安彦良和監督が明かす、“伝説のエピソード”を映画化した理由とは?『ククルス・ドアンの島』新キャラ設定画など最新情報
<コメント>
●安彦良和監督
-第15話「ククルス・ドアンの島」を映画化した理由について
「映画化の話が来たわけじゃなくて、僕からお願いしたんです。テレビシリーズの第15話『ククルス・ドアンの島』は意外と引きがあって、何よりいい話なんだよなという印象があったんですよね。ただ、不遇の作品にはなってしまっていた。ずっと気にはなっていたんですよ。それを偶然思い出すきっかけがあって、サンライズの先代の社長と現社長がたまたま同じ場所におられたときに、直に映像化の提案をしたら『いいですよ』と快諾してもらったんです。
映画のストーリーは基本的にテレビと同じで、ラストはセリフ回しも同じなんです。とても印象深いラストで、よく言われる『愛するものを守る』といった絶対正義のテーマに対して、『本当にそうですか?』と疑問を投げかけている。第15話の脚本を手掛けられた荒木(芳久)さんがどういう意識でお書きになったのかわからないけど、非常に大きなテーマを秘めたエピソードだと思います。
僕はファーストガンダム、『機動戦士ガンダム』という作品は、とても大きな状況のなかに放り込まれた<小さな者たち>のドラマとよく言うんですよね。ホワイトベースのクルーたちも名もなき<小さな者たち>で、彼らは翻弄され大役を担わされながらもそのなかで頑張る。それが『ガンダム』のスタイルだと思うんです。富野由悠季監督は原案段階で『漂流記』と呼んでいたんです。それがさらに象徴的に表れているのが『ククルス・ドアンの島』なんです」
-“子どもたちが20人も登場する設定”について
「テレビの回でもいっぱいいたと思っていたら、ロランという女の子を入れても4人しかいない。でもそれだと絵にならないんですよね。要するに私設孤児院みたいなものですから。それで脚本の根元歳三さんに『子どもは20人は登場させてください』と言ったんです。これは非常にめんどくさいと承知しながら、総作監もやってくれている田村(篤)さんにキャラクターデザインをお願いして。そうしたらあっという間に20人分が上がってきて(笑)。それはもういいキャラで、あれはありがたかったですね。
話の中心になるドアンは、アニメだと南の島でトラウマを抱えながらも4人の子どもと暮らしていましたが、映画ではまた違った印象になっていると思います。子どもたちの生活感が出れば、当然ドアンも優しい生活臭のあるキャラになりますからね。そういう意味でも子どもはいっぱいいなきゃダメということですね。彼のなかにも相当深いトラウマがあると思いますよ。20人の戦災孤児を引き取っているわけですから、それぞれに厳しい現場があったはずで、そのひとつひとつがトラウマになっているはずなんだよね」
文/久保田 和馬