。現在BTSとTWICE、BLACK PINKなど、たくさんの韓国アーティストが日本の音楽シーンで活躍し、「イカゲーム」「地獄が呼んでいる」などのドラマが世界のファンを熱狂させているのも、かつて「冬のソナタ」が韓流コンテンツのブランド力と好感度を高めてくれたおかげだと言っても過言ではない。
韓流ブームの始まりと言えるペ・ヨンジュンは残念ながら、2011年のドラマ「ドリームハイ」に特別出演した後は、俳優活動は休業状態になっている。2006年に資産90億ウォン(約8億8000万円)を出資して芸能プロダクション"KEYEAST"を設立し、現在は実業家として会社経営に専念している。2015年7月にアイドルグループ"Sugar(シュガー"の元メンバーパク・スジンと結婚し、一男一女をもうけている。
チェ・ジウは「冬のソナタ」の後にも「天国の階段」「101回目のプロポーズ」「スターの恋人」「怪しい家政婦」などの作品に出演し、韓国を代表する女優として活動してきた。2018年に9歳年下の一般男性と結婚し、出産のため暫く芸能界から離れていたが、2021年10月より今年3月までに韓国で放送されたバラエティー番組「村の軽洋食」にて復帰し、一児の母になっても相変わらず眩しい美貌で話題になった。
日本でも大人気を博していたパク・ヨンハは俳優と歌手、モデル活動をしながら万能エンターテイナーとして認められていたが、2010年6月、ソウル特別市内の自宅で遺体で発見された。当時葬列の見送りから火葬場に至るまで、日本からも多くのファンが別れに訪れ、現地メディアでも大きく報道されていた。毎年パク・ヨンハの命日には遺族と日韓のファンで追悼式が開かれていたが、2020年からは新型コロナウイルスの影響で渡韓が叶わず、それぞれ現地で彼を追悼している。
文/朴貞宣