役者デビューから25年。池内博之がジャッキー・チェンにソル・ギョング、パク・ヘスと共演し感じた“アジア映画の熱気”とは?
「ものづくりにかける想いは、世界中どこに行っても変わらない」
1996年にドラマ「東京23区の女」で俳優デビューした池内。1998年放送のドラマ「GTO」のクールな村井役で人気を博した彼だが、近年はドニー・イェン主演映画『イップ・マン 序章』を皮切りに、ジャッキー・チェン主演映画『レイルロード・タイガー』(16)、ジョン・ウー監督がメガホンを取った『マンハント』(17)など、海外作品にも精力的に出演している。
海外進出作となった『イップ・マン 序章』に出演するまでにも「海外作品に興味はあった」そうで、「オーディションもいろいろと受けていました。そんななか『イップ・マン 序章』はオーディションではなく、お声がけをいただけた作品なんです」とのこと。
言葉や価値観の壁を越えて、海外へと飛びだすことに不安はなかったかと聞いてみると、池内は「まったくなかったですね」と即答する。「怖さは一切ありませんし、むしろ好きですね。チャレンジしたいという気持ちが強いです。僕はもともと旅が好きで、東京に出てきてからは一人旅で海外に行くこともあって。そういう時も航空券だけを買って、あとはホテルも現地で決めるんです。ツアー旅行が苦手なんですね。人と知り合って、そこから情報をもらって旅を進めていくというスタイルです。現地の生活に潜り込んで、いろいろなものが見たい。好奇心が旺盛なタイプかもしれないですね」と人や新しい出会いが大好きだという。
海外の現場を経験することで、「海外でも日本でも、どの組も作品に愛情を注いでいるということは一緒。ものづくりにかける想いは、世界中どこに行っても変わらないなと思います。国を越えてみんなで同じ方向を向いている瞬間は、とてもいいなと思います」としみじみ。そんななかで、池内が忘れられない出来事としてあげるのが、『イップ・マン 序章』のアクション監督、サモ・ハン・キンポーとの出会いだ。
武術の達人として知られるイップ・マン(ドニー・イェン)の生涯を描いた同作で、池内はイップ・マンと死闘を繰り広げる三浦将軍役を演じていた。「『アクションは基本的にはスタントを使わずにやってほしい』と言われて、ほぼすべてのアクションを自らやっています。あれだけの大掛かりなアクションは初めてでしたし、どんどん追い込まれていってしまって。『日本に帰りたいな…』と思うくらい大変でした(苦笑)。でも撮影が終わった時には、アクションの指導をしてくださったサモ・ハン・キンポーさんが『これを乗り越えられたんだから、もうなんでもイケるよ』と言ってくれて。『たしかにそうだな。この経験があれば、きっとこの先も乗り越えていける』と思わせてくれました」と貴重な経験をかみ締めつつ、「とはいえ、次の作品に入ればまたさらにすごい壁が出てきたりして…。果てしないんですよ!」とこぼしながらも楽しそう。
どのようなキャラクターでも全力でその役柄を生きることがモットーの池内だが、「海外の作品では、特殊な役を演じることが多くて。いつか、日常を生きる“普通の人”も演じてみたいですね」との告白も。現在、45歳となった池内博之。これからがますます楽しみになるような、ステキな笑顔だった。
取材・文/成田おり枝