犬山紙子が『とんび』から現代社会の子育てを考える「“助けて”を言えない人を救う“お節介”は私の憧れ」
いつの世も変わらぬ親子の絆を描いた、累計発行部数60万部を超える重松清の同名ベストセラー小説を映画化した『とんび』(公開中)。自身も5歳の娘の子育て中という人気コラムニストの犬山紙子が、「観る前から予感はしていましたが、本当に心からステキな映画だと思いました」と絶賛し、その心を語り尽くす。
「子どもたちを社会で、温かい目で見守り育てていくということは、子どもだけではなく親をも救うことになる」
昭和の瀬戸内海に面した小さな町を舞台に、愛妻を不慮の事故で亡くした不器用なヤス(阿部寛)が、男手ひとつで息子アキラ(北村匠海)を育てようと奮闘する物語。犬山は、「一人の子どもが成長していく姿がヤスの目線で描かれますが、子どもの成長ってこんなにもうれしいことなんだな、と改めて実感しました。ヤスの目線にリンクしながら、子どもを育てる身としても、また社会や地域で暮らすいち大人としても、地域の人たちが家族のように子どもを見守り一緒になって育てていく、その温かさが本当にいいなぁ」としみじみ。
なかでも胸を打たれたシーンとして、妻を亡くして途方に暮れるヤスが、町の和尚に叱咤激励される夜の海辺でのひと幕を挙げる。犬山は、「その前段として、弱音なんか絶対に吐かないようなヤスが、『俺なんか生まれなければよかった。そうすれば妻も死なんかった』と和尚に弱音を吐く。そのシーンがあるからこそ、次の海のシーンがさらに生きてくる」と分析する。ヤスは和尚に言われるまま、幼いアキラを抱きかかえて雪が舞う夜の海辺へ向かうのだが、そこで「和尚がアキラに『お母さんがいなくて寒いと思っても大丈夫だ。お前の背中を温めたいと思っている人も、温める手もたくさんある。だから頼りなさい』と伝えるんです」とシーンを回想する。
そして「その言葉はアキラに向けられたものですが、同時にヤスに向けた温かくて力強い応援メッセージでもあって。“俺たちも一緒に愛情を注ぐ、頑張るから”という。二重の意味で深いなぁと、すごく胸に響いてグッときました」と深く感銘を受けたそう。そして「子どもたちを社会で、温かい目で見守り育てていくということは、子どもだけではなく親をも救うことになるんだ、ということまで感じて。核家族化を経て、いままさに子育てに悩んでいる人や、孤独を抱えている子どもなど、たくさんの人に届いてほしい名シーンです」と実感を込める。
いわゆる昭和ならではの濃い人間関係やその温もりは、それを失いし現在、誰もが憧憬を覚えずにいられない。例えば、「薬師丸ひろ子さん演じる、たえ子が切り盛りする小料理屋にみんな集まって、そこで生まれる友情だったり。でも、あの関係性や距離感は、完全にもう家族ですよね。血がつながっているか、ではなくどれだけ近いのかなのだなと感じます。普通、よそ様の家の子にそんなこと言わないよ、と思うくらいの近さで(笑)。ヤスのように不器用で“助けて”と言えない人を救いだすためにも、そうしたお節介は本当に必要だし、私の憧れでもあります」と、児童虐待をなくすためのプロジェクト「#こどものいのちはこどものもの」で活動する犬山は切実に感じた様子だ。
1981年、大阪府生まれ。エッセイスト、コラムニスト。2011年に出版した女友達の恋愛模様をイラストとエッセイで描いたブログ本が注目され、現在はテレビ、ラジオ、雑誌など幅広く活躍中。
2014年に結婚、2017年に第一子となる長女を出産してから、児童虐待問題に声を上げるタレントチーム「こどものいのちはこどものもの」の立ち上げ、社会的養護を必要とするこどもたちにクラウドファンディングで支援を届けるプログラム「こどもギフト」メンバーとしても活動中。
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